Global Wind (グローバル・ウインド)

国際部 松尾 啓子

1.はじめに
 私は、2022年5月に中小企業診断士登録をしました。前職では出版社に勤務し、主に管理部門を経験しました。業務上では、海外に関わることは無かったのですが、海外旅行が趣味で、診断士試験を受験する以前は、毎年のように海外旅行に行っていました。今年の5月から独立診断士として活動するに当たり「今後、中小企業の海外展開の支援ができるようになりたい」「少しでも海外と繋がりを持ちたい」。そのような想いから、国際部に入部しました。
 私の趣味には、海外旅行以外に東京マラソン当選がきっかけで始めたランニングがあります。ランニングを始めてからは、二つの趣味が融合し、海外マラソンに参加する機会が増えました。今回は、特にカルチャーショックを受けた「ヘルシンキシティマラソン」について書かせて頂きます。

2.なぜヘルシンキシティマラソンに参加したのか?
 私がヘルシンキシティマラソンに参加したのは、2013年の8月でした。「夏休みに海外に行きたい」「折角だからマラソン大会に参加したい」。そのように考え、インターネットで真夏に行われる海外マラソンを検索しました。その結果、その時期に参加できる大会は二つしかありませんでした。「ヘルシンキシティマラソン」と「ニューカレドニアマラソン」です。最終的に「一度行ってみたい国だった」という理由で、フィンランドのマラソンツアーへの参加を決めました。
 ところで「フィンランド」と聞いて皆さんは、何を思い浮かべますか?マラソンツアー参加前の私が思い浮かべたのは「ムーミン」「サンタクロース」「サウナ」「オーロラ」「かもめ食堂」でした。参加後は、新たに「コーヒー」「マリメッコ」が加わりました。

3.フィンランド共和国(Republic of Finland)基礎データ
 フィンランドは北欧の国で、北ヨーロッパのバルト海に面しています。日本からのアクセスは、飛行機の直行便で10時間20分くらいです。日本との時差は7時間。フィンランドの方が日本より7時間遅くなります(サマータイムの時期は6時間差)。

写真図表1(図1) フィンランド地図

図1:フィンランド地図

【面積】33.8万平方キロメートル
(日本よりやや小さい)
【人口】約551万人(2018年12月末時点)
【首都】ヘルシンキ(約64万人,2018年1月時点)
【言語】フィンランド語、スウェーデン語(全人口
の約5.2%,2018年統計)
【通貨】ユーロ

4.ヘルシンキシティマラソンの概要
 大会ガイドによると「ヘルシンキシティマラソンは、首都ヘルシンキの美しい街並みを走るマラソン大会です。コースの半分は美しい景色のバルト海沿岸を走り、残りもまた美しい公園や市街地を走ります。オリンピックスタジアム(下記のヘルシンキシティマラソンルートマップ丸印の箇所)をスタート・ゴールとする折り返しの周回コースです」とあります。私が参加した「第33回ヘルシンキシティマラソン」は、2013年8月に開催されました。(2022年は5月開催)。当時の開催概要は、下記の通りです。

【Helsinki City Marathon】
スタート:2013年8月17日(土) 15:00
オリンピックスタジアム
制限時間:6時間 (フィニッシュ 21:00)
記念品 :参加記念Tシャツ、完走メダル、完走証
場 所 :ヘルシンキ Olympic Stadium next to the statue of Paavo Nurmi

写真図表1(図2) ヘルシンキシティマラソンルートマップ図2:ヘルシンキシティマラソンルートマップ

5.ヘルシンキシティマラソン前日
 大会の前日金曜日にマラソンの受付を行いました。受付会場では、ゼッケン、タイム測定のチップ(シューズに装着)、参加Tシャツを受け取りました。大会は、土曜日の15時スタートのため、地元の方の中には、午前中に仕事をしてから参加する猛者もいるそうです。
 この大会では、asicsがスポンサーでした。そのため、参加受付会場やスタート時のアーチなど、至るところでasicsのロゴを目にしました。私は、なぜか海外で日本のブランドを見つけると嬉しくなります。

写真図表3(写真1) ヘルシンキシティマラソン受付①

写真1:受付①

写真図表4(写真2) ヘルシンキシティマラソン受付②

写真2:受付②

写真図表5(写真3)ヘルシンキシティマラソンボード①

写真3:会場内のボード①

写真図表6(写真4)ヘルシンキシティマラソンボード②

写真4:会場内のボード②

 会場には大会の参加者名が記載されているボードがありました。ボードを見ていて「日本人の参加者が意外と多い」ことに気がつきました。ツアーガイドさんによると「大会参加者が6,000名くらいのうち、日本人の参加者は60数名いる」そうです。「参加する外国人では、第1位のイギリス人に次ぐ、第2位が日本人」とのことでした。

6.ヘルシンキシティマラソン当日
 マラソンの当日は、あいにくの雨でした。スタートまでずっと雨の中、立ち続けていなければなりませんでした。マラソンはメンタルなスポーツなので、スタート時に「いかにテンションを上げるか」は重要な要素です。スタートを待っている間は、雨でテンションが下がったのですが、スタートしてからアーチにasicsのロゴが見えた途端、嬉しくなりました。お陰で一気にテンションが上がり、いつものペースで走り出すことができました。

写真図表7(写真5)スタート地点

写真5:スタート地点

写真図表8(写真6)マラソンコース風景①

写真6:コース風景①

写真図表9(写真7)マラソンコース風景②

写真7:コース風景②

写真図表10(写真8)マラソンコース風景③

写真8:コース風景③

 ヘルシンキシティマラソンのコースは、ムーミンが出てきそうな湖畔など、のどかな風景の中を走る一方で、銀座のような都心部も走るコースでした。走っていて印象的だったのは、コース途中の道路で、工事中の場所がバリケードも無くそのままにしてあったことです。日本の大会では、そのようなコースを走ったことはありませんでした。また、都心部は石畳が多いため脚に負担がかかり、後から膝にきて辛かったです。
 途中の沿道では、現地の方が私を見て「ヤーパン」「ウバ」と叫んでいました。何と言っているのか分かりませんでしたが、多分応援してくれたのだと思います。
 マラソンの途中で雨も上がり、ネットタイム4:32:05で無事にゴールしました。15時スタートなので、ゴール時間は19時30分を過ぎていましたが、白夜のため明るかったです。後から聞いた話では「この時期のヘルシンキで夜が暗くなるのは、22時過ぎ」とのことでした。

写真図表11(写真9ゴール後のドリンク

写真9:ゴール後のドリンク

写真図表12(写真10)参加賞Tシャツ

写真10:参加賞Tシャツ

 ゴール後のエイドには、ホットコーヒーがありました!一般的なマラソン大会では、ゴール後のエイドは、ミネラルウォーターかスポーツドリンクです。ゴール後にホットコーヒーがあったのは、初めてでした。因みに、なぜホットコーヒーのエイドがあったかと言うと・・・。実はあまり知られていないのですが、フィンランドは世界有数のコーヒー消費国であることが理由のようです。私が参加した2013年は、フィンランドは年間コーヒー消費量ランキングで世界第2位でした。2019年のデータでは、第1位ルクセンブルグ(2,507 杯)、第2位ラオス(1,981杯)に次いで、フィンランドは第3位(1,179杯)です。第38位(344杯)の日本と比較すると、いかに多いかが分かります。フィンランドは、寒冷な気候で冬場の外出は非常に困難で、帰宅した際に素早く体を温めるためにコーヒーが飲まれることが多くなっているようです。
 大会の参加賞Tシャツは、asics製でした。私はWOMENのMサイズを選びましたが、ぴったりでした。マラソン大会の参加賞Tシャツは、ユニセックスサイズが多いためサイズが合わない(大きすぎる)ことが多々あります。この大会は、男女別サイズで提供されていました。
 「土曜日の15時スタート」「工事中の道路を走る」「ゴール後のエイドにコーヒーがある」など、日本のマラソン大会ではあり得ないことの続出にカルチャーショックを受けました。 しかし、途中ムーミンが出てきそうな湖畔がある一方、銀座のような都心部を走るというバラエティに富んだコースで走っていて非常に楽しかったです。

7.ヘルシンキシティマラソン翌日
 マラソンの翌日、私はツアーの皆さんとお別れし、一足先に帰国の途に就きました。ツアーの皆さんはこの後、バルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)を観光するため、ヘルシンキから2時間のフェリーで、エストニアのタリンへ向かいました。因みに、地元の方は観光目的ではなく、日常的にタリンに行くそうです。ツアーガイドさんによると「フィンランドは物価が高いので、地元の方は、日用品の買い出しのためスーツケースを持参し、フェリーでタリンへ行く」とのことでした。

写真図表13(図3)バルト三国・地図

図3:バルト三国地図

写真図表14(写真11)マリメッコ

写真11: マリメッコ

 今回のツアーでは、行きも帰りもFINNAIRを利用しました。帰りの飛行機で、改めて機内を見回してみると、ペーパーナプキンや紙コップがマリメッコのデザインであることに気がつきました。2012年から、FINNAIRはマリメッコとコラボレーションし、マリメッコのデザインを採用したアイテムを導入しています。そのため機内は、マリメッコで統一されていました。デザイン大国のフィンランドらしいセンスの良さを感じました。

8.最後に
 私は「仕事や旅行と異なる視点で、その国を知ることができる」のが、海外マラソンに参加する面白さだと感じています。海外には、給ワインで有名なフランスの「メドックマラソン」や、優勝者には馬一頭が贈られる「モンゴル国際草原マラソン」など、いつか参加したいと思うようなユニークなマラソン大会が多数あります。
「いつか、中小企業診断士として仕事で海外に行き、その国のマラソン大会に参加する」。それが、これからの私の目標の一つです。参加することで、仕事や旅行とは違う気づきがあり、その経験が仕事にも活きてくる気がします。

■松尾 啓子(まつお けいこ)
2022年5月に中小企業診断士登録後、独立診断士として活動を始める。前職では、出版社に20年近く勤務。役員秘書、取次・書店営業、経営企画などの業務に携わる。取得資格は実用秘書検定1級、ITコーディネータ、経営管理修士(MBA)など。