専門家コラム「テレワーク導入に取り組むことで、業務の見直しをすすめよう」(2021年12月)
みなさんの会社では、テレワークを取り入れていますか?こんな問いかけで前回2020年の1月に専門家コラム「この夏、東京オリンピック・パラリンピックを機にテレワークを導入しよう」を書かせていただきました。その後の新型コロナウィルス感染症の流行で、東京オリンピック・パラリンピックは、2021年に延期され、テレワークといえば、緊急事態宣言下で、オフィスへの出勤を7割減らすという呼びかけのなか、流行拡大防止策として他の選択肢が見当たらないという状態で進むことになりました。
<テレワーク導入状況>
2019年3月時点では、東京都内企業(従業員30人以上)でのテレワークの導入状況は、19.2%でしたが、令和2年12月には、58.8%と急速に拡大しました。(東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査<テレワーク>」)
テレワーク導入状況は高くなってはいますが、従業員規模別で見ると、差が出てきます。
東京都内企業(従業員30人以上)では、58.8%ですが、そのうち300人以上の企業では、83.1%、100人から299人の企業では、64.0%、従業員30人から99人の企業では、49.6%となっています。また、従業員30人以下の企業では、26.3%。そのうち、2人から9人の企業は、21.7%となっています。
テレワークを認めている部門・職種は、「事務職」が最も多く、「全部門・全職種」「営業」「管理職」「専門・技術職」と続き、「サービス」「販売」「研究職」は認められていない企業が多いです。
30人以下の企業では、テレワークを求めている部門・職種は、「全部門・全職種」がもっとも多く、「事務職」が続いている。また、テレワークを導入している企業で、テレワークを利用している従業員の割合は、「100%」という企業が最も多くなっています。
これらのことから、規模が小さくなるにつれ、導入率が低下している。しかし、企業全体としてテレワークが可能な業種の企業は、小規模の企業でもテレワークを導入し、運用しているという事がわかります。
<今後の導入を検討している企業は1割>
まだ、導入していない企業は、今後どう考えているのでしょうか?従業員30人から99人の企業では、「具体的に導入予定がある」「1年以内の導入を検討している」「将来的に導入を検討している」が11.4%ありますが、「導入予定がない」38.1%となっています。30人以下の企業は、「具体的に導入予定がある」「1年以内の導入を検討している」「将来的に導入を検討している」9.5%、「導入予定がない」62.5%となっています。
<テレワーク導入の目的と効果>
テレワークを導入している企業の目的と効果としては、「非常時(新型コロナウィルス、地震等)の事業継続に備えて」と答えた企業は94.6%となっています。次いで、「従業員の通勤時間、勤務中の移動時間の削減」が31.3%、「育児中の従業員への対応」が24.8%、「定型的業務の生産性の向上」が19.0%となっています。
東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」(令和2年12月調査)
そして、東京商工会議所の企業の調査「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査(平成3年9月13日)」の結果によると、テレワークの効果として時間外労働の削減などの働き方改革が進んだ、業務プロセスの見直しができた。定型的業務の生産性が上がったと回答しています。
今後、新型コロナウィルス感染症の影響がなくなったあとの事でも、地震、台風といった自然災害の多い日本では、事業継続性の確保(BCP対策)として、必要と考えられます。テレワークは働き方として定着していくともいわれています。導入予定がないと考えられている企業も再度検討していただきたいです。
<テレワークの3つの形態>
具体的にテレワークは、3つの形態があります。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスオフィス利用があります。在宅勤務は、自宅を就業場所とする勤務形態。モバイルワークは、外出先、移動中やカフェなどを就業場所とし、サテライトオフィスの利用は、所属するオフィス以外の遠隔勤務用の施設を就業場所とする働き方です。
既に、導入している、または導入を検討している企業の導入の形態は、ほとんどが在宅勤務となっています。これは、新型コロナウィルス感染症流行拡大防止策として外出自粛のため在宅が要請され、テレワークの導入が伸びたことを考えると、当然の数字といえます。
従業員は、通勤時間の削減をテレワークのメリットと考えているので、今後は、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務形態も選択肢として検討に加わり増加していくでしょう。
<東京都のテレワーク導入支援が充実>
東京都では、「TOKYOはたらくネット」で働く環境の改善. 働きやすい職場環境づくりの支援の情報提供をしていますが、その中にもテレワークに関する情報が掲載されています。
テレワーク活用に向けた支援 | TOKYOはたらくネット
そこには、セミナー・イベントの情報、業界別テレワークの活用事例や「テレワーク・ワンストップ相談窓口」のような導入の手助けになる手段の案内や、各種の助成金の案内が掲載されています。
国と連携した施設、「東京テレワーク推進センター」では、テレワークの体験として、テレワークの導入進捗状況によって必要な商品やサービスを最先端の機器やツールで体験しながら比較検討ができます。
自社の業界ではテレワークは導入できないと考えている事業者の方も、他社の事例を参考に、導入できる業務がないか調べてみてはいかがでしょう。
国、東京都がテレワークの導入を推進している今だからこそ、充実した支援が行われていますので、是非、チャレンジしてほしいです。
<まずは、相談>
「うちはテレワークなんてできないよ」「やっぱりテレワークだと効率が悪い」と思い込まず、「スマホがあれば、帰社しなくても出先からすぐに報告できるのではないか?」「モバイルワーク」できないかと考えてみましょう。
多くの会社が、全社員対象に制度をすべて整えてから導入するのではなく、トライアルからはじめています。
私たち中小企業診断士は、テレワークの導入を検討するために必要な業務分析を、業務の見直しという観点から、業務改革や生産性向上に結びつけると考えて支援しています。まずは、相談してみてはいかがでしょうか?
◆小暮 美喜(こぐれ みき)
中小企業診断士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 研究会部部長