専門家コラム「採用に成功する面接の進め方のキホン」(2019年12月)
人材確保の難しい時代だからこそ、有力者を逃さないための採用面接に取り組むことが大事になっています。本コラムでは、良い人材の採用に成功する面接の進め方について、主なポイントに触れたいと思います。
採用面接では、自社に応募してきた相手がどんな人なのかを知りたい、自社に合う人材かどうかを見極めたいと採用側は思っています。ところが、面接で「この人はなかなか見どころがあるので是非採用したい」と思って応募者に内定を出したところ、相手のほうから辞退されたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
① 面接の目的は採用すること
採用面接はいったい何のためにやっているのでしょうか。答えは「採用するため」です。
「面接で人材を見極める方法を教えてください」。採用支援の現場でお会いする多くの経営者や採用責任者は、面接で「見極める」ことに意識が集中しています。確かに、採用した人材が期待外れで、すぐに辞めてしまった、育成に多大な労力を費やしている、などの苦い経験をしている企業は少なくありませんので、採用に慎重になる気持ちもよくわかります。しかしながら、見極めたい思いが強すぎると、相手への「情報収集」にばかり目が行き、肝心な「情報提供」が疎かになります。有力な候補者であればあるほどその会社のリアルな情報を求めていますので、ここにも十分な時間を使うことが求められます。
② 話をしやすい環境を作る
誰しも初めて会う方との面談は、多少なりとも緊張するのではないでしょうか。ましてや面接となれば、採用する側もされる側もいつも以上に緊張が高まっているのが普通だと思います。良い面接を行うためには、自然な会話のなかでお互いに情報交換をするための環境づくりが大事になります。
採用側が「自分たちが上で、応募者は下」といった意識を潜在的に持っていると、相手もその意識を面接の最中に敏感に感じとり、上辺の質疑応答に終始することになり、その方の強みや持ち味を十分に引き出す前に面接が終わってしまう可能性があります。本来であれば自社で活躍できたかもしれない人材をみすみす見逃すことになるかもしれません。
環境づくりの具体的な例として、ビジネス場面と同様に、まずは自分から名刺を渡し自己紹介をすることなどはとても有効です。丁寧な対応は応募者に対等な立場であることを行動で示すことになり、応募者は安心して面接に臨むことができます。当たり前のことですが、事前に応募書類を読み込み、相手の名前をしっかり覚えておいて、面接では「〇〇さん」と相手を名前で呼ぶことも忘れないにようにしましょう。
③ 情報収集は「開かれた質問」で
面接ではYES/Noで答えらえる質問をしてしまいがちです。「お客様のクレーム対応は大丈夫でしょうか」「パソコンは使えますか」といった質問に「できません」と答える人はほとんどいません。クレーム対応ができる人を求めるなら、「このようなクレームの場面では、〇〇さんでしたらどのような対応をされますか?」という質問の仕方が有効です。このような質問の仕方を、開かれた質問(オープンクエスチョン)といいます。経験者であれば過去のエピソードとともに具体的な対応策を話してくれるでしょう。「この点をもう少し詳しく教えてください」とさらに相手の回答を掘り下げていくことで、どのレベルで仕事をできる人なのかが分かってきます。
④ 面接はファンづくりと考える
採用側からの十分な情報提供は、応募者を動機づけるための大変重要なアクションです。応募者も短い面接時間のなかで、相手企業の理解を深めたいと思っています。今後の展望や採用人材への期待感などを経営者から熱意をもって聞くことができれば、志望意欲がさらに高まることでしょう。
ここで注意しなければならないことは、欲しいと思う人材の時だけうまくやろうとしても急にはうまくいきません。面接まで進んだ全ての方に自社のファンになってもらえるよう、人によって手抜きをすることなく自社のことをしっかりとPRすることが大事です。面接を常に好印象で終える不断の努力が、本当に欲しい候補者が現れた時に大きな力となります。
⑤ 実態を飾らない
有力な候補者を前にすると自社の魅力を伝えたいがために、実際と異なる情報を伝えてしまうことがあります。実際はそうでないのに「残業時間は少なめ」とか「有給休暇は取りやすい」などの情報を飾って伝えてしまうことは、入社後にギャップが生じるため、やめたほうが無難です。今はそうでなくても、職場の労働環境をよくするために「残業削減の働き方改革に取り組んでいます」などのメッセージは有効です。(本当に取り組んでいることが前提ですが)
以上、採用に成功する面接の進め方の主なポイントについて触れてきました。
採用企業にとっても求職者にとっても、採用面接はご縁の始まりです。良い印象でスタートを切ることができればその後の関係も末永く良いものとなることでしょう。
【略歴】
小犬丸信哉(こいぬまるのぶや)
東京都中小企業診断士協会 中央支部執行委員(会員部副部長)
中小企業採用力向上支援事業 事務局責任者/採用コンサルタント