Global Wind (グローバル・ウインド)


中央支部・国際部 竹島裕明

1.はじめに
 意外にもこれまでグローバルウインドで取り上げられたことがなかった「日本人におすすめの移住先ランキング」1位も獲得していたマレーシアについて紹介させて頂きます。
 私が過去3年半ほど駐在し、将来は永住することを夢見ていたクアラルンプールと大好きなバクテーの話が中心となっていますが、最後まで読んで頂けたら幸いです。

2.基本情報
 マレー半島南部(半島マレーシア)とボルネオ島の一部(東マレーシア)からなる連邦立憲君主制国家で首都はクアラルンプール。イギリス連邦加盟国でASEANの一員です。
 人口約3,267万人(2021年マレーシア統計局)で、国土面積は日本の約0.9倍。
 公用語はマレー語で、民族構成がマレー系(69.6%)、華人系(22.6%)、インド系(6.8%)(2020年マレーシア統計局)と、多民族国家であるため英語が準公用語となっています。
 イスラム教が国教で、華人系は仏教、キリスト教、インド系はヒンドゥー教徒が多いです。
2021年10月1日時点の在留邦人は2万7,256人(外務省海外在留邦人数調査統計令和4年版)。東南アジアではタイ(8万2,574人)、シンガポール(3万6,200人) についで3番目に多い国です。

図1図1マレーシア地図(出所:外務省HP)
図2図2マレーシア国旗(出所:Wikipedia) 国旗の左上の図柄はイスラム教の象徴である月と星を、赤と白の線はマレーシアにある13の州と、首都のクアラルンプールを含めた連邦直轄地域を表している。

3.マレーシアの魅力
 どこの国でもそうですが、魅力を挙げるときりが無いので、今回は過去(1997年~2000年)に駐在した経験と最近(2016年~2019年)の5回程度の短期訪問で感じたことを基に、紹介させて頂きます。

1)温暖な気候
 地震や台風などの自然災害が非常に少なく、常夏なのですが日本の夏のような蒸し暑さはなく、朝晩やスコールの後などは涼しいと感じることもあり、一年を通してTシャツ短パンで快適に過ごせます。
 季節は雨季と乾季だけで、気候の差はあまり感じず、雨季でもスコールの時間や回数が乾季と比べて少し多いと感じるぐらいです。

図3図3 クアラルンプールの年間平均最高・最低気温(出典:気象庁HP)

2)治安の良さ
 マレーシアは他の多くの東南アジアの国と同じく比較的治安は良いです。
 空き巣やスリが一番被害に遭いやすい犯罪と言われているようですが、私が駐在していた間は日常生活で不安を感じたことはありませんでした。
 一度だけ夜コンドミニアムで在宅中に外部から玄関ドアを無理にこじ開けようとされ、ドアスコープが無かったために状況が分からず恐怖を感じたことはありましたが、原因は不動産会社が内見する部屋の階数を間違えて鍵が開かずに苦労していただけで、被害にあったわけではありません。
 その時は徐々にドアの扱いが激しくなり、止まる気配がなかったため覚悟を決めてこちらからドアを開けたのですが、緊張のあまり私がノックしてからドアを開けるという不思議な行動をとってしまいました。
 平常心とドアスコープの大切さを再認識させられた経験でした。

3)多様な文化
 マレー系、華人系、インド系それぞれの民族が宗教や文化、伝統を守りながらお互いに尊重し合って暮らしています。
 政府も国教であるイスラム教関連だけでなく、クリスマス、チャイニーズニューイヤー、ディーパバリ(ヒンドゥー教の新年)などを国の祝日にしています。
 普通に生活しているだけでも様々な文化に触れる機会が多く、多様性が実感できる貴重な国だと思います。

4)生活物価
 生活物価は日本の3割~5割程度のものが多く、食事を含め現地スタイルで生活をしていれば生活費も同程度に収まると思います。
 日本食レストランでは日本と同程度の価格で食事ができ、日系のコンビニやスーパーも多く出店しているので、少し割高ですが日本の食料品は容易に手に入ります。

5)美味しい料理
 タイのトム・ヤム・クンやフィリピンのシニガン等、海外を訪問した際は現地ならではの味を楽しみにしている方も多いと思いますが、”Food Lovers Paradise”と呼ばれている(私が勝手に呼んでいるだけかもしれませんが)マレーシアにも多民族国家ならではの美味しい料理がたくさんあります。
 街中にマレー料理、中華料理、インド料理の屋台がたくさんあり、それぞれお手頃価格で頂けるので、普段は感謝の気持ちを忘れて当たり前に幸せな毎日を過ごせます。
中でも私がマレーシアに行った時に必ず食べる料理を2つ紹介させて頂きます。
1) ナシレマ(伝統的なマレー料理)
 ココナッツミルクで炊いたご飯に油で揚げたにぼし、ピーナッツ、ゆで玉子、きゅうり、唐揚げなどが乗った伝統的な料理です。
 下の写真はウィキペディアのものですが、よく朝に会社の前で売っている写真1のようなナシレマ弁当を買い、朝から幸せな満腹感に浸っていました。
 今でもマレーシアに行った時は必ず朝にホテル近くのお店に行って食べています。

写真1写真1鶏肉付きナシレマ弁当 写真2写真2鶏肉付きナシレマ

(出所:Wikipedia)

2) バクテー(肉骨茶)(スープ料理)
 ぶつ切りの豚あばら肉や内臓肉を、漢方薬に用いる生薬と中国醤油で煮込んだ料理で、一般的には土鍋で供され、白米にスープを掛けながら食べる(ウィキペディアより)薬膳料理と紹介されることもある人気料理です。
 クアラルンプール近郊の港町クランが発祥の地として知られ、伝統が受け継がれているスープは黒っぽい醤油色で濃厚な風味ですが、味は見た目ほどしつこくありません。
 一方でシンガポール発祥説もあり、チキンライスと同様、マレーシアとシンガポールの間で発祥を巡って論争になっているそうです。
 シンガポールのバクテーはマレーシアと違い、透明に近い色で塩味のスープに胡椒を利かせたあっさり味です。肉の部位はスペアリブが中心のようです。

写真3写真3 マレーシアタイプ 写真4写真4 シンガポールタイプ

 今回は中心街のブキビンタン駅から歩いて行けるパクテーのお店、「新峰肉骨茶(サンフォンバクテー)」と、「宝香肉骨茶(パオシャンバクテー)」の2軒を紹介させて頂きます。どちらのお店もマレーシアタイプはもちろんシンガポールタイプのバクテーも食べられます。

①新峰肉骨茶(サンフォンバクテー)
創業1971年で50年以上現地の人や観光客に愛されてきた、マレーシアに来てバクテーを食べたと聞くとまずこのお店を思い浮かべる人気店です。

写真5写真5 料理

写真の左下にある塩と小麦粉で作られた油条(ヨウティヤオ)と呼ばれる揚げパンはスープに浸して食べます。

写真6写真6 新峰肉骨茶の店舗

住所:35a Jalan Medan Imbi, 55100, Kuala Lumpur, Malaysia
HP:https://www.sunfongbkt.com/
 初めて食べに行った日がすごく暑くて思ったより駅から遠いと感じたので、2回目からはホテルからGrabタクシーを利用するようになりました。

②宝香肉骨茶(パオシャンバクテー)
 バクテー発祥の地クランの老舗がPavilionというショッピングモールの6階に出している支店です。ローカル価格より少し高めです。
 部位毎の注文で小皿に分けられているので、多くの種類を食べることができます。

写真7写真7 料理

住所:Lot 4.01.00, level 4 connections, Pavilion shopping mall, 168, Jalan
Bukit Bintang, Kuala Lumpur, Malaysia
HP:https://www.paoxiangbkt.com/

図4図4 地図(Googleマップ)

 美味しさとは関係ないのですが、これまでの経験では新しく知り合いになった華人系の人にタイミングを見て「No Bak Kut Teh, No Life」と言ってバクテー好きをアピールすると、少しだけ笑ってもらえて少しだけ距離が縮まることが多かったです。

4.最後に
 マレーシアは「日本人におすすめの移住先ランキング」において2006年以降14年連続1位だったらしいですが、私もずっと「将来はマレーシアに移住」を夢見ていました。
 2021年10月の法改正によって移住は難しくなりましたが、マレーシアは私にとってパワースポットなので今後も旅行での訪問は続けたいと思っています。
 今回の記事は個人的な思いが強くバクテーを強調していますが、他にも世界遺産や手付かずの自然などの観光地やリゾート地もたくさんあり、皆さんのご期待に応えてくれる素敵な場所が多い国だと思います。機会があれば是非訪問してみて下さい。

以上

【自己紹介】
竹島 裕明(たけしま ひろあき)
1970年生まれ。大阪府出身。
大学卒業後通信建設会社に勤務し、海外部門で主に営業やプロジェクト管理を担当。フィリピン、マレーシア、ミャンマーで約10年間の駐在経験有り。
2016年10月中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部。