経営相談Q&A「そろそろ『事業承継』について考えなければいけないと思っているのですが、何から始めたらよいのでしょうか?」(2023年12月)
【質問】
長男への事業承継を考えていますが、どう進めていけばよいかわかりません。
1年前からM&A会社からのアプローチも受けており、そろそろ真剣な検討が必要かな、と焦っています。
【回答】
ご質問のように、後継者問題でお悩みの中小企業者は数多くいらっしゃいます。
「長男がいる」、「次男に継がせたい」、「従業員の誰かにと考えている」、「M&Aがいいのか判断できない」などなど、様々なケースがあります。
当コラムでは、同様の悩みをお持ちの事業者の皆様に、「事業承継」の検討を開始する入り口の部分について、ご案内したいと思います。
ご参考となりましたら幸いです。
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┏┏ 【検討の進め方(目次)】
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“そろそろ「事業承継」の検討を開始したい”と思い立ったら、次のような順番で進めていくとスムーズです。
1.「事業承継」の基本的な選択肢について知る
2.「事業承継計画書」を作りはじめてみる
3.「事業の磨き上げ」に着手する
4.「事業承継」の第一歩を踏み出してみる
5.「M&A」を選択する場合
以下では、これらの一つ一つについてご案内します。
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┏┏ 【1.「事業承継」の基本的な選択肢について知る】
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ひとことで「事業承継」といっても、「長男がいる」、「次男に継がせたい」、「従業員の誰かにと考えている」、「M&Aがいいのか判断できない」などなど、様々なケースがあります。
そこで、まずは「事業承継」の基本的な選択肢について知ることから始めてみましょう。
ご自身の会社がどのパターンに当てはまるのか、どういう選択肢があるのか、が明確になります。
事業承継の選択肢は、以下の4つが基本となります。
1)親族内承継
家族や親族の中に後継者候補がいる場合は、「親族内承継」が有力な選択肢となります。
2)役員・従業員承継
家族や親族の中に後継者候補がいない場合、いるけれども後継者として不安が大きい場合、社内の役員や従業員にも候補になりうる人材がいる場合、といったケースでは、「役員・従業員承継」が有力な選択肢となります。
3)社外への承継(M&Aなど)
家族・親族・社内のいずれにも後継者候補がいない場合、いるけれども引き受けてもらえなかった場合、といったケースでは、「M&A」などの社外承継が選択肢になり得ます。
4)廃業
上記いずれの選択肢にも該当しない場合、あるいは、自分の代で終わりにしようという意思が固い場合は、「廃業」という選択肢もでてきます。
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┏┏ 【2.「事業承継計画書」を作りはじめてみる】
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創業計画書や事業計画書などがあるのと同様に、「事業承継計画書」という便利なフォーマットがあります。
「事業承継計画書」のひな形は色々な機関が提供しており、構成に若干違いはありますが、概ね以下のような内容になっています。
・事業承継の概要
・経営理念
・事業の中長期目標
・関係者の理解
・後継者教育
・株式・財産の分配
・事業承継計画表(スケジュール)
たいてい1枚か2枚のシートになっており、記入例もついてます。
エクセルやワード形式で入力できるようになっていますので、記入例を参考にしながら、自社に置き換えて入力なさってみるとよいでしょう。
なにぶん先のことですから、わからないことだらけであることが想定されますが、あくまでも「現時点」の計画ということで割り切って作成すると気軽に着手できます。
遅くとも何年後に承継できていたいか、10年後か20年後か、そのためには何年前から引き継ぎを開始しないといけないか、そのためには何年前に正式な話し合いを開始しなければならないか、といった具合に、ゴールから決めていくと計画しやすいかもしれません。
そして、時がたち、状況が変わってきたら、その時バージョンの計画書に改めていけばよいのです。
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┏┏ 【3.「事業の磨き上げ」に着手する】
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親族内承継であろうとも、役員・従業員承継であろうとも、社外への承継であろうとも、会社自体がしっかりしていないと引き継がれるほうも大変です。
親族や社内の後継者であれば、引き継いだ後の経営に四苦八苦しなければならなくなりますし、M&Aであれば魅力のない事業は買ってもらえないでしょう。
引き継ぐ前に、会社を少しでも磨き上げておきたいところです。
事業の磨き上げのためには、以下のような流れで自社を見つめ直してみることをオススメします。
・現状把握
・SWOT分析
・4P分析
・ドメイン、ビジネスモデル確認
・経営革新・経営改善計画策定
・マーケティング戦略立案
まずは、現在の財務状況などを掌握なさっておく必要があります。
そして、売上構造(ビジネスモデル)を再確認する必要があります。「顧客層別売上高推移表」や「ビジネスモデル図」などを作成なさってみるとよいでしょう。
次に、SWOT分析を行い、磨き上げのための戦略(方向性)を見定める必要があります。4P分析によって、戦術面での改善点を見極める必要も出てくると思います。
たとえば、商品やサービスに課題がある、ホームページが活用できていない、などなどです。
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┏┏ 【4.「事業承継」の第一歩を踏み出してみる】
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さあ、ここまで進んできたら、作成した「事業承継計画書」に沿って、第一歩を踏み出してみましょう。
たとえば、親族内承継や役員・従業員承継であれば、以下のようなトライです。
・後継者候補に、それとなく承継の話を切り出してみる。
・業務の補佐という形を経ながら、徐々に意識を醸成してもらう。
・後継者が得意とする業務を部分的に手伝ってもらい、親近感を得てもらう。
・一緒に事業を推進する期間を確保し、経営の基本理念などを理解してもらう。
事業承継は一大社会課題ですので、様々な公的機関による支援が充実しています。
無料セミナーなどもありますから、後継者候補の方とともに参加なさってみてはいかがでしょうか。
“突然切りだすとストレスになるのではないか”、“断られてしまったらどうしよう”といった不安がおありのことと思います。
支援策を上手に活用しながら、さりげなく、スムーズに、それでいて着実に、事業承継を進めたいところです。
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┏┏ 【5.「M&A」を選択する場合】
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“最近、M&A会社からのアプローチを受けている”、“決算書の提示などを求められている”といったご相談も増えています。
もちろん受けるか受けないかは個人の判断ですが、まずは、以下のようなことをお試しになってみてはいかがでしょうか。
・「中小M&Aハンドブック」や「中小M&Aガイドライン」で、M&Aについて学んでみる。
・公的機関の無料セミナーなどで知識を深める。
・「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」などの公的機関に相談してみる。
「中小M&Aハンドブック」などは、M&Aを進める際の全体像や、専門業者依頼時の留意点などについて国がまとめたガイドラインです。
M&Aについて何らかのアクションを起こされる際には、いきなり民間のM&A会社ではなく、上記の公的機関活用をオススメします。
無料相談、デューデリジェンス支援、M&Aマッチング支援、といったサービスや、「事業承継・引継ぎ補助金」といった補助金活用も可能です。
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┏┏ 【ご参考資料】
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最後に、ご参考資料をいくつかご紹介します。
(すべて2023年11月10日現在の情報です。時の経過により変更となる可能性がありますので、あらかじめご了承ください。)
○(公財)東京都中小企業振興公社「事業承継ポータルサイト」
https://shoukei.tokyo/
島 耕作が事業承継のポイントをアドバイスしてくれる「事業承継のすゝめ」のダウンロードや、無料相談、無料セミナーなどの情報が満載です。
○(独)中小企業基盤整備機構「中小企業経営者のための事業承継対策」
https://www.smrj.go.jp/tool/supporter/succession1/index.html
「中小企業経営者のための事業承継対策」や「事業承継計画表記入様式」、「事業承継計画書(骨子)記入様式」がダウンロードできます。
○東京都事業承継・引継ぎ支援センター
https://www.jigyo-hikitsugi.jp/
国が運営しているサービスの東京都の相談窓口です。「譲渡をご希望の方」、「譲受(買収)をご希望の方」のそれぞれに対する無料相談などを行っています。
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┏┏ 【その他、お役立ち情報】
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今回のコラムはいかがでしたでしょうか?
少しでも皆様のお役に立てましたなら幸いです。
以下のコラムも是非ご参考になさってみてください!
○「無料経営相談を活用しましょう!」(2019年10月)
https://www.rmc-chuo.jp/manager/column/2019092801.html
○「事業計画書作成のススメ」(2016年11月)
https://www.rmc-chuo.jp/manager/column/2016102101.html
○「商店街活性化のポイント」(2015年1月)
https://www.rmc-chuo.jp/manager/column/20151_3.html
○「リース契約のトラブルに気をつけましょう!」(2013年6月)
https://www.rmc-chuo.jp/manager/column/20136_5.html
○「自社に合う補助金・助成金はどうやって見つければよいでしょうか?」(2021年10月)
https://www.rmc-chuo.jp/manager/consultation/2021100101.html
■鎌田 浩一(かまた ひろかず)
(一社)東京都中小企業診断士協会 中央支部 副支部長
中小企業診断士
ITコーディネータ
ITストラテジスト