1.働く人の意識の変化
人材の流動性が活発化し、大企業のみならず中堅企業も続々と賃上げを表明しています。
物価上昇局面の現在においては必要な動向と言えます。しかし世界的な職場の従業員意識調査の結果からは、企業で働くことの目的が「給与」だけではなく、「自分の成長のため」「目的達成のため」「自分の人生のため」と職場に対する期待値が変わってきています。大変な思いで獲得した人材が、他社への転職で離職してしまわないようエンゲージメント向上に焦点を当てた職場環境向上施策の実施がより重要になってきています。

2.リーダーに求められるスタイルの変化
上記のように従業員の働く意識は大きく変わろうとしています。それに伴って職場におけるリーダーの役割も変革が求められています。主要な職場ニーズの4つの変化をご紹介します。
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従業員の職場ニーズの変化に伴い、リーダーも従来のBoss型リーダーからコーチ型リーダーへと求められるスタイルが変わってきています。特に新入社員や、別の職場から転職してきたニューカマーに対して時代遅れの対応にならないよう注意が必要です。

3.従業員を理解する。
 経営者の皆様から「若い従業員とのコミュニケーションが難しい」「従業員に向上心がなくて困っている」などのご相談を受けることがままあります。「若者が何を考えているのかわからないのでコミュニケーションが取れない」とのお話ですが、若者に限らず他人の考えは聞いてみないことにはわからないものです。わからないことは「本人に聞いてみる」しかありません。「聞く」場合もYes、Noで答えられる質問ではなく「なぜ」「どうして」「どのように」などオープンクエスチョンで質問することで相手の気持ちを引き出しましょう。質問の時に何より大切なのが“傾聴”です。人は聞いているつもりで実は相手の言葉を聴いていないことが多く、多くの場合、聞きながら次の質問や次の会話を考えているのだそうです。“傾聴”は意識しないとできないということです。
 従業員との希薄になったコミュニケーションの改善にはOne on Oneがお勧めです。コーチ型リーダーには必須アイテムです。しかし、ただやればよいというものではありません。One on Oneはあくまでも従業員のための時間。リーダーの武勇伝を語る場でも業務報告を受ける場でもありません。One on Oneの時間は従業員のための時間だということを明示し、従業員の心理的安全性を担保しましょう。One on Oneの時間、リーダーはあくまでも聴き役に徹しましょう。上司側は半々(5対5)で話していると思っていても、たいていの場合8対2でリーダーがしゃべりすぎています。よほど気を付けていないと2対8は実現できないということですね。
 回を重ねることで少しずつ従業員の心が開き、個人のキャリアプランを一緒に考えてあげられるようになれば、コミュニケーション問題での悩みも解消されることでしょう。

4.従業員の個々の“強み”を活かす
 では心を開いてくれた従業員が今後のキャリアプランを相談してきました。さあどうしましょう。時代も違えば置かれている環境も違う。自分の経験を語っても相手には当てはまらないかもしれない。そんな時には相手の“強み”に注目してあげてください。日々一緒に仕事している従業員であれば、個人の得意な分野や、やり方、思考法などリーダーならではの気づきがあるのではないでしょうか。そういった個の強みを引き出し、日々の業務の中で活かす方法を一緒に考えてあげることがエンゲージメント向上に影響するという結果が出ています。職場の満足度には直属の上司の影響が何よりも大きいものです。経営者のみならずマネジメント層にはコーチ型のリーダーになってもらえるよう育成計画をしっかり立てていくことが必要です。

従業員エンゲージメントの向上は、特にサービス業など顧客中心型の企業を目指しておられる経営者の方には重要です。なぜなら、従業員満足度がそのまま顧客満足度に反映するからです。 

<略歴>
 尾崎 多佳代
 ITベンダーで商品企画、マーケティング、コンサルティングに従事。
 独立後は「マーケティング」に加え、「創業支援」「事業承継」
 「従業員エンゲージメント向上」などをテーマに、経営者の皆様へ伴走型支援を
  行っております。経営者に寄り添いながら全力でサポートできるコンサルタントを目指して日々活動しています。