浜田 悟

 先日、ある社長が「最近の新卒は掃除のやり方どころか、ほうきの使い方も知らん。こんなことまで手取り足取り教えねばならんのか…!」とぼやいていました。
 でも、嘆いているばかりでは会社の発展はありません。未来の幹部として「自分で感じ、自分で考え、自分で行動できる社員」に育て上げなければ、会社の将来はありません。苦労して採用した新人に簡単に退職されない職場づくりと運営はどうすれば良いのでしょう。
 平成生まれは、少子化の影響で大事に育てられています。両親や祖父母からちやほらされ、家事の手伝いを強制されることもなく、頭ごなしに「あれこれ」指図されることもなく、また、知らない人とうまくコミュニケーションをとる手段も教わらないまま育っています。学校では事件に巻き込まれないよう、知らない人とは挨拶をしないように育てられています。
 ですから第一に環境になじみにくい。彼らが「働きやすい」職場環境作りが大切です。賃金の多寡以上に、職場の生活環境や周囲のメンバーとの付き合い、先輩や上司の接し方・指示の出し方、お客様対応のさせ方、等々の要素が本人の気持ちに影響します。周囲からの疎外感や職場への不適合感、孤独感、業務に対する無能感や無力感、等を感じると簡単に退職していきます。一人前になるまで、周囲からの気軽な声掛けや業務支援など、見守られ感や、業務終了時の労いなど、孤立させないよう職場の環境作りを行ってください。特に先輩との年齢差が大きいと、気楽に相談したり愚痴を聞いてくれる人がおらず、一人で悩みます。また、上から目線の一方的な指示は、彼らの自尊心を傷つけ意欲を減退させます。
 二つ目は「働きがい」です。働きがいは、仕事の面白さ、達成感、承認感、責任感、成長感を感じることから生れます。これはゴルフと同じです。ゴルフはゴルフそのものが面白い。仕事も同じでその仕事に意義感、重要感を感じると面白くなります。また、ゴルフは自分で「今日は100を切るぞ!」と目標を定め、最終スコアを見て達成感を感じます。また、メンバーとホールごとに打数を確認し合い評価・承認感を得ます。コースではどこでどんなクラブを使うか、どんな打ち方をするかなど全て自分の責任で決定していきます。ホールアウトすれば、トータルスコアからハンデが縮むなど成長感を感じることができます。
 彼らにもゴルフと同じように業務を通じて「自分自身の成長」を感じるような仕組みを構築することです。仕事の業務プロセスと進め方を明確に示し、彼らに今日の業務目標や進め方を自ら決定させ、進捗を適宜フォローして評価のフィードバックを行い、少しずつ自信をつけさせていきます。こうすると、仕事の達成感や責任感、承認感や成長感を感じさせることができます。
 働きやすく、働きがいのある職場を設計していくことで将来の幹部を確実に育てていきましょう。
 
 
 
■浜田 悟
CS研究所
日産自動車株式会社を経て経営コンサルタントとして独立、CS研究所 所長、中小企業診断士。経営コンサルの一環として人材育成から営業やマネジメント指導等を中心に活動している。