経営相談Q&A「社員数名の会社を経営しておりますが、最近よく耳にするBCPは策定した方が良いでしょうか。また、何から進めるべきでしょうか。」(2025年3月)
質問: 社員数名の会社を経営しておりますが、最近よく耳にするBCPは策定した方が良いでしょうか。また、何から進めるべきでしょうか。
回答: 社員数名の会社であっても、BCP(事業継続計画)を策定することは重要です。企業規模に関わらず、災害や事故が発生した際に、迅速に対応し事業を継続できるかどうかが、会社の存続や信頼性に直結します。特に以下の理由から、BCPの策定をおすすめします。
【BCPを策定すべき理由】
1.災害・事故対応
・地震、火災、感染症などのリスクに備え、迅速な復旧を可能にする。
・事業の中断を最小限に抑え、顧客への影響を軽減できる。
2.事業停止リスクの軽減
・経営者や主要メンバーが動けなくなった場合でも、業務を継続できる体制を整える。
・人的リスクを分散し、事業の安定性を確保する。
3.取引先や金融機関への信頼向上
・BCPを持つことで、取引先や金融機関からの信用が向上し、支援を受けやすくなる。
・緊急時の対応力がある企業として、競争力の強化につながる。
【策定の進め方(ステップ別)】
① 重要業務の洗い出し
まず、自社の事業の中で「絶対に止めてはいけない業務」を特定します。事業が停止すると最も影響の大きい業務をリストアップし、優先順位を設定します。
例:店舗運営、仕入れ、納品、財務管理、顧客対応 など
② 想定すべきリスクの検討
次に、自社にとって想定されるリスクを洗い出します。
・自然災害:地震・津波・台風・土砂崩れ・水害 など
・インフラ障害:火災、停電、通信障害 など
・人的リスク:経営者や主要メンバーの病気・事故・退職 など
・サイバーリスク:サイバー攻撃、情報漏洩 など
③ 代替手段や対応策の検討
想定したリスクに対して、具体的な代替策や対応策を検討します。
・拠点のバックアップ:店舗や事務所が使えなくなった場合の代替場所の確保
・業務の多能工化:他の社員でも業務ができるようマニュアル化、研修実施
・データのバックアップ:クラウド管理(Google Drive、Dropboxなど)を活用し、重要データを分散管理
・仕入れルートの確保:複数の仕入れ先を確保し、調達リスクを分散
④ 連絡体制の整備
緊急時にスムーズに連携できるよう、連絡体制を確立します。
・緊急時の連絡網作成:電話、メール、LINEグループ、Slackなどの活用
・主要取引先や銀行の連絡リスト作成:緊急時にすぐに連絡できるようリストを整備
・代行者の明確化:経営者が対応できない場合の代理者を決めておく
⑤ 訓練・見直し
策定したBCPが実際に機能するかを確認するため、定期的な訓練や見直しを行います。
・年1回のシミュレーション訓練
・新たなリスクが発生した際の随時更新
【まずは取り組むべき3つのポイント】
初めてBCPを策定する場合、以下の3つから取り組むとスムーズに進められます。
・重要業務のリスト化(絶対に止められない業務の確認)
・緊急連絡リストの作成(従業員・取引先・金融機関など)
・事業継続のための最低限のマニュアル作成(災害時や緊急時の対応手順)
これらを整備することで、小規模な企業でも実践しやすいBCPを作成できます。策定後は、従業員と共有し、定期的に見直しを行うことで、より実効性の高い計画へと進化させることが重要です。
-略歴-
小野和斗(おのかずと)
中小企業診断士(登録番号:418905)、防災士
静岡県三島市出身。大手地図会社のグループ企業に在籍時、地方自治体向けのハザードマップ、地図システム(GIS)に従事。防災の専門家として、2度のラジオ出演。
2020年10月に上京し、独立。独立後は、防災に携わってきた経験を活かしたBCP策定支援をはじめ、創業支援、事業計画書策定支援等を行う。
趣味は読書、落語鑑賞、ランニング等。