専門家コラム「中小企業のMA活用」(2018年06月)
大根田 陽介
サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会が開幕しました。この原稿が皆様の目に入るころにはグループリーグも終わり決勝トーナメントに入っている頃かと思います。
開幕から番狂わせ連続のグループリーグ、中でもFIFAランキング1位のドイツ代表が初戦でメキシコに黒星を喫したのは衝撃的でした。
前回ブラジル大会ではSAPとパートナーを組み、ITを駆使した圧倒的な力で優勝したのでここからどう巻き返すかが気になるところです。
サッカーに限らず、国家、企業、大学、スポーツチーム・・・と、あらゆる組織がIT化を進める中、中小企業&個人事業主も当然にさらなるIT化の波にさらされています。
かつてのオンプレミス環境(クライアント&サーバー環境)オンリーから、誰もが使えるクラウドサービスにメインストリームが移ってきており、
より高度なIT技術を中小企業のみならず個人レベルでも気軽に導入できる環境が整ってきつつあります。
それこそ、一昔前まで高嶺の花だったBIツールやAI、急激に注目を浴びてるRPAもクラウドでなら導入も活用もかなりハードルが下がっています。
その中でも今、中小企業に有効な最優先で取り組むべきMA(マーケティング・オートメーション)のお話をしたいと思います。
【重要なのは見込客の確保】
売上重視か利益重視か意見が分かれるところですが絶対的な売上高なくして利益は語れないことから、まず優先すべきは「売上高」でしょう。
私がまず最初に企業の売上高の推移をみるのはそれが「社会との接点」だからです。売上の数字がその企業の社会での必要度と考えてよいでしょう。
その売り上げを確保するために何をどう管理していますか?
多くの企業はSFAを導入して見込み顧客に対してのアプローチをシステム化して(またはしようと)いるかと思います。
見込客、またはそれに準ずる候補のリスト、本当にそれで十分ですか?
毎月、5,000万の売上を確保するために5,000万円分の見込み客ではその数字を確保することは至難の業かと思います。
お客様の社内、担当者の手配ミスなど遅れることはあれど、早まることは稀です。それによって見込みの売り上げ達成は少しずつ後ろにズレていきます。
確実に目標の売り上げを確保するには、見積額の2倍~3倍の見込み客を常にキープできていないと確実な実績にはつながりづらいのではないでしょうか?
そう、大切なのはより多くのリード、それもホットなリードの確保です。
【ホットリードの購買タイミングを見極めるMAツール】
営業スタッフが使うSFAはあくまでホットリードをクロージングするための管理ツールと考えたほうがよいかと考えます。重要なのはその前段階であるホットリードをいかにつかむか?です。
見込み客の管理を営業スタッフに任せているとなかなか思うように結果が出ません。なぜなら、営業スタッフのマンパワーやキャラクターにホットリードの把握を依存してしまうからです。
見込み客が貴社の製品やサービスに本気で興味を持ち、購買行動に出るのは誰にも予想がつきません。見込み客その行動に出る前に営業スタッフがホットリードのリストから外してしまうかもしれませんし、
行動が早すぎて逆に見込み客の購買意欲を削いでしまっているのかもしれません。
ホットリードが本気で貴社製品やサービスに興味を持ち、購買行動に出るのか?そのタイミングを見極めるのがマーケティング・オートメーション・ツール(MAツール)なのです。
【MAツールとは?】
MAツールは貴社のHPがあることが大前提です。見込み客が貴社のHPのどこに興味を持ち、何を重要な情報として回遊したのかを明らかにし、購買タイミングに近いかどうかを見極めるためのツールです。
実際に貴社の製品、サービスを購入した顧客の購入前の貴社HP内での情報収集の行動パターンを掴んでおけば、見込客により効率的にアプローチができるようになるでしょう。
【事前準備】
MAツールはあまたあるITツール、システムと同様に「準備が十分であるほど実力を発揮するツール」です。それこそ無料のものから月額2,3万円コンサルティングサービス込みのより高額なものまでありますが基本は一緒。「準備」です。
今、手許にある見込客の名刺の束や今までアプローチしてきた顧客リスト。これらをMAツールに入力又はインポートします。名刺管理ソフトなどを活用すれば簡単ですし、MAの基本機能として持っているものも多いです。
自社HPに埋め込むタグをMAツールで生成、自社HPに埋め込みます。(WordPress等のCMSを使っていればプラグインで簡単にできます)あとはMAの設定に従ってページ毎のスコア設定やストーリーを作成するだけ。
ストーリーに従ったホワイトペーパーなどの資料、ステージごとのメール文章を準備すればOKです。
【運用】
見込客が貴社HP内でどのようなふるまいをしたか?レポートが届きますのでそれに従ってコールしたり、必要な資料を送ったり、場合によっては直接訪問のアポイントメントをとったりと通常の営業活動をするだけです。
今までと何が違うのかと言えば、MAツール導入前は行き当たりばったり、又は営業スタッフの勘や経験だった営業活動が「顧客の購買活動に沿ったタイミング」で行えるようになることでしょう。
よくよく考えれば、意思決定のスピードは顧客ごとに千差万別です。意思決定までの組織としての仕組みや体質、窓口担当者のパーソナリティまでさまざまな要素が関係します。
それらにの要素も包含しつつ、できるだけ的確なタイミングでビジネスを進められるようにするのがMAツールと言えます。
【ポイント】
ここまで述べてきた中で最重要なポイントはおのずと理解されたかと思います。そう、自社HPの充実。特にページ毎の明確な役割分担が必要不可欠なポイントと言えます。
やみくもにアクセス数や検索順位上昇を追うのではなく、自社の見込客に的確な情報が提供できるHPを作ることがMAで顧客の購買タイミングをつかむ肝です。
【結論】
自社HPのきちんとした作り込みによってMAが十分に活用でき、営業サイクルもうまく回る。
なんだかあたり前すぎてでつまらない結論ですが、ビジネスの王道は結局「凡事徹底」にたどり着きます。
MAツール導入についてもっと個別具体的に検討したい場合、下記を参考にするとよいでしょう。
「マーケティングオートメーション 5分でできるMA導入と成功する8つのプロセス」 熊谷基継 ENY Publishing
「実践 マーケティングオートメーション 会わずに売れるリード育成法」 永井俊輔 インプレス
■大根田 陽介
中小企業診断士
東京都中小企業診断士協会 中央支部 経理部長
株式会社インプレス 営業統括本部 部長代行
おおねだ中小企業診断士事務所(フレームワークスLLC)代表