こんにちは。自称「包装資材診断士」のアカツカです。
私は包装資材業界に携わって約20年。1000点以上の新製品やリニューアル案件に関わってきました。今回は数ある包装資材の中から一つ、「手提げ紙袋」を取り上げたいと思います。
手提げ紙袋は、買い物をした際にモノを運ぶために使用したり、外出先で人が持っているのを見る機会が多かったりと、日常生活の中で身近な存在の一つとなっています。その一方で「あって当たり前の存在」だけに、普段はあまり意識をしていないのではないでしょうか。当コラムでは、そのような方々に向けて「見る機会が多い」ことに焦点を当ててお話をしたいと思います。

≪目次≫
1.はじめに  ~ 日本での手提げ紙袋の歴史 ~
2.手提げ紙袋の「魅せる」機能
3.手提げ紙袋は「歩く広告塔」
4.まとめ

紙袋

1.はじめに  ~ 日本での手提げ紙袋の歴史 ~

皆さんは「日本で最初に作られた紙袋」は、どのような用途で使うモノであったのか知っていますか? 諸説ありますが、1920年代にアメリカで使われていた紙袋を参考にして「セメントを入れる用途」で作られたのが最初と言われています。当時、セメントは主に布袋に入れられていましたが、使い勝手やコスト面などでメリットのある紙袋に代わっていき、その後は他の産業や商業でも利用されるようになりました。
1950年代後半になると、紙袋に持ち手を付けた「手提げ紙袋」が百貨店で使われ始めたと言われています。その後、食品スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、さまざまな業態の小売店に広がっていきました。しかし、1970年頃に安価かつ丈夫で水濡れに強いプラスチック製の袋(レジ袋など)が登場すると、状況は一変しました。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの比較的安価な商品を販売する小売店を中心に、プラスチック製の袋に代わっていきました。一方で、「手提げ紙袋がもつ魅力」への需要も根強く、百貨店や高級ブランド店、お菓子屋などのさまざまな小売店や企業で使われ続けてきました。
近年、脱プラスチックやSDGs達成などといった環境対応を目的として、手提げ紙袋が再注目されています。昨年、大手GMS(総合スーパー)が衣料品や日用品売り場などで提供されていた有料のプラスチック製レジ袋を手提げ紙袋に切り替えるなど、手提げ紙袋が使われる場所は確実に増加傾向にあります。一方で、有料提供が広がりを見せている影響で、場所ごとの使用量は減少傾向にあります。

2.手提げ紙袋の「魅せる」機能

手提げ紙袋には、「モノを運ぶ、中のモノを守る、魅せる」の3つの機能があります。「モノを運ぶ、中のモノを守る」は本質的な機能なのでイメージがつきやすいと思いますが、「魅せる」はどうでしょう? なかなかイメージがつかないのではないでしょうか。

紙袋の機能

魅せるとは「他人に対して何かを見せる行為、またはその結果を指す言葉」であり、 他人の注意を引き、感動や興奮を引き起こすことを目的として使われる言葉です。
手提げ紙袋は柄や色、形といった見た目を工夫することで、見る人の注意を引くことができます。印刷する文言を工夫することでメッセージ性を持たせ、感動や興奮を引き起こすことも可能です。また、紙という素材を使うことで、プラスチック製の袋と比べて環境問題への配慮を「見る人」に与えることもできます(再生紙などの環境に優しい紙を使用して、そのことを証明するマークを印刷することで、宣伝効果を上げることも可能です)。
手提げ紙袋には「魅せる」機能があり、工夫次第で「魅せる力」を上げることができます。そして、冒頭にお伝えしました「見る機会が多い」ことと掛け合わせることによって、「歩く広告塔」としての効果を発揮します。

3.手提げ紙袋は「歩く広告塔」

手提げ紙袋は、「歩く広告塔」と呼ばれています。「企業やお店の名前やロゴ、写真などが印刷された手提げ紙袋を、その商品やサービスの購入者や提供者が外で持って歩くことで、宣伝効果を発揮する」というのが理由です。
商品やサービスを購入した人が、購入した場所の「近く」で持って「歩く」ことで、近くにいる人が「見る」といった宣伝機能を持ったツールは他にあるでしょうか?「ここの近くに○○があるんだ。行ってみよう」となり、スマホで検索してそこへ行くといった人の姿が想像できませんか?最近では手提げ紙袋にQRコードを印刷して、ホームページやSNSへの「入り口」としての活用も増えてきています。宣伝ツールはデジタルが主流となっているなかで、デジタル×アナログとして共存できる宣伝ツールが「歩く広告塔」である手提げ紙袋なのです。
ここで一つ、少し視点を変えた事例をご紹介します。大きな会場内に複数の企業がブース出店をする展示会で、必要以上に大きな手提げ紙袋を配布している企業を見かけることはありませんか?目的は何だと思いますか? 答えは宣伝効果を上げて集客数を増やすためです。「➀他のブースでもらったカタログやサンプルを全部自社の大きな袋にまとめて入れてもらえる ⇒ ➁会場内で自社の紙袋をもって歩く人でいっぱいになる ⇒ ➂たくさんの人が持っている袋のブースが気になり来場する」といった流れ作るために、意図的に大きくしているのです。このように、「魅せる」を本質的な機能として考え、意図的に「歩く広告塔」として活用することを目的に使用するケースもあります。
大きな紙袋に入れる

4.まとめ

今回は手提げ紙袋の「魅せる」の機能による宣伝効果に絞ってお話をしましたがいかがでしたか。世の中ではペーパーレス、デジタル化といった話があふれかえっているなか、たまにはアナログな話もよくないですか? 手提げ紙袋の「モノを運ぶ、中のモノを守る」機能も、工夫次第で環境面やコスト削減面などで効果を発揮しますので、ご興味を持たれた方は、Web検索や専門家に聞いてみるといいと思います。
私が仕事をする際に一番大事にしていることは、「自分の軸を持った上でバランスを取ること」です。今の世の中の軸はデジタル化で間違いないです。一方、アナログで行った方が効率よくできること、今回ご紹介したようにバランスよく共存した方がいいことがあります。今回の手提げ紙袋の話をきっかけに、何か気付きを得ていただければ幸いです。

 

≪略歴≫

赤塚 一輝 (あかつか かずてる)

  • 中小企業診断士
  • 一般社団法人東京都中小企業診断士協会 中央支部執行委員(広報部 副部長)
  • 愛知県一宮市出身 / 和歌山大学 経済学部経済学科 卒業
  • 包装資材メーカーで紙製品を中心とした包装資材に携わって約20年
  • 長年営業に従事し、現在は営業本部仕入グループと経営企画室のマネージャーを兼務
  • 脱プラスチックやSDGsなどの環境関連に携わった経験を活かした活動を行う
  • 中央支部公認同好会「鋼鉄音楽同好会」代表