中央支部 研修部 宮川公夫

 
 かつては流通業界をリードし、高度成長の波に乗り、良い商品を安価な価格で供給することを通じて、豊かな国民生活の実現に貢献してきたGMSと言われるスーパーマーケットやホームセンターなどの量販店の売上が低迷を続けている。この背景として、消費者の高齢化に伴う個人向け少量購買の増加による量販店離れやインターネットショッピングの普及などがある。また、若者世代は新たな価値観で消費活動を行うようになっており、従来の吸引力を失ってしまっている。
 これに対し、若者層を中心に幅広い年代の支持を受け、増収増益を続けているのがドン・キホーテグループである。また、従来の顧客の購買だけでなく、近年のインバウンド来日客を惹きつけ、どの店舗にも連日活気がある。
ドン・キホーテグループは、2017年6月の時点で売上高8千億円を超える8,288億円を突破し、成長を続けている。今後は、コンビニエンスストアのファミリーマート、GMSと食品スーパーなどを展開するユニー・グループとの提携により、その勢いが増すことが予想される。これにより、身近なファミリーマートの店舗でも、個性的で低価格の「情熱価格」をはじめとするドン・キホーテのプライベートブランド商品を購入することができるようになる。
 店舗数の面では、11月22日にMEGAドン・キホーテ クラスポ蒲郡店とMEGAドン・キホーテ京都山科店が同時オープンし、全部で400店体制となる。2020年には、ドン・キホーテグループ全体として500店舗を目指している。

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 日本国内における展開だけでなく、海外進出についても積極的である。平成29年12月1日、ドンキホーテ・シンガポール店がオープンする。この店の名称は、「ドンドンドンキ・オーチャードセントラル店」といい、ドン・キホーテグループの海外事業持株会社であるPPIホールディングス(Pan Pacific International holdings Pte.Ltd)である。
 「DON DON DONKI」は、店内ほぼすべての商品をメイド・イン・ジャパンもしくは日本市場向け商品を展開し、「ジャパン・ブランド・スペシャリティストア」をコンセプトとした東南アジア仕様の新業態である。
 具体的には、日本を意識した店内演出や日本酒のバーカウンターを設置するなど、アミューズメント性に配慮した店舗空間で、ジャパンブランドにこだわった生鮮食品や加工食品、家庭雑貨、日用消耗品、化粧品、バラエティグッズなどを展開する。日本仕様にこだわった商品を展開するシンガポールにおけるプライスリーダーとして、圧倒的な低価格路線を目指す。
2018年1月にはテナントエリア「北海道マルシェ」をオープンさせ、ラーメン、すし、カレーなど北海道をテーマとした味を提供できるようになる予定である。
 ドン・キホーテグループの海外の店舗は、2006年に米国ハワイ州のDAI`EI(USA)INCを買収して米国進出をしたことから始まる。2013年7月にシンガポールにPPIを設立し、同年9月には、米国ハワイ州とカリフォルニア州でスーパーマーケットを展開するMARUKAI CORPORATIONを吸収し、24店舗のスーパーマーケットを展開するQSIとして子会社化した。こうして国内外で成長し続けているのである。

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 ドン・キホーテグループの強さの秘密は、徹底した「顧客最優先主義」の企業原理がある。これまでの一般的なチェーンストアでは、本部主導で決定された品揃えと統一された棚割りによる陳列方法や売り場における生活提案を行い、選びやすく買いやすい売り場づくりに努めてきたが、消費者はこうした画一的で特徴の無い売り場に魅力を感じなくなってきているのではないかと考えられる。
 これに対し、ドン・キホーテグループの店舗では、それぞれの売場の担当者が仕入れの権限と売り場づくりの裁量を任され、状況の変化に敏感に対応している。そのため、常に新鮮なイメージを作り出し、それが消費者に受け入れられているのである。
 我が国の流通業は、戦後の貧しい状態から高度成長を実現し、安定成長、バブル崩壊、リーマンショックによる景気後退、繰り返される震災や自然災害などを乗り越えて消費生活を支えてきた。昭和から平成に入り、やがて新たな元号を迎えるが、今後も流通業はドン・キホーテグループのように頑なに消費者の変化に的確に対応していくことが求められる。