国際部 佐々木晋

はじめに

この夏、国内の交通機関や観光地は大変な賑わいを見せましたが、日本人の海外旅行は依然として盛り上がりを欠いているようです。2023年8月24日の日本経済新聞の記事によりますと、夏休みの国内旅行者数の見通しは19年を上回る一方で、海外旅行者数は4割留まり。円安による海外での購買力の低下や、原油高による海外渡航費の高騰がネックになっているようです。

私が最後に海外に行ったのは2019年8月。コロナ前は毎年のように旅行や出張で海外に行っていたので、また早く行きたいと思っています。行き先の候補の1つは約10年前に住んでいたニューヨークです。つい先日知り合いの診断士の方がニューヨークに旅行したと聞き、当時の生活をいろいろ思い出しました。再訪したら必ず行きたいのがジャズクラブです。今回は当時の思い出をもとに、お勧めのジャズクラブを紹介します。

NYでジャズクラブ体験をお勧めする理由

米国に赴任する前からジャズを聞いていたのですが、ライブに通うほど熱心なファンではありませんでした。演奏や書籍等で積極的に研究した経験はありません。ライブに通うようになったきっかけは、ニューヨークの前に赴任した西海岸でのジャズクラブ体験です。迫力ある演奏に圧倒されました。その後ジャズが盛んなニューヨークに赴任し、月に2−3回クラブに通うようになりました。
私がニューヨークでのジャズ体験をお勧めする理由は次の3点です。

(1) 熱い!

狭いスペースで一流のミュージシャンが迫力ある演奏を繰り広げます。特にインプロビゼーション(即興演奏)がゾーンに入ってくると、会場全体が熱気に包まれます。音と音の呼応が激しくなり、ミュージシャンのテンションの上昇と共に聴衆の気持ちが昂っていく。この独特の雰囲気は、言葉でうまく表せません。現実から離れて異空間にトリップしたような感覚を覚えます。

(2) 安い!

あくまでも昨今の異常な円安になる前の為替レート前提ですが、ミュージックフィーは日本より安いです。日本だと10,000円弱するミュージシャンの公演を$50ぐらいで見ることができます。また、ブロードウェイのミュージカルの値段が$100以上することを考えると、リーズナブルな価格で楽しめる本場のエンターテインメントだと思います。

(3) 雰囲気がいい!

ニューヨークを舞台にした映画ではよくジャズが使われます。そのような映画をよく見た影響なのか、ジャズとニューヨークの雰囲気はとても合うと思います。寒い冬に熱いライブを聴いて、ちょっとホカホカ気分で街中を歩くのは最高です。

 

私が通っていたジャズクラブ

私がニューヨーク時代に通っていたジャズクラブを紹介します。コロナ禍で存続を心配していましたが、1か所を除いて現在も営業しているようです。ジャズクラブは敷居が高いと思われる方がいるかもしれませんが、そんなことは全然ありません。各クラブのwebsiteでチケットを購入し、入り口で見せて入るだけ。ショーが始まる1時間ぐらい前に行き、大抵は食事と共に楽しみます。

聴き方を気にする必要はありません。声を出して盛り上げる人もいますが、殆どの人は黙って静かに聞いています。ちなみに私は目を瞑ってベースやドラムの音を追いながら聴くのが好きです。

(1) Blue Note( https://www.bluenotejazz.com/nyc/

グリニッジビレッジのワシントンスクウェアのすぐ側にあるジャズクラブです。日本にも系列店があるのでご存知の方も多いのではないでしょうか。日本からのツアー客も多く、旅の疲れで眠ってらっしゃる中高年団体客をよく見ます(笑)。常に有名なミュージシャンが登場しますのでハズレはありません。

私はここで東京オリンピックの開会式にも登場した上原ひろみさんのライブを観ました。スタンディングオベーションで喝采を浴びる姿はまさにCool Japanだと感じました。

写真1:日本よりカジュアルな雰囲気のBlue Note NYCの店内

写真1:日本よりカジュアルな雰囲気のBlue Note NYCの店内

(2) Birdland Jazz Club( https://www.birdlandjazz.com/

店名のBirdlandはモダンジャズを作り上げたチャーリーパーカーのニックネームである「バード」に由来しています。創業1949年の老舗で歴史的な名演が繰り広げられてきたクラブです。ジャズクラブのなかでは店内が広く、ゆっくり食事をしながら鑑賞できます。マンハッタンの中心地に位置していることもあり、日本からお客さんが来た時にはよく案内しました。

写真2:マンハッタンの中心地にあるBirdland(写真左下)

写真2:マンハッタンの中心地にあるBirdland

(3) Dizzy’s Club ( https://2023.jazz.org/dizzys-club

こちらもロケーションは抜群でセントラルパークの南西に位置するコロンバスサークルに面したタイム・ワーナー・センターの中にあります。歴史あるジャズクラブと違い店内はモダンな雰囲気で、窓側の席からはセントラルパークやマンハッタンのビル群を一望できます。都会的な洗練された雰囲気でジャズを楽しみたい方におすすめです。

写真3:コロンバスサークル

写真3:コロンバスサークル

(4) iridium Jazz Club( https://www.theiridium.com/

ブロードウェイのど真ん中にあるので観光でのアクセスは抜群です。ジャズ以外にもロックやブルースのライブも催されるので、ジャズクラブというよりはライブハウスのような雰囲気です。私はここで山中千尋さんと大西順子さんのライブを見ました。上原ひろみさんと同様に、ジャズの本場で観客を魅了する日本人の姿はとてもカッコいいです。

写真4:iridiumの入り口

写真4:iridiumの入り口

(5) Village Vanguard( https://villagevanguard.com/

グリニッジビレッジにある数々の名盤が録音された老舗のジャズクラブです。創業が1935年ということなので、90年ぐらいの歴史があります。狭い階段を降りた先にあるライブ会場は、紫煙が漂うような昔のジャズクラブの雰囲気が満載です(当然今は禁煙なので紫煙はありません)。

伝統あるクラブなので常に有名なミュージシャンがブッキングされています。決してゆっくり食事ができるような快適なクラブではありませんが、非日常的な雰囲気で一流のジャズを楽しみたい方にはお勧めです。私がニューヨークで最も通ったクラブです。

写真5:Village Vanguardの前に立つ筆者

写真5:Village Vanguardの前に立つ筆

(6) Smoke( https://smokejazz.com/

アッパーウェストの一番北にあるジャズクラブです。これまで紹介したクラブがマンハッタンの中心地にあったのに対し、こちらは観光地の喧騒から離れたよりローカルな雰囲気が漂う地域にあります。狭い店内で迫力ある演奏を楽しめると同時に、評判の高い食事を一緒に味わうことができます。

近年はこのクラブから出て有名になったミュージシャンも多く、私は彼らのファンだったこともあり足繁く通いました。先述した「寒い冬に熱いライブを聴いて、ちょっとホカホカ気分で街中を歩くのは最高」を最も感じるクラブです。

写真6:Smokeの店内

写真6:Smallsの前に立つ筆者

(7) Smalls( https://www.smallslive.com/

グリニッジビレッジにあるその名の通り非常に小さなジャズクラブです。座席数は30人分ぐらいでしょうか。小さいだけに演奏の迫力は随一です。これでもか!!というぐらいグイグイ音が迫ってきます。

出演者は著名なミュージシャンというよりは新進気鋭な人が多いようです。Live At SmallsというLiveアルバムのシリーズがあるのですが、実体験をした後に聴くと迫力ある臨場感の再現を何度も楽しむことができます。

写真7:Smallsの前に立つ筆者

写真7:Smokeの店内

おわりに

2023年9月29日の日本経済新聞に「「ジャズ大国」日本の100年 独自文化に海外も注目」という記事が掲載されていました。ジャズ喫茶が流行ったのは1960-70年代ですが、その後も独自文化を発展し続け、現在も根強い人気があるようです。世界一のジャズプレーヤーを目指す日本人サックス奏者の奮闘を描く漫画「Blue Giant」の映画化も話題になりました。

私は帰国後も頻繁にジャズライブを聴きに行っており、日本のジャズミュージシャンも大好きです。是非日本のジャズ文化の盛り上げに加わっていただき、本場のニューヨークで更に楽しんで頂けたらと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

■佐々木 晋(ささき しん)

光学機器メーカーに勤める企業内診断士。現在は米国企業とのB2Bアライアンスに従事。トロント、サンノゼ、ニューヨークでの駐在経験あり。2015年登録。