専門家コラム「アイデアが出ないとお悩みの方へ6つのヒント」(2015年1月)
私が新商品開発を支援しているとよくアイデアが出ないというお悩みが聞かれます。それを解消するための6つのヒントを考えてみましょう。
1.アイデアとはそもそも何か?
そもそもアイデアとは何でしょうか?まったく無から有のものを生み出すと思っていないでしょうか?その認識は違います。たとえノーベル賞級のものであったとしても(たとえば最近の例ならば「青色LED」)それは過去の人類の知恵の蓄積や知見の上に成り立っているものです。
つまりアイデアとは、皆さんの頭の中にある知恵や情報や知識を、新たに組み合わせたり統合したり、分解したり、違う分野に応用したりするものだということです。
もうひとつアイデアを出す時に重要なことがあります。
それはアイデアは大量に出さないと良いものは生まれないということです。今申し上げた定義にしたがえば、少なくともかなりの数のものを出して、そこからさらに連想したり、逆から考えてみたりして出さないと良いものや、ユニークなものは生まれないのです。最初から少量で質の良いものだけだそうというのは虫の良い話です。
2.アイデアを出す時は「気軽に出す」「制約条件をつけない」ことを心がける
それではアイデアを出す時に気を付けることは何でしょうか?それはまずはリラックスして気軽に出すことです。 そして現状ではありえない無理なことでも、実現できたらいいなということをどんどん出すことです。
人類は、願望を実現してきました。どれも最初はそれを聞いた人は笑われたり、空想だと批判されたりしたものばかりです。例えば空を飛びたい、宇宙へ行きたい、深海にもぐりたい。どれも今は実現しています。その当時は大いに笑われたでしょうね。でもそれはそう思ったからこそ実現したのです。実現する時間軸は長い場合が多いのですが、いずれ実現するのです。
最初にアイデアを出す時に、自主規制したり、制約条件を付けたりしてしまう人がいます。例えばそんなお金はない、技術はない、この業界ではそれは非常識だ…などです。でもそれを言ってしまうと画期的なアイデアを封殺してしまうことになります。
だから笑われることや批判されることを禁じて、どんどん出しましょう。
3.視野を広くするために様々な体験を好奇心を持って行う
アイデアが出にくい場合は、視野が狭くなっていることがあります。人間は外部の様々な刺激によってひらめくこともあるのです。したがって、色々なものに好奇心を持つことが大事です。意識的に次のことを行うと良いでしょう。直接的に効果が出なかったとしてもじわじわ効きます。海外旅行に行く、美術展に行く、やったことのないスポーツをする、やったことのないゲームをする、普段会わない人と会ってみる…などです。
もう少し直接的に効果を狙うやり方としては、普段使っている通勤手段を変えてみる(時間帯を変えてみる)、話題のスポットへ行ってみる、ヒットしている映画を見てみる、劇を見てみるなどです。
通勤手段を変えると、今まで見えていなかった街の変化や、乗客の変化などがわかったりします。話題のスポットへ行った場合は、なぜそれが流行っているのかを考えるだけでヒントが出たりします。さらに映画や劇は、総合芸術であり、限られた時間に感動させようという意図を持ってシナリオ(脚本)、演技、音楽、背景(セット)で作られているわけですから、それが参考になったりします。
つまり視野を広げるというのは、好奇心を持って幅広く関心を持つということです。
4.テーマを意識して脳にアンテナを立てる
もうひとつのコツは考えるテーマを持つということです。人間というのは寝ている時以外は(寝ている時も?)常時情報にさらされているようなものですから、それを全部意識するのは無理です。
しかしながら関心を持った事項、すなわちアンテナが立った状態になると、今まで見逃していたり、聞き流していた事項が急に目に・耳に入ってきます。それは特定のテーマに関心を持ったからです。私がある企業の支援をすることになると、突然マスコミの情報でも次々と目に飛び込むようになります。それは脳の中で考え続けているからです。したがって特定のテーマを常に考え続けるというのは大事です。
5.商品開発においては、ターゲット顧客を設定する
アイデアを発想するときに、テーマがあったとしてもターゲットの顧客が広すぎて思い浮かばない場合もあります。そこで実在しそうなターゲット顧客を詳しく設定します。年齢、性別、年収、職業などの属性や、どんなライフスタイル、どんな趣味、どんな生活を送っているのかの特性も含めて詳しく設定しましょう。
6.アイデア発想法を活用する
アイデア発想法を活用するのも手です。世の中には300余のアイデア発想法があると言われています。私がお勧めするのは、ブレインライティング法(635法)、焦点法、逆設定法です。これを解説している本もありますのでぜひご覧いただきたいのですが、実際は体験してみないとなかなか本を読んでもうまく行かない場合が多いです。できれば行ったことがある人、インストラクターなどを頼んで実際に体感されると良いでしょう。
いかがでしたか。私が現場で支援している経験をもとにアイデアが出やすくなる方法をお伝えしてみました。もしこれらにご関心がおありでしたら支援もできますのでお知らせください。
■河合 正嗣(かわい まさつぐ)
中小企業診断士 東京都中小企業診断士協会 広報部長 中央支部 副支部長
主に新商品開発や企画立案、中期経営計画立案、提案営業を得意とし、多くの企業で実績を上げている。全国各地の商工会議所、中小企業大学校での講師もつとめる。
著書に『<ヒット!>商品開発バイブル』他多数。