今回は、補助金の加点項目の対象となっている、国の施策・事業を紹介します。
補助金の申請では、審査項目に合った事業計画の策定が重要となります。そして、加点項目を積み上げていけばさらに採択率が高まります。
補助金にて、加点項目は多種用意されています。「第12回事業再構築補助金」では、加点項目が12項目ありました。その中で借換要件や賃金アップなど事業者努力や事業状況で加点できるものがあります。また、社会的課題へ対応した国の施策および事業へ参加して加点される項目があります。後者は、中小企業も参加しやすい内容になっていますので、国の施策および事業へ参加して加点項目を増やしましょう。
以下に紹介するのは、事業再構築補助金(第12回)加点項目の中から抜粋しました。数週間で認定されるものもありますが、数か月かかる場合もあります。また、数か月~1年間の取り組み実施が必要なものもあります。補助金の申請で忙しくなる時期の前から参加し準備しておくといいでしょう。また、他の補助金でも加点項目となっている場合があります。

 

「パートナーシップ構築宣言」

事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で宣言するものです。
パートナーシップ構築宣言では、下記の(1)(2)を宣言します。
(1)サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携
オープンイノベーション、IT実装、グリーン化 等

(2)下請企業との望ましい取引慣行(「振興基準」)の遵守
特に、取引適正化の重点5課題について宣言します。

①価格決定方法
②型管理などのコスト負担
③手形などの支払条件
④知的財産・ノウハウ
⑤働き方改革等に伴うしわ寄せ

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出典・参考:パートナーシップ構築宣言HP https://www.biz-partnership.jp/
主催:内閣府・中小企業庁・公益財団法人全国中小企業振興機関協
※登録企業リスト現在の登録数51,884社(2024/7/28現在)

 

「健康経営優良法人」

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。

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出典・参考:健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」
https://kenko-keiei.jp/
経済産業省 健康経営有料法人認定制度 1.健康経営優良法人認定制度とは
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

 

「女性の活躍推進企業データベース」

女性活躍推進法の基づく行動計画、自社の女性活躍に関する情報をオープンデータとして「女性の活躍推進データベース」で公表します。
女性活躍推進法により、従業員数101名以上の企業は、一般事業主行動計画の策定・届出及び女性活躍に関する情報公表が義務づけられています。2022年7月8日から、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、「男女の賃金の差異」の情報公表が義務づけられています。
事業再構築補助金での加点項目には以下のように記載されています。従業員数100人以下であってもデータベースに一般事業主行動計画を公表すれば加点項目として対象になります。

 

【ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点】

1. 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者又は従業員数100人以下であって、「女性の活躍推進データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している者

※事業再構築補助金【サプライチェーン強靭化枠を除く】公募要領(第12回)より抜粋

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度です。
登録されたデータに対し、企業で活躍したい女性が企業の女性の働きやすさの企業情報を照会できます。また、他企業により検索し照会することで社内施策の参考とすることができます。

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出典・参考:女性の活躍推進企業データベース
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
※現在の登録企業数31,259社(データ公表企業)、42,171社(行動計画公表企業)

一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)

「両立支援のひろば」は、次世代育成支援対策推進法に基づく、一般事業主行動計画の公表や育児・介護休業法に基づく育児休業取得率等の公表、仕事と家庭の両立に取り組む企業や働く人をサポートする情報を掲載するサイトです。

<公表する(企業向け)>
・次世代法に基づく一般事業主行動計画の行動
・プラチナくるみん認定企業の次世代育成支援対策の実施状況の公表
・くるみん認定基準における育児休業取得率等の公表
・育児・介護休業法に基づく育児休業取得率等の公表

<検索する(企業・働く人・求職者向け)>
・企業の行動計画を参考にしたい。
・仕事と育児、仕事と介護の両立の取組内容を知りたい。
・「くるみん」「プラチナくるみん」などの認定企業を検索したい。
・育児休業取得率等を公表している企業を探したい。

2023年4月から、従業員1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられています。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。
事業再構築補助金での加点項目には以下のように記載されています。従業員数100人以下であってもデータベースに一般事業主行動計画を公表すれば加点項目として対象になります。

【ワーク・ライフ・バランス等の取組に対する加点】
2.次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者又は従業員数100人以下であって、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している者

※事業再構築補助金【サプライチェーン強靭化枠を除く】公募要領(第12回)より抜粋

くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークとは、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。

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出典・参考: 仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト 両立支援のひろば
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/index.html
厚生労働省 くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
※現在の登録企業数:129,823社(次世代育成支援対策法に基づく行動計画登録企業)

 
 

おわりに・・・
今回は、補助金の加点項目という視点から国の施策および事業を紹介しました。国の施策および事業は、中小企業でも取り組みやすく工夫されているものがあります。しかし、企業では売上に直結しない施策への対応は後回しになってしまいがちです。
国の施策および事業に参加することは、自社内にて管理体制の構築や強化が行える、自社の事業内容とあるべき姿とのギャップを改めて確認でき課題が見える、問題点を自社内の対応で是正できるなどメリットがあります。また、単独では解決しにくかった課題であっても、国の施策および事業に参画する企業が増えることでスタンダードになり、外部環境が変わることで解決しやすくなるこが期待できます。
「補助金の加点になる」というインセンティブがきっかけとしてでもいいと思います。国の施策に目を向け事業に参画する企業を増やしましょう。

 

■略歴
福田 まゆみ
中小企業診断士
一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部
執行委員/会員部/能力開発部/実務従事支援部副部長