山崎 文

 平成26年の産業競争力強化法施行から2年経ち、創業支援策が浸透してきたのを実感している。各地で創業スクールやセミナーが開催されているほか、創業・第二創業促進補助金をはじめ、創業者が利用できる補助金には多くの応募があったと聞く。また創業者も対象としたビジネスプランコンテストは全国各地で行われており、事業計画(ビジネスプラン)を作成する機会は以前より増えているように思う。

 創業期の事業計画については、初めて取り組む人も多く、作成に苦労している様子が窺える。自らの事業を相手に理解してもらうにはどのような点にポイントを置けば良いのか。あなたが「ビジネスプランコンテスト」に応募するとして、プランを作成する際に忘れがちだけれど大切な事項について、アドバイスを行う側から考えてみたい。

1.コンテストで求められているのは何か
 それぞれのビジネスプランコンテストには、応募条件とともに審査基準の記載がある。一般的には「新規性」や「成長性」「収益性」「実現可能性」等である。これらの「求められている」質問にあなたのプランは答えられているだろうか。
 自分のプランや夢を熱く語りたい気持ちはわかるし、経営者には事業に対する強い思いも必要であろう。しかしここは一歩引いて、まずは冷静に主催者が求めている項目を説明してほしい。一般にビジネスプランコンテストでは所定の様式がある。この様式に余白が目立つのも問題だが、丁寧な記述といっても文字ばかりびっしり何ページも書き連ねるのは決して好印象とは限らない。シンプルに過不足なく、まずは相手の要求に応えてほしい。

2.具体的に語ろう
 創業前のプランにありがちなのだが、抽象的な記述が見受けられる。こんな社会にしたい、こんな事業を行いたいといった思いは伝わるのだが、そのための具体的な実行案が欠けていることがある。まずは今後何を行っていくのか、その背景は何か、概要を具体的に示すことが審査員の理解につながる。わかりやすくするには図を入れることも有効である。特に技術についての説明は、業界人以外でも理解できるレベルでの記載をぜひお勧めしたい。

3.収益性について
 ビジネスモデルとは、事業を行い、利益を生み出す仕組みのこと。事業は継続することに意義があり、継続するためには利益を生むことが必須である。となればビジネスプランコンテストに応募する際も収益性について十分に検討することが重要である。
 あなたの事業において、どの段階で誰からいくらお金をもらうのかを明確に示そう。
その上で売上計画を記載する。控えめすぎる売上や利益は堅実かもしれないが、プランとしての魅力は足りないかもしれない。大きな金額であってもその計算根拠が示してあり、妥当と考えられたら納得がいく。じっくり検討しよう。

4.あると役立つポイント
・タイトルは重要
 審査員は数多くのプランを読んでいるので、その中で注目してもらう工夫が実は重要となる。事業と関係のないタイトルは逆効果だが、読んでみたい、なんだろう?と思わせる面白いタイトルはきっと歓迎される。

・経歴もPR
 なぜ応募者がこのプランを考えたか、そのきっかけを知りたいと審査員は考える。あなたがどんな人か、事業につながる経歴はぜひ記載してほしい。経験や実績等の裏付けがあれば、実現可能性が高いと考えられる。その反対に事業に関係のない経歴はNGとなりやすいのでご注意を。

・事業を広げる
 個人として高い能力やノウハウを持っていて、それを活かしたビジネスプランは多く見受けられる。残念なのは、一人で行う事業になっていて、広がりがないところ。どんな人でも一人だけで事業を行っていくのは難しい。だから誰と組んでどのように事業を展開していくか、審査員は知りたいはずである。それを示せば、プランの魅力も大きくなるだろう。

・経営者の本気度は
 ビジネスプランでは、ぜひあなたの事業に対する本気度を示してほしい。示し方は様々あろうが、例えば自己資金は客観的に本気度を示す重要な項目である。もちろん、書きぶりで事業への思いを示すこともできるが、あまり熱すぎて思いだけが先行するプランはいただけない。情熱と冷静さが上手く同居したビジネスプランを目指してほしい。

・学生のプランでは
 最近は学生のプランといえども、大人顔負けの完成度の高いプランがある。ただ学生のプランには大人にはない発想の面白さや豊かさが期待されているので、その点をあまさず書いてほしい。

 創業のビジネスプランからはいつも熱い思いが伝わってくるものの、もっとわかりやすく具体的に、詳しく聞きたいと思うことが度々である。一人で考えるだけではなく、身近な人にも読んでもらい、言いたいことがしっかり伝わっているか確認してほしい。何度も何度も考えて、プランを練ることが大切なポイントである。アドバイザーや審査員は、いつでもワクワクするような魅力的なプランを見出すことを楽しみにしているのだから。

■山崎 文(やまざき あや)
中小企業診断士
一般社団法人東京都中小企業診断協会 中央支部執行委員