グローバル・ウインド インドネシア第2の都市「スラバヤ」の魅力(2014年8月)
Global Wind (グローバル・ウインド)
インドネシア第2の都市「スラバヤ」の魅力
スラバヤと聞いて、「どこだそれ?」と思われた方も多いと思います。インドネシアの都市で「バリ」、「ジャカルタ」をご存知の方は多くても、「スラバヤ」をご存知の方は少ないようです。しかしスラバヤは東ジャワ州の州都であり、300万人が暮らすインドネシア第2の都市でもあります。
近年、日本企業のインドネシア進出が盛んとなっておりますが、そのほとんどはジャカルタ首都特別州および西ジャワ州に集中しており、すでに過熱気味の様相を呈しています。
私は今年の3月から仕事で毎月のようにスラバヤに出張していることもあり、この場を借りてスラバヤの魅力をお伝えしたいと思います。
(1)国家の開発方針
ユドヨノ大統領は、2025年に世界経済のトップ10入りを果たすとの野心的なプログラム「経済開発加速化・拡充マスタープラン(MP3EI)」を2011年に発表しています。このプログラムは、田中角栄元首相が発表した「日本列島改造論」のようなもので、列島を走る6つの回廊に沿って、全土の経済発展を図るという計画となっています。この計画を達成するためには2025年までに約40兆円の投資が必要と予想されています。
スラバヤは6つの回廊のうちのジャワ経済回廊(工業、サービス業)、バリ・ヌサトゥンガラ経済回廊(観光・食品)の経済拠点となっており、幅広い分野での大きな発展が期待されます。実際、近年の東ジャワ州への国内投資、国外投資はともに急増しており、2013年のGDP成長率は7.2%と、インドネシア平均の6.5%を上回る状況となっています。
ジャワ経済回廊
バリ・ヌサトゥンガラ経済回廊
今年7月9日にインドネシア大統領選挙が行われ、庶民派のウィドド氏(愛称ジョコウィ)が勝利しました。 ジョコウィ氏が就任してからも、地方の経済発展を図るという方向性に変化はないでしょう。
(2)労働市場そして消費市場としての魅力
インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続くと期待されています。その中でもスラバヤが位置する東ジャワ州の人口は約3700万人で、なんと西ジャワ州の4300万人に匹敵する人口があるのです。
また、知人のインドネシア人いわく、「東ジャワ州の男性は西ジャワ州の男性に比べ、厳しい仕事(いわゆる3K職場)などでも良く働く」と言っております。私の経験からは、特にそのような実感はないのですが(笑)。
(3)充実したインフラ
市の北部にはインドネシア第2のコンテナ港、タンジュン・ペラク港があり、内外航路の大型貨物船、国内航路の客船が接岸する岸壁やコンテナヤードを備えています。
また、スラバヤ市郊外の工業団地に隣接したグレシック港、パスルアン港が整備されています。
ジャカルタ北部に位置するタンジュンプリオク港のコンテナ取扱量は、既にそのキャパシティを超えており、通関手続きに2週間から4週間を要していますが、タンジュン・ペラク港では1週間以内で済んでいるようです。
そして、市の中心から車で約40分のところに、空の玄関口であるジュアンダ(Juanda)国際空港があります。今年の2月、第2ターミナルが完成しました。日本からガルーダインドネシア航空を利用する方は、このターミナルを利用することになります。実は驚くことにこの第2ターミナル、今年の5月までなんと両替所もATMもなかったのです。それを知らず、現地通貨のインドネシアルピアを持たずに到着してしまった私は、タクシーにも乗れず、「このまま空港で一夜を過ごすのか?」とかなり慌てました(笑)。結局そのときは、個人(?)の両替商に両替してもらい、事なきを得ましたが。もちろん現在はATMが設置されていますので、ご安心を!
スラバヤは、残念ながらジャカルタ以上に公共交通機関が発達しておりません。日本人はドライバー付のレンタカー、またはタクシーを利用することが一般的です。しかしながら、ジャカルタの「ニッチモサッチモいかない渋滞」はほとんどないため、不自由を感じることはありません。また、ジャカルタでは恒例となってしまっている雨期に広域で発生する洪水も、一部の限定的な場所を除けばほとんど発生していません。
スラバヤ港 やっと第2ターミナルに設置されたATM
(4)物価、人件費が安い
2013年における最低賃金は、ジャカルタで220万ルピア(約1万9千円)、スラバヤで174万ルピア(約1万5千円)となっています。実際、床屋、カラオケ、ゴルフなど、ジャカルタより2割から3割安価と感じられます。
(5)住環境が良い
スラバヤ市には、約600名の日本人が在住しており、在スラバヤ日本国領事館、日本人会、日本人学校もあり、ご家族帯同での在留でも安心できます。また、市内には日本食レストラン、居酒屋、日本の食料品を扱うスーパー、日系デパートの入るショッピングモールなどが充実しており、ジャカルタなみに不自由を感じない環境になっています。
なにより、インドネシアは寛容な国であり、親日の国でもあります。もちろん海外ですから、安全に関する注意を払う必要はありますが、過度の心配は不要です。
ショッピングモール 居酒屋
(6)レジャー・観光
インドネシアの観光地として、日本でも有名なバリ島、ジョグジャカルタに近いほか、市の南方は、山岳地帯で数多くの旅行者が訪れるブロモ山があります。ブロモ山では火口から望む幻想的な日の出を楽しむことができます。また、スラバヤ市に最も近いプナングガン(Penanggungan)山の中腹には、この地にヒンドゥー・仏教が栄えたことを示す多くの遺跡がのこされています。
(7)おわりに
インドネシアは、今後も益々の発展が期待できる国です。ジャカルタ周辺の開発は過熱しており、インフラ不足など、さまざまな障害が起こっております。しかしながら、スラバヤは今後の発展の余地がまだまだ残っています。東ジャワ州は工業、サービス業のほか、農業、漁業、畜産業、食品業も盛んな地域です。インドネシアに進出を検討されている皆様、スラバヤを候補地の一つとして検討してみては如何でしょうか?
オランダ統治時代の建築物 英雄記念塔「トゥグ・パラワン」
都築 寛志(つづき ひろし)
2008年中小企業診断士登録
エンジニアリング会社勤務後、独立。建設業、受注生産型製造業の経営支援を行う。