中小企業の再生支援についての第3回目として、「ポストコロナ、アフターコロナの中小企業再生」をテーマに2022年4月から開始された「収益力改善支援」などの制度についてご紹介いたします。

2019年9月3日発行の中央支部メールマガジンVol.309及び2021年8月3日発行の中央支部メールマガジンVol.332において、「中小企業の再生支援について」をテーマに2回にわたって「中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)」について紹介をさせていただいたところ、各方面から様々な反響がありましたので、今回は第2回の続きをお伝えできればと思います。

過去のメールマガジンで「中小企業活性化協議会」を取り上げたきっかけとしては、2017年の4月から2019年の6月までの約2年に渡って、東京都中小企業再生支援協議会(現:東京都中小企業活性化協議会)に出向し、サブマネージャー(統括責任者補佐)として中小企業の再生支援に携わっていたことが大きく影響しています。その中で経験したことや感じたこと等を少しでも伝えられればと思い、取り上げさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等により中小企業の再生支援をめぐる環境は激変し、「中小企業活性化協議会」についても大きく変化をしています。第3回目となる今回は、ポストコロナ、アフターコロナにおける中小企業の再生支援についてお伝えできればと思います。

前回の内容と一部重複しますが、まずは中小企業活性化協議会について簡単に説明します。2003年に産業活力再生特別措置法(産活法)に基づき中小企業再生支援協議会が設置されました。その後産活法の改正、産業競争力強化法への移行、中小企業活性化協議会への変更等を経て、現在まで続いている機関です。各都道府県に1か所ずつ設置されており、東京都では東京商工会議所内に設置されています。
中小企業再生支援協議会は、2003年から約20年以上に渡って同じ名称で続きましたが、2022年4月に経営改善支援センターと統合され、中小企業の収益力改善から再チャレンジまでを幅広く支援する「中小企業活性化協議会」に変わりました。
その間、支援の内容や範囲についても徐々に変化しています。当初は、「事業再生支援」のみでしたが、2013年からは再生の前段階の「経営改善支援」、2017年にはさらにその前段階の「早期経営改善支援」がスタートし、2018年9月からは中小企業の経営者の再チャレンジを支援するために「再チャレンジ支援」もスタートしました。さらに、2020年4月からは、新型コロナウイルスの影響を受け、資金繰りに窮する中小企業者を支援するため、窓口相談や金融機関との調整を含めた「特例リスケジュール計画策定支援」がスタートしました。
そして、中小企業活性化協議会へと生まれ変わった2022年4月からは、新型コロナウイルスの影響を問わず、幅広く中小企業者の収益力の改善を支援し、ポストコロナに向けたアクションプランを策定支援する「収益力改善支援」がスタートし、地域経済の活力の再生に貢献しています。さらに、経営改善支援センターと統合されたことで、早期経営改善計画策定支援(ポストコロナ持続的発展計画事業)や経営改善計画策定支援(405事業)についてもワンストップで支援ができる体制へと変化しています。

【中小企業活性化協議会の概要】

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出典:中小企業庁ホームページ

新たにスタートした収益力改善支援では、中小企業活性化協議会が、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業者を対象に、収益力改善計画(収益力改善アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画)の作成を支援しています。また、必要に応じて持続的・安定的な事業継続や思い切った前向き投資の実施に向けて必要となる内部管理体制や経営の透明性確保に向けたガバナンス体制の整備への取組についても支援をしています。
ここで作成する収益力改善計画は、1年間から3年間の計画で収益力改善計画遂行中の行動計画(収益力改善アクションプラン)+簡易な収支・資金繰り計画を含むものとなります。なお、リスケジュール等の金融支援が伴う場合には、計画期間が1年間となります。
また、収益力改善計画の書式、記載例、留意事項は参考資料として公表されています(金融支援ありのものと金融支援なしのものの2種類があります)。そのため収益力低下、借入増加に直面している方だけでなく、今すぐに中小企業活性化協議会の支援を受ける状況ではないものの将来に大きな不安がある方についても、自主的に作成をして予防を図ることができるようになっています。

【収益力改善計画の記載例(抜粋)】
画像2出典:中小企業庁ホームページ

新型コロナウイルスについては、5類感染症に移行するなど徐々に落ち着きを見せていますが、一方で円安の進行や物価の高騰など急速な外部環境の変化が続いています。これらの環境変化等に十分対応できず、売上の減少や借入の増大に直面している中小企業が数多く存在しており、今後の収益力改善に向けた取組をどのように進めていくか悩みを抱えていると思います。既に資金繰りへの影響が出ている方はもちろん、経営を行う中で少しでも気になることがある方は、まずは「中小企業活性化協議会」に相談をしてみることをおすすめします。

今回は、第3回目ということ収益力改善計画を中心に「ポストコロナ、アフターコロナの中小企業再生」について説明しました。第4回目以降は、中小企業再生の手法や手続きなど、より具体的な内容をお伝えできればと思います。

【東京都中小企業活性化協議会】
〒100-0005東京都千代田区丸の内3-2-2 丸の内二重橋ビル4階
電話番号:03-3283-7425
FAX番号:03-3283-7429
https://www.tokyo-cci.or.jp/regene/

加藤 匠(かとう たくみ)
中小企業診断士・税理士
東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員