小出康之

 大手メガバンクについては、UFJをめぐり東京三菱銀行と三井住友銀行間の綱引きが
当面の話題となっているが、来年10月頃の段階では、東京三菱、三井住友、みずほ、りそな、の4行体制となる。約40年前、富士、住友、三菱、三和、東海、第一、三井、勧銀、協和、大和が上位10行であった頃に比すれば、その後の合従連衡を経て、金融再生プログラムの最終年度らしい決着をみるといえるのであろう。
 
 中小企業については、地域金融機関の動向が気になるところであるが、地域顧客との密着化、いいかえれば優良先の「囲い込み」競争が激化している。競争環境下では、収益力の強化が課題であるが、リレーションシップバンキングの進展につれ、収益力の格差が拡大していく傾向にある。このような時に、地域金融機関の再編を狙った金融機能強化特別措置法(公的資金新法)が施行される。現行の預金保険法102条は、金融危機の恐れがあると認められた時にのみ自己資本比率が健全性基準(国内業務行で4%)を下回った金融機関へ公的資金の注入ができる。しかし、新法では、健全性基準を下回った不健全行のみでなく、基準を上回る健全行であっても、破たん行以外は予防的に公的資金注入を申請できるし注入できる。新法の政策意図は、「金融機関に合併を促す優遇措置により、来年4月実施予定のペイオフ全面解禁に向けて、積極的な新法利用を地域金融機関の再編につなげる」にあると見られている。新法でも個々の金融機関について、不良債権比率、経費率(OHR)、総資産利益率(ROA)などの数値目標が課せられるが、目標未達、実績悪化、また現状でも財務基盤が脆弱な場合は、ペイオフ全面解禁前に再編を加速し、不安要素を取り除くのが金融庁の狙いといわれている。
 取引している金融機関が再編の渦中に巻き込まれれば、一部を除く中小企業の多くは、その再編の影響を受けることになる。中小企業の経営破たんの原因に、①売上減少、②売上債権回収難、③過大投資(設備・在庫)に加えて、金融機関取引を原因とするものが大きくなっていることに今後も注意を払わざるを得ない。取引している金融機関によっては、新たな資金調達のパイプの確保、借入依存型経営からの脱皮、財務リストラの徹底、本来業務の収益改善などで多元的に金融機関の変化に対処することが求められている。
■小出康之(こいでやすゆき)
 ケーベルマネジメント研究所代表
 (社)中小企業診断協会東京支部中央支会副支会長