国際部 浅野 融

過去の旅行の記録を見ると、コロナ禍を除き2011年から毎年、ゴルフ合宿と称するバンコク旅行に行っています。きっかけは、タイ通の友人が主催するゴルフ合宿に誘われたことです。タイに長く赴任し、タイ語が話せる方が幹事となり、ゴルフ場の予約から車の手配までアレンジしてくれます。人を集める理由は、車のチャーター代を分担するため。7〜8人集めると、居住性の良いトヨタ・ハイエースをチャーターできます。合宿参加のメンバーは、スクンビット地区(以下スクンビット)のプロムポン駅(BTS高架鉄道の駅)周辺に宿を取ります。
本コラムでは、プロムポン駅周辺でメンバーがよく利用する施設を紹介します。

最近のタイ

タイの近況を2023年以降に公開された情報を基にまとめてみます。

【タイの概要】

image001
図表1:タイの5地域
(出所:タイ国政府観光庁公式HP)

タイは「微笑みの国」と言われます。親日国として知られ、仏教徒が94%の国なので日本人との相性が良いのでしょう。女性も男性も柔和な印象があり、心地よく感じます。日タイ両国は600年の交流があり、2022年日タイ修好135周年となりました。タイの在留邦人は72,308人(2023年10月)となっています(外務省のタイ基礎データ)。

タイは地理的には東南アジアの南西部、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアに面し、国土は日本の1.4倍あります。図表1のタイの地図に色別で示されているように、地理的、文化的に異なる5つの地域に分けることができます。人口は6,609万人(2022年タイ内務省)、そのうち10%程度がバンコクに集中しています。

時差は2時間、日本の正午はタイでは午前10時になります。東京(羽田)-バンコク(スワンナプーム)の飛行時間は約6時間半なので、羽田とバンコク間の深夜便を使うと飛行機で寝て翌日に仕事をすることができます。

29泊30日以内で、観光目的であればビザなしで入国可能ですが、国際規定によりパスポートの残存期間が6ヶ月以上あることが必要です(タイ国政府観光庁HP)。

【気候】

タイの国土は縦に長く、北と南では気候が異なりますが、バンコクは赤道に近く年中暑いです(図表2)。以前、ゴールデンウィークにゴルフをした際、あまりの暑さに途中でやめたくなりました。それ以来、ゴルフ合宿は12月だけにしています。12月は朝晩が涼しくウィンドブレーカーが必要なことがありますが、お昼頃には30度を超える暑さになります。バンコクでのゴルフは、乾期がお薦めです。
image002

図表2:バンコクの気候
(出所:タイ国政府観光庁HP)

【経済】

外務省のタイ王国基礎データによると、製造業がGDPの30%を占め主要産業となっています。農業は就業人口が多いものの、GDPの割合は10%程度です。観光収入が経済の柱ですが、コロナ禍から回復の途中であり、特に中国からの観光客の戻りが鈍いです(図表3)。2023年9月にビザなし渡航を解禁し、中国観光客の回復を目指しています。

image003

図表3:国別観光客数の遷移(Jan 2019を100としたデータ)

(出所:Economic and Monetary Conditions Sep 2023 by Bank of Thailand)

【政治情勢】

政治的には立憲君主制で、議会制民主主義の国です。2014年のクーデター以降、軍事政権下に置かれていましたが、庶民は普通に生活しており旅の障害になることはありませんでした。

【物価・購買力】

昨今の円安により、今年2024年6月6日の為替レートは1バーツ4.25円となっており、円の概算は1バーツの4倍となっています。10年ほど前は3倍で計算していたので、現地の物価の上昇に加え円安の影響で、以前に比べ全てが割高になりました。

2024年1月から1日の最低賃金が地域ごとに330〜370バーツとなり、4倍すると1日1,320〜1,480円(国際通貨研レポート2024.1.10)となります。東京の最低賃金が時給1,113円なので7時間労働とすると、タイの最低賃金は1/5〜1/6と言えます。大卒の初任給を25,000バーツに上げることを検討(国際通貨研レポート2024.1.10)とありますので、2024年4月日本の大卒初任給の平均22.6万円(日経新聞2024.4.23)と比較すると、約半分です。かつて、安い人件費を求めて工場進出をしましたが、その旨みが徐々になくなっていることがわかります。

タイも日本同様、少子高齢化が進んでいます(図表4)。ユーロモニター(2021年)によると、2020年の出生率が1.5で徐々に低下が進むと予想されます。労働人口が減ることにより、さらに人件費が上昇して行くと思われます。また、少子高齢化の課題を解決するためのビジネスチャンスも高まっていくでしょう。

image004

図表4:タイの年齢構成2020年、2040年予測
(出所:ユーロモニター:2021年)

スクンビット(プロムポン駅周辺)に宿を取る

スクンビットはバンコクの中心部に位置し、日本人をはじめとした外国人駐在員やその家族が暮らすエリアです。スクンビット付近の治安は比較的良く、明るい通りなら夜出歩いても問題ありません。ただ、両替所付近ではスリが狙っていますので注意が必要です。私は、プロムポン駅の両替所で換金した後にお財布をリュックに入れ、友人と話をしながら階段を降りていたところスリに遭いました。お金が入ったリュックサックを背中に担ぐことは避けるべきです。

衛生面に関して、特に問題になったことはありません。水は飲めませんが、サラダでお腹を壊した経験はありません。屋台の食べ物を食べたことはありませんが、現地の駐在員経験者は屋台の果物を食べていました。

昨年12月にコロナ禍後初めてゴルフ合宿に行った際、それまで定宿にしていたホテルがコロナ禍で潰れてしまっていました。馴染みのホテルが廃墟になった光景を見て、やるせない気持ちになりました。

図表5はプロムポン駅付近で、我々がよく利用する施設を示しています。以下の文中の①から⑩の番号は、図表5の施設名の前の番号です。

(1) マッサージ

image005
図表5:スクンビット・プロムポン駅付近
(出所:Googleマップ)

ゴルフ合宿では、連日のゴルフに備えてゴルフ後に欠かさずマッサージを受けるので、マッサージはゴルフ合宿の重要な要素となっています。昨年末の旅行では、足の疲れが取れるだけでなく肩こりが解消でき、改めてマッサージの効果を実感しました。⑤ポー・マッサージスクール(旧ワットポー・マッサージスクール)直営サロン39は、ワットポー寺院のタイ古式マッサージ学校の直営店です。学校を卒業し認定されたマッサージ師が施術をしてくれますので、安定して満足度が得られ、価格もリーズナブルだと思います。最新の価格は古式マッサージ2時間680バーツ、チップ100バーツです。ポーが混んでいる時は、すぐ近くの⑥MIEに行きます。

プロムポン駅の南、ソイ24通り沿いにある⑩アジアンハーブ・アソシエーションは、おしゃれなマッサージ店です。価格はポーやMIEの約3倍です。ただし、アロマオイル、ハーバルボールを使ったボディケアやマッサージは、ポーにないリラクセーション効果があります。

(2) 日本語で予約

1週間以上居る人や、年に数回来るリピーターにはクラブタイランドの会員になることをお薦めします。ゴルフ場が最大60%の割引や、観光地や飲食店で割引が受けられます。日本からネットで申し込み、滞在予定のホテルにカードを郵送することができます。①クラブタイランドのオフィスはプロムポン駅の北にあり、日本語でゴルフ場の予約や送迎車の手配ができます。旅行客用のプランは有効期間30日で1,500バーツです。多くのゴルフ場、観光地、飲食店で、カード提示すると割引が得られます。ただし、全てのゴルフ場で割引があるわけではなく、クラブタイランドを通して予約が必要な場合や、クラブタイランドの割引券持参が必要な場合もあり、ゴルフ場によって要件が異なるので事前チェックが必要です。

(3) 日本食

毎日朝昼晩タイ料理を食べ続けると、数日で飽きてしまいます。日本食が食べたくなったら、⑨キッチン新潟や⑧ラーメン一番に行きます。どちらも定食屋か居酒屋のような店で、バラエティーに富んだメニューをお手頃価格で食べられます。

(4) 洗濯

長期滞在型のホテルにはキッチンや洗濯機が設置してありますが、通常のホテルはクリーニングサービスしかないため、経済的ではありません。そんな時は⑦Sukhunvit Express Laundry and Cleaningというクリーニング店があります。18時までに出すと翌日仕上がります。通常サービスの料金は1kg 100バーツ、午前中出せば当日に仕上がるExpressサービスは200バーツです。

(5) 買い物

④エンポリアムは、多くの有名ブランドが入ったデパートで、セレブも買い物に来るそうです。ゴルフ合宿のメンバーが行くことはありませんが、一緒に来る奥様方にとっては憩いの場になるようです。

日本食を購入する際は、クラブタイランドの手前にある②UFMフジというスーパーがあります。

(6) 交通

バンコクでの主な交通手段はBTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)といった鉄道とタクシーです。③プロムポン駅はBTSの駅で、どこへ行くのも便利です。アメリカではレンタカーを借りますが、バンコクで車の運転は無理です。その理由は、車密度が高く車両が擦るように走り、しかも渋滞が多いため心理的負担が大きいことと、標識が読めないことです。

タイゴルフの特徴

タイは世界的に有名なプロゴルファーを輩出する国で、良いゴルフ場がたくさんあります。サイアムカントリークラブは、宮里藍さんが優勝した難しいゴルフ場として、日本でも有名です。タイは日本のプロゴルファーの合宿先として人気があります。バンプラは坂田塾(坂田信弘プロが主宰するゴルフアカデミー)の合宿で有名です。最近では、上田桃子プロや渋野日向子プロのようにシーズンオフにタイ合宿をするプロが増えています。

タイのゴルフ場の特徴は、ウォーターハザードが多いことです。水に囲まれたコースと硬いグリーンが日本人にとってはチャレンジングです。どうしても池に入れることが多く、1年で貯めた古いボールをタイゴルフ合宿で使うようにしています。鳥の鳴き声を聞き日差しを浴びながら、水と緑が美しいコースで、明るいキャディーさんとのやり取りを楽しみながらゴルフをするのがタイゴルフの魅力です(図表6)。

image006

図表6:スワンゴルフ&カントリークラブ(筆者撮影)

タイでゴルフをする際、チェックインした後に「人」との接点がいくつかあり、最初はとまどいます。ロッカーキーの受け取り方やキャディーに対するお作法などの予備知識を図表7にまとめました。図表7は、左上「到着」から始まり逆S字の流れになり、右下「ホテルへ」で終わるようになっています。

image007図表7:ゴルフ場到着から帰るまで(筆者作成)

まとめ

コロナ禍後のタイは、経済回復にまだ時間がかかる様子です。先日、タイ観光庁が日本人観光客の2024年の目標を100万人に設定すると報道されるなど、日本の観光客に期待をしています。親日の国であり、魅力的な観光地が多く、ゴルフ三昧に最適な場所でもあります。幅広い情報を集めたコラムになりましたが、これまでタイに興味のなかった方にも興味を持っていただければ幸甚です。

■浅野 融(あさの とおる)
2022年中小企業診断士登録。法政大学MBA取得。ITコーディネーター
製造業のDX支援を中心に、飲食店の経営支援、補助金申請支援、研修講師、書籍・コラムの執筆などの活動に従事
東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部 部員

——————————————————————————–
記事のコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。情報が古くなっていることもございます。
記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。