国際部 入江 麻美

1. はじめに
 世界各国では、入国時のPCR検査が廃止され、徐々に海外渡航が増えてきました。日本も9月から、ワクチンの3回接種者は入国時のPCR検査が免除されています。私の所属する企業でも段々と海外出張が増えており、私自身もこの夏に1か月間アメリカ/テキサス州へ出張をして参りました。勤務地はテキサス州でも西部に位置するミッドランドです。ミッドランドは車がないと生きていけない典型的なアメリカの田舎町で、Uberもほとんど走っていないため、生活には車が必須です。ということで、国際免許を取得して、広大なアメリカの土地を走り回ってきました。今回はそのお話をさせて頂きたいと思います。

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テキサス州の位置
出所:www.globalsupportinitiative.com

2. 日本で国際免許を発行
 短期滞在において海外で車を運転するには、渡航前に日本で国際運転免許証を発行する必要があります。アメリカのテキサス州に関しては、法律上は国際運転免許証がなくても、日本の運転免許証とパスポートで合法的に運転できますが、レンタカー等を利用する場合は、事前に国際運転免許証を取得しておくと安心です。国際運転免許証は、日本の運転免許証を持っていれば、取得することが出来ます。日本で発行された免許証を使用できる国はジュネーブ条約の加盟国のみですので、海外で運転される際には対象となるか確認しておく必要があります。
 国際免許発行に必要な書類は国によって異なりますが、アメリカの場合は①日本の運転免許証、②パスポート、③証明写真、が揃っていれば簡単に発行することが出来ます。申請場所も①運転免許試験場、②運転免許更新センター、③指定警察署、と選択肢が多いので、近場で発行することが可能です。私は、会社から午前半休を取得して国際免許証を発行しに行きました。神田運転免許更新センターで30分もかからず取得できたので、拍子抜けしてしまいました。

神田運転免許センター
神田運転免許センター
国際運転免許証
国際運転免許証

3. テキサス州ミッドランドについて
 ミッドランドは、アメリカのテキサス州西部に位置する都市です。日本の様な湿気はあまり感じないものの、夏場は連日40℃近くまで気温が上昇します。朝晩は25℃前後と比較的涼しくなりますが、日が沈むのが遅いので、一番気温が暑くなる時間は夕方16時頃になります。ミッドランドには、アメリカの生産する石油のほぼ半分を産出しているパーミアン盆地があり、石油・ガス開発と密接にかかわっている都市です。そのため、住民や訪れる人はみんな石油・ガス開発に関わっていると言っても過言ではありません。車を走らせていても、石油開発を行っている風景を日常的に目にすることが出来ます。そんな都市ですので、道はまっすぐでひたすら広く、車両はかなりの速度で走行しており、周りも大型トラックばかりです。

広大なミッドランドの道路
広大なミッドランドの道路
石油開発が生活に根付いている
石油開発が生活に根付いている

4. 空港でレンタカーを借りる
 到着ロビーに着くとすぐにレンタカーの受付が並んでいます。私はHertzにて事前にネット予約していたこともあり、スムーズにカギを受け取ることが出来ました。

ミッドランド空港のレンタカー窓口
ミッドランド空港のレンタカー窓口
Hertz受付
Hertz受付

 私は一番安い車種を選択していたのですが、どういった車両があたるのかは駐車場に行ってみないとわかりません。鍵に記載のある場所まで向かうのですが、空港も駐車場も広すぎるため、目的地までがなかなか遠く、灼熱の中1か月分の荷物が入ったスーツケースを引っ張っていくのは大変でした。そして、いざアメリカ生活を共にする車両とのご対面です。なんと・・KIAの年代物の車でした。昨今、エンジンをかけるのに鍵穴に鍵を差す車もあるのだなあ、と懐かしく感じました。

鍵に車両の置かれている番号が記載されている
鍵に車両の置かれている番号が記載されている
レンタカーの駐車場
レンタカーの駐車場

5. ミッドランドの街を走り抜ける
 それでは、実際にアメリカを運転してみて気づいたことをご紹介します。
 アメリカでの運転経験がある方であればご存じと思いますが、アメリカはとにかく日差しが強いので、サングラスなしでは走行が出来ません。今日本でサングラスを着けようものなら、マスクとサングラスで不審者みたいになってしまいますが、アメリカでは既にマスクを着けている人がほとんどいないので、何の問題もありません。ちなみに、国際線の空港まではマスクを着けている人もちらほらいましたが、国内線からはまったくおらず、街中ではマスクを着けている人はほぼ見かけませんでした。通勤時は、太陽を背にした方向への運転だったので、大変な思いはあまりしませんでしたが、太陽に向かって運転するときには、サングラスをしていても正面が見えなくなるほど眩しくなりました。
 また、とにかく道がまっすぐで広いために、速度がかなり早いです。高速では、周りの車に合わせようとスピードを出していると、80mph(時速130km)位まで簡単に上がってしまうので、注意が必要です。一度、小石がフロントガラスにぶつかることがあったのですが、ヒビがはいるのではないかと思うほど大きな音がしました。会社までの道のりは片道30分ほどでしたが、その距離は20mile(32km)あり、一週間も経つ頃には、相棒のKIAの車両も虫や砂だらけになってしまいました。アメリカに洗車場が多いのも納得です。

フロントが虫だらけになったKIAの車両
フロントが虫だらけになったKIAの車両

 アメリカで運転する際には右車線となるので、逆走しないように注意が必要な点はいうまでもありませんが、ウインカーとワイパーの指示器も左右逆となるため、ここで間違えてしまうのは海外で運転をする日本人のあるあるなのではないでしょうか。わたしもアメリカで運転を始めた当初は道を曲がるたびに、ワイパーを出してしまっていました。なお、アメリカではウインカーを出さずに車線変更や右折・左折をする車がとても多く、それもあって交通事故が頻発しています。

左ハンドルのため、ウインカー指示も左右逆
左ハンドルのため、ウインカー指示も左右逆

 日本とは違うルールもあります。州や地域によっても異なりますが、アメリカ国内のルールとしては、一時停止をして確認をすれば赤信号でも右折をしてよいことになっています。赤信号だからと止まっていると後ろからクラクションを鳴らされてしまいます。ミッドランド特有のルールとしては、高速道路に並行して走る対面通行の道路があり、高速道路から降りる車が優先されるといったものがあります。この対面通行の道路というのがアメリカにしては狭く、二車線の一方通行道路との差がつかないため、慣れるまではかなり怖い思いをしました。

左が高速道路で、右が並行して走る対面通行の道路
左が高速道路で、右が並行して走る対面通行の道路

 前述の通り、アメリカでは交通事故がかなり多いです。私も毎日のように乗用車が衝突している事故を目にしました。出社時に一度、大型トラックが横転してしまい、道が通行止めとなってしまったため、いつもの通勤路が使えず、泣きそうになりながら高速道路を使って迂回したこともありました。そんな環境ですので、アメリカの自動車保険料はかなり高額です。補償内容や州によっても違いはありますが、年間平均が$1,500程と言われています。ガソリン価格の高騰もあって、アメリカにおける車生活は金銭的にかなりシビアな状況になってきているようです。

2022年/州別の平均自動車保険料ランキング 出所:Insurance.com
2022年/州別の平均自動車保険料ランキング
出所:Insurance.com

6. おわりに
 海外で車を運転するには、国や州の独自のルールがあるので、日本で日常的に運転されている方でも、事前に情報を集めておかないと大変危険です。とはいえ、今はGoogle Mapsで道の予習ができますし出来たり、精度の高いカーナビを同期することが出来るので、運転に対するハードルは下がっているのではないかと思います。アメリカの広大な道路を走り抜ける爽快感は日本では味わえない経験だと思います。これから海外渡航が増える中で、運転の機会があるようであれば、旅行・ビジネス問わず是非トライしてみてください。

◆入江 麻美(いりえ あさみ)
2022年6月に中小企業診断士登録し、東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部へ加入。現在は総合商社に勤務しており、営業の部署に所属している。