前回は、専門家コラム「ダイバーシティ・経営のすゝめ」で、多様な人材の必要性等について触れさせていただきました。今回は、多様な人材の中でも、年齢で見た際の「高齢者」について一緒に考えられたらと思います。

〇高齢者の現状
 令和5年版高齢社会白書によると日本の総人口は、令和4年10月1日現在1億2,495万人となっています。そのうち、65歳以上人口は、3,624万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は、29.0%です。
 65歳以上人口は、いわゆる「団塊の世代」の影響を大きく受けています。団塊の世代が75歳以上となる令和7年には3,653万人が65歳以上になると見込まれています。その後も65歳以上人口は増加傾向にあることが予測されています。
 高齢化率に関しては、少子化の影響も受けており、令和19年には、33.3%になると見込まれています。国民の3人に1人が65歳以上というこれまでに日本が経験したことのない超高齢化社会となっていくことになります。

図 高齢化の推移と将来推計

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出所:内閣府「令和5年版高齢社会白書」

〇ダイバーシティ経営における高齢者の必要性
 上記のとおり、超高齢化社会となる日本で問題となるのは、生産年齢人口(15~64歳)の減少です。
 労働の中核的な担い手となっている生産年齢人口が減少することで生産活動を維持できなくなることも考えられます。このような状況を解消するには、生産年齢人口以外の方(高齢者等)も労働の担い手となっていただく必要があります。

〇高齢者雇用のメリット
 高齢者雇用においては、長年の経験に基づいた以下のメリットが考えらます。
  ① 長年業務に従事してきた専門的能力
  ② 若い世代に対する円滑な技能承継
  ③ 若年層、中間層のキャリアモデル
  ④ 若年層、中間層、管理職との潤滑油

〇高齢者雇用の留意点
 高齢者雇用にあたっては、加齢に伴う心身機能の低下、新しい機械・技能への対応、若年労働者とのコミュニケーションのあり方等を考慮して対策に取り組むことが必要である。例えば、以下のような取り組みを実施する必要があります。
 ① 機械設備・作業環境・作業方法の改善
 ② 健康の保持増進
 ③ 快適な職場環境の形成
  ・冷暖房や虫眼鏡の導入
  ・作業場の照度を明るく設定
  ・掲示物の文字サイズを大きくし、写真やイラストを追加
  ・操作性の高い機械の導入
 ④ 安全衛生教育の実施
 ⑤ 多様な働き方が出来る環境整備。
  ・テレワークの導入、短時間勤務

〇まとめ
 ダイバーシティ経営の一環として高齢者雇用をすることで、人手不足や生産性の向上、イノベーションにつながる可能性があります。雇用にあたっては、職場環境や職務内容の整備、整理をすることで、働きやすい環境を整える必要があります。

<参考>
 ・経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選/100選プライム」
 ・令和5年度版高齢社会白書

以上

●略歴:
 髙久雅樹
  経済産業大臣登録 中小企業診断士
  一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 研究会部 部長
  一般社団法人 日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構 一般会員
【経歴】
 法政大学現代福祉学部卒業後JASDAQ上場のコンサルタント会社の財務コンサルティング部で勤務。独立後、経営コンサルティングを中心に活動中。