【質問】

セーフティネット保証制度とはどのようなものですか?

【回答】

1.セーフティネット保証制度とは
 セーフティネット保証制度とは、国の保証制度です。対象は中小企業で、法人は登記上の住所地又は事業実態のある事業所の所在地、個人事業主は事業実態のある事業所の所在地の市町村(または特別区)の窓口で認定を受けることができます。認定を受けるとセーフティネット保証制度を条件とした融資などの申請ができるようになります。

 セーフティネット保証制度は、経営安定関連保証として、中小企業信用保険法第2条第5項に基づく保証制度で、下記のように、1号~8号まで種類がありますが、今回はコロナ禍で多くの方が認定を受けている4号、5号について説明したいと思います。

 1号:連鎖倒産防止、2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限、3号:突発的災害(事故等)、4号:突発的災害(自然災害等)、5号:業況の悪化している業種、6号:取引金融機関の破たん、7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整、8号:金融機関の整理回収機構に対する貸し付け債権の譲渡

 セーフティネット保証の認定を受けると通常枠(2憶8,000万円)とは別枠で2憶8,000万円(無担保の場合8,000万円)の保証枠が設定され、その保証枠での融資を利用することができるようになります。つまり、通常枠で2憶8,000万円の借入債務を有していたとしてもセーフティネット保証の認定を受けると新たにセーフティネット枠での融資申請が可能になり、資金繰り対策が容易になると考えることができるのです。※融資には、金融機関、信用保証協会の審査があるため、セーフティネット保証を受けた場合でも100%融資実行に至らない可能性もある点に留意する必要があります。

2.セーフティネット4号(自然災害等)
 突発的災害(自然災害等)の発生に起因して売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置です。
 令和2年6月現在は、「令和二年新型コロナウイルス感染症」の他、「令和元年台風第19号に伴う災害」、「平成30年7月豪雨による災害」、「令和元年台風第15号による災害」などがあり、指定条件は災害毎に指定されています。

 認定条件は、災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれることとされています。(コロナ禍においては、創業者等を対象とした緩和条件でも設定されています。)

 セーフティネット4号の認定を受けた場合、信用保証協会の100%保証を受けることができるようになります。

3.セーフティネット5号(業況の悪化している業種)
 (全国的に)業況の悪化している業種に属する中小企業者を支援するための措置です。
 認定条件は下記の二つです。
 ①指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
 ②指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

 指定業種は3ヶ月毎に見直しが行われているため、利用する際には自社の事業が指定業種に含まれているかを確認する必要があります。

 セーフティネット5号の認定を受けた場合、責任共有制度となるため、信用保証協会の保証は80%となり、金融機関に20%の保証負担が必要になります。
 そのため、セーフティネット5号はセーフティネット4号に比べると、金融機関の保証負担が生じるため、融資のハードルは高くなると考えられます。

4.実際の活用方法
 セーフティネット認定を受けると都道府県のセーフティネット認定を条件とした融資制度を申請できるようになります。
 融資申請の流れは次の通りです。①市区町村でセーフティネット認定の申請を行い、認定書を受け取る。②金融機関に融資を申請する。(この際にセーフティネット認定書が必要になります。)③金融機関が審査をするとともに信用保証協会に保証の審査依頼をする。④金融機関と信用保証協会の審査を経たうえで融資が実行される。

 セーフティネットを利用した場合に利用することができる融資制度として、東京都の融資制度では、下記の融資があります。

 感染症対応融資
 セーフティネット保証(4号・5号 ※5号は売上が15%以上減少の場合に限る)または危機関連保証の区市町村認定を受けた事業者の方が対象。

 融資限度額 無担保4千万円
 融資期間 10年以内(据置5年以内)(運転資金、設備資金)
 利率   1.6%~2.0%以内(責任共有制度対象外の場合)
  ※利息は融資実行後3年間全額補助
 信用保証料 全額補助

 また、市区町村の中には、独自にセーフティネット認定を条件とした融資メニューを有するところがあります。その場合は、セーフティネット認定と同時に融資あっせんを申請する必要があります。その後は、金融機関に申し込みを行い、都道府県の融資制度と同様の審査を経て融資が実行されることになります。

 このようにセーフティネット保証制度の説明を行ってきましたが、セーフティネットの認定はそれだけでは融資を受けることができません。セーフティネットを条件とした融資を申請する際に必要な認定制度とお考えいただければ良いと思います。

以上

略歴
永井謙一
中小企業診断士
中央支部 経理部副部長、中央支部執行委員