専門家コラム「ローカルベンチマークで経営分析を行いましょう」(2023年11月)
経済産業省が推奨する経営診断ツール「ローカルベンチマーク」を利用して、自社の現状を見える化しましょう。「ローカルベンチマーク」の三つの入力シート「財務分析」、「商流・業務フロー」、「4つの視点」について説明します。
(1)ローカルベンチマークとは
ローカルベンチマークは経済産業省が推奨する企業の経営診断ツールです。経営状況の改善や企業が成長していくために現状の把握と取り組むべき課題の設定が重要になります。
様々な経営の相談を受けている中で、目の前の売上を上げるための短期的な取り組みのご相談を受けることも多いのですが、継続的に成長していくためには長期的な目標設定や現状把握を行ったうえで計画的な経営を行っていくことが必要です。
ローカルベンチマークの項目を入力していくことで、自社の現状把握ができ、現状を踏まえて取り組むべき課題の検討を行っていくことができます。
通常の経営診断ツールは財務情報を分析するもののイメージが大きいですが、ローカルベンチマークは財務情報と非財務の両面の診断を行っていくのが特徴です。
実際に入力を行うシートは、「財務分析」、「商流・業務フロー」、「4つの視点」の三枚です。
(2)財務分析シート
「財務分析」のシートに自社の決算状況を入力すると以下の指標が自動計算されチャートで表示されます。
①売上高増加率…売上持続性
②営業利益率…収益性
③労働生産性…生産性
④EBITDA有利子負債倍率…健全性
⑤営業運転資本回転期間…効率性
⑥自己資本比率…安全性
(3)商流、業務フローシート
「商流、業務フロー」のシートでは、業務の流れを5つのプロセスに分けて記入します。それぞれのプロセスには、各プロセスでの実施内容のほか、差別化ポイントを記載していきます。自社の強み、他者との差別化ポイントについては経営者の方にお聞きしてもすぐにわからないというケースや表層的な部分しかわからないというケースが多々あります。プロセスごとに改めて自社の差別化ポイントを考えていくことで、幅広い視点からより深く考えていくことができます。自社の差別化ポイントをしっかりと把握することが、競合他社に対する優位性につながります。業務フローの他、得意先やエンドユーザーに選ばれている理由、仕入れ先や協力先を選定している理由を見える化することも強みの抽出につながります。
(4)4つの視点シート
「4つの視点」シートでは、経営者、事業、企業を取りまく環境・関係者、内部管理体制の4つの視点から各項目を記入していきます。各視点の項目は以下の通りです。
➀経営者
・経営理念・ビジョン、経営哲学・考え・方針等
・経営意欲 ※成長志向・現状維持など
・後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミング・関係
②事業
・企業及び事業沿革、ターニングポイントの把握
・強み技術力・販売力等
・弱み、技術力・販売力等
・ITに関する投資、活用の状況1時間当たり付加価値(生産性)向上に向けた取り組み
③企業を取りまく環境・関係者
・市場動向・規模・シェアの把握、競合他社との比較
・顧客リピート率・新規開拓率、主な取引先企業の推移、顧客からのフィードバックの有無
・従業員定着率、勤続年数・平均給与
・取引金融機関数・推移、メインバンクとの関係
④内部管理体制
・組織体制、品質管理・情報管理体制
・事業計画・経営計画の有無、従業員との共有状況、社内会議の実施状況
・研究開発・商品開発の体制、知的財産権の保有・活用状況
・人材育成の取り組み状況、人材育成の仕組み
上記を踏まえて現状の整理を行うとともに、目標設定を行い、課題設定と対応策を記載して完成です。
現状を見える化することで取り組むべき課題が明確になりますので、是非作成してみてください。
ローカルベンチマークシート(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/sheet.html
<略歴>
金子敦彦
飲食店などの店舗ビジネスを中心に年間500回以上の経営支援を行っています。