1,フランチャイズとは何か
フランチャイズは、アメリカで開発されたビジネスシステムで、その言葉の意味は「〈人・会社などに〉特権を与える。」というものです。フランチャイズビジネスでは、特権を与える者をフランチャイザー(本部)といい、特権を与えられる者をフランチャイジー(加盟者)といいます。
では、特権の内容とは、どのようなものでしょうか。
フランチャイザーが開発した商品や仕組みで、一般的には、次の3つであると言われています。※これらは総称してフランチャイズパッケージと呼ばれます。

 ①商標・サービスマーク・チェーン名称を使用する権利
 ②商品やサービス、情報など、経営上のノウハウを利用する権利
 ③継続的に行う指導や援助を受ける権利

一方、フランチャイジーは、そのパッケージを利用し、事業に必要な資金を投下して、自己の事業を行います。フランチャイジーは利用の見返りとして、一定の対価を支払わなければなりません。この対価は、一般的に、加盟金やロイヤルティと呼ばれます。

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2.フランチャイズ加盟のメリット・デメリット
フランチャイズ加盟にはメリット、デメリットがあります。例えば、加盟者が、独自性の高いビジネスに取り組みたいのなら、画一的なビジネスモデルであるフランチャイズチェーンへの加盟は不向きであると言えます。ノウハウを得るために最初はフランチャイズでスタートして、将来的に自分独自の事業にしたいという場合でも、契約上、競業禁止義務などで制約がかかることがほとんどです。

加盟者側から見たフランチャイズ加盟のメリットとしては、以下があげられます。
 ①直営店の成功モデルなどがあり、マニュアルや研修が整備されているため、独自開業よりリスクが低い。
 ②新しいメニュー開発やキャッシュレス対応など新商品、新サービスの導入について本部のサポートが得られるため、自身は店舗運営に専念できる。
 ③チェーンのスケールメリットを享受できるともに、他店の成功事例などが学べるなど、ネットワークを有効に活用できる。
逆に、デメリットは以下のとおりです。
 ①マニュアルに従った経営が求められるため、加盟者の独自性が出しにくい。
 ②利益が出ていなくても、契約で決められた加盟金、ロイヤルティなどがかかる。
 ③契約中はもちろん、契約後も数年間は競業禁止などの制約を受ける。

フランチャイズ加盟については、自身の希望するビジネスの特性や方向性、将来の事業計画なども考慮しながら、慎重に検討する必要があります。

3.フランチャイズ加盟に向けたステップ
加盟については、以下のステップに則り、進めていくとよいでしょう。

(1)フランチャイズビジネスの理解と自己分析
まず、フランチャイズビジネスについての理解を深めるとともに、加盟者自身について自己分析を行い、フランチャイズの活用が自身にとってふさわしいかを判断します。自分はなぜ起業するのか、起業の際に自身に足りないものは何かを確認し、加盟で得られることと、加盟により生まれる義務の双方を認識しておく必要があります。

個人の場合、以下の6つについて自問してみましょう。
 ① フランチャイズ加盟が独立にふさわしい手段か
 ② 自分の性格・志向に合った業種、業態のチェーンを選択しているか
 ③ 自己資金は(できれば開業資金の半分以上)は準備できているか
 ④ 独立事業者である心構えはできているか
 ⑤ 複数店展開を視野に入れた中長期ビジョンができているか
 ⑥ 協力してくれる家族や友人がいるか

法人の場合は、同様に以下の6つがポイントです。
 ① フランチャイズ加盟の目的は明確か
 ② 既存の経営資源を有効に活用できるか
 ③ 既存事業とリスク分散はできているか
 ④ フランチャイズ加盟の必要性を社員に伝えているか
 ⑤ フランチャイズ担当を優秀な社員に任せられるか
 ⑥ 情報収集に時間をかけ、じっくり検討したか

(2)幅広い情報収集と業種・業態の選択
次に、加盟のための基礎材料や判断基準を蓄積すると共に、自身で判断できる目を養うことが重要です。フランチャイズ業界のみならず、さまざまな業種・業態の動向や、業界内の企業情報などについて幅広く収集します。日本経済新聞や日経MJなどはもとより、日本フランチャイズチェーン協会などのホームページ、本部情報比較サイトなどのポータルサイトなどを活用するとよいでしょうです。
社会・経済環境の動向、消費者のライフスタイル・嗜好のトレンドなどから、業種・業態の動向を確認するとともに、店舗数やライフサイクルの状況などをみて、業種・業態の選択を考えましょう。

(3)本部情報の収集と絞り込み
業種・業態がある程度絞り込めたら、セミナーや展示会、本部が開催する事業説明会などに参加して、個別企業の情報を入手します。企業概要、経営理念、沿革、事業内容、本部売上高、店舗数などの事業内容とともに、開業資金、モデル収支、加盟基準などの基本情報を確認します。この段階では、まだ、ひとつの企業に絞り込まず、複数の本部を確認することが重要です。

(4)本部の評価・選択
評価・選択の最終段階として、本部や既存の加盟店を実際に訪問します。本部や加盟店の生の声や実態、社風などは、加盟を選択する上で極めて重要な要素です。本部訪問時には、従業員の対応、幹部層の経営姿勢などについて確認すべきです。加盟店訪問時には、立地環境、商品、接客、サービスなどの状況とともに、消費者として自分なら実際利用するかについて確認します。また、加盟店主の生の情報が、本部のこれまでの説明と違和感がないことも重要です。なお、本部の最終評価には、①本部経営姿勢②情報公開度③事業運営力④加盟店支援力⑤店舗収益性⑥加盟店満足度の6つの視点をもって確認すべきです。

(5)契約内容の確認と最終判断
最後に、本部が加盟希望者に対して交付・説明することが義務付けられている『法定開示書面』の記載内容を確認します。トラブル防止のためにも、本部担当者と読み合わせを行い、不明な点は質問しましょう。そして、事業計画書や資金計画書に無理がないかを最終確認します。本部からの開業提案書については、その情報を鵜呑みにするのではなく、自身でも内容を検討し、計画を作成してみることが重要です。
その後、経営トップなどの責任者との最終契約面談を経て、契約実行になります。フランチャイズ本部と加盟者は「理念共同体」です。経営トップとの面談では、その相手が共感や信頼できる人物であると確信できることが重要なポイントです。

以上

●略歴:宇野 毅(ウノ タケシ)
東京都中小企業診断士協会中央支部 執行委員・会員部副部長
中小企業診断士、公認内部監査人(CIA)、健康経営エキスパートアドバイザー