専門家コラム「会議・プレゼンでも役立つ!ロジカルに整理して伝えるピラミッド構造」(2017年6月)
神宮司 絢佳
1.はじめに
日々の業務の場で、こんな風に思ったことはありませんか?
「会議や報告の場で、相手に分かりやすく伝えたい。」
「商談やプレゼンの場で、相手を説得したい。」
相手にとって伝わりやすく、効果的な説明をするのは難しいと感じている方も多いかもしれません。
そんなとき、情報を整理し、効果的に伝えるために役立つのが「ピラミッド構造」です。
2.ピラミッド構造とは?
「ピラミッド構造」とは、ロジカルに物事を考え、整理するのに使える基本的なツールです。
形としては、頂点に頂点に言いたいメッセージ(主張や結論)があり、その下にそれを支えるメッセージ(事実・根拠)が来るものです。
これらがピラミットのように構造化されて並ぶことから、「ピラミット構造」「ピラミッドストラクチャ」と呼ばれています。
3.ピラミッド構造を使うことのメリット
ピラミッド構造を使うことで、「自らの考えを整理」でき、「相手に分かり易く伝え」「説得力を増す」ことです。
・自分で考えが整理できる
論理構造の流れを見えるようにするので、「どこまで考えられたか」「どこが分かっていないのか」見えるようになります。
またメッセージを明確にするので、「自分が言いたいことはそれでいいのか」を確認できます。
・相手に伝わりやすくなる
上の階層に主張や結論が来るので、「一言で何がいいたいのか」が分かるようになります。
説明の時間がない場合は最上位階層のみを説明すれば良いので、大事なことを伝え漏れることがありません。
人は資料を読む際や話を聞く際、同じ要素を頭の中でグループ化していると言われています。
ピラミッド構造では主張に対する根拠・事実がグループ化されています。そのため、相手が自分の頭でグループ化をする必要がなく、理解することが容易になります。
・説得力を増す、反論に強くなる
上の階層に主張があり下の階層に根拠があるという構造のため、必然的に主張に対して根拠をしっかり持たせることになります。
考えを整理する段階で、その根拠が正しいのか検証するので、反論を事前に予測して対処することも可能です。
4.ピラミッド構造の作り方
それではピラミッド構造とはどのように作るのか、実際に見ていきます。
ピラミッドの作り方は大きく分けて二つあります。
(1) ボトムアップ・アプローチ:事実や根拠から何が結論かを考える場合
(2) トップダウン・アプローチ:既に結論があるものを、根拠や事実で説明する場合
実際の現場では、(1)と(2)の両方を行いながらメッセージを検証していきます。
順番としては、まずは取り組みやすい(1)を行ってメッセージを抽出し、そのピラミッドのチェックも兼ねて(2)を行うことも多いです。
(1)ボトムアップ・アプローチ
ボトムアップ・・アプローチでの考えるステップは下記の流れで進みます。
先に下の階層の要素を洗い出し、上の階層に向けてまとめていきます。
・結論につながりそうな要素(事実・根拠)を沢山上げる
質問に対する答えになる要素をたくさん挙げます。
・要素をグルーピングする
要素の中から、近しいものをグルーピングします。
・要素を一言で表す
グルーピングした要素に対して、「一言で言うと何か」を考えます。
これを、グループの数だけ行います。
・結論を導く
全てのグループから、「今回の結論として言えること」を考えます。
・検証する
この後、下記(2)のトップダウン・アプローチを行います。
そうすることで、今回の結論は本当に事実・根拠に基づいているのかチェックができます。
(2)トップダウン・アプローチ
・結論を明確にする
「今回の結論として言えること」を考えます。
・それを主張するための事実・根拠を考える
その根拠を言うために、大まかにどんな要素があれば言えばいいか考えます。
・事実・根拠の詳細を考える
事実・要素の具体例を挙げます。
・検証する
ここでまた、(1)のボトムアップ・アプローチに戻ります。
そうすることで、この事実・要素から本当に結論が導き出せるかチェックできます。
上記(1)と(2)を繰り返すことで、結論や主張と事実・根拠が本当に結びつくか検証します。
この繰り返しを、メッセージと事実・根拠が結びついていると確信出来るまで行います。
5.ピラミッド構造を作ってみる
これまで見てきた作り方を参考に、実際に作ってみます。
今回は簡単な例として、自社で使うPCを1台購入する想定で考えてみます。
・結論につながりそうな要素(事実・根拠)を沢山上げる
懇意にしている仕入先から2つのPC(A・B)を提案され、下記情報が出てきました。
(a)購入費用はAの方が1万円安い
(b)処理速度はBの方が1.2倍早い
(c)納期はAの方が1週間早い
社内でも使用予定者にヒアリングした結果、下記情報を得られました。
(d)A・BどちらのPCも予算内に収まっている
(e)特殊なソフトを使うので、処理速度は早い方がいい
(f)旧PCを使用できるため、納品は急いでいない
・要素をグルーピングする
出てきた情報を、似たような要素でグループにします。
◎費用に関する情報
(a)購入費用はAの方が1万円安い
(d)A・BどちらのPCも予算内に収まっている
◎品質(処理速度)に関する情報
(b)処理速度はBの方が1.2倍早い
(e)特殊なソフトを使うので、処理速度は早い方がいい
◎納期に関する情報
(c)納期はAの方が1週間早い
(f)旧PCを使用できるため、納品は急いでいない
・要素を一言で表す
グループ化された要素を、一言で表します。
◎費用に関する情報
購入費用はAが安いが、Bも予算内である
◎品質(処理速度)に関する情報
処理速度は早い方が良く、Bが1.2倍早い
◎納期に関する情報
Aが1週間早いが、納期は急いでいない
・結論を導く
全てのグループの要約をもとに、言いたいことを一言でまとめます。
◎結論
費用・納期で有利なAより、処理速度の早いBを買うべきである。
これまで作った内容をピラミッドにすると、下記の通りです。
6.おわりに
ピラミッド構造は、自分で情報を整理して考え、それを誰かに何かを伝えるときに非常に便利です。
慣れるまでは少し時間がかかるかもしれませんが、数をこなしていくと作るためのコツもつかめます。
ぜひ日頃からご自身の考えをまとめるのに活用してください。そして、業務の中でも主張・提案を伝えるお役に立てれば幸いです。
<参考文献>
『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』バーバラ・ミント 著
『はじめてのロジカルシンキング―3つのステップで考える!』渡辺パコ 著
『「ピラミッド構造」で考える技術』中村俊介 著
<プロフィール>
神宮司 絢佳(じんぐうじ あやか)
中小企業診断士
・(一社)東京都中小企業診断士協会 事業開発部 部員
同中央支部 執行委員、ビジネス創造部 部長、青年部 部員
マスターコース「売れプロ」事務局
・年間15社以上の有償ビジネスアドバイザーを実施
業界専門誌への執筆や、商工会・商工会議所のセミナー登壇等を行う