グローバルウインド「国際社中:国際派診断士への扉~中小企業診断士として知っておきたい貿易の世界~」 を受講して(2021年10月)
国際部 横山 茂生
本年9/22 ZOOM開催した国際派診断士リーダー養成講座(以下、「国際社中」と言います。)で国際部員の木村篤さんに解説頂いた標記テーマの要旨をご紹介します。
中央支部国際部では3年目になるイベントの一つとして国際社中を実施しており、本年度第2回講座として開催。9月シルバーウイーク最中の日程にも拘らず20名の参加がありました。スピーカーの木村さんは、大手小売業に入社し、海外店舗の立上げ・運営のため中東(ドバイ)に赴任されました。その後2年間のバックパッカーでの世界一周の旅を経て、自動車部品の専門商社に入社し、海外販売営業、貿易実務に従事され、現在は独立診断士として活動されています。(中央支部国際部、WBS所属、2021年5月中小企業診断士登録)
今回の講座はクライアント企業から海外展開を始めたいと相談されたときに困らないために、知っておきたい知識を診断士目線から解説頂いた点がその特徴です。
【輸出の現状】
日本の輸出額は世界第4位6,830億ドルです。規模では日本は輸出大国とも映りますが、一方、一人当たりは世界44位、対GDP比率では117位となります。菅義偉首相のブレーンで政府成長戦略会議メンバーの元金融アナリスト、デイビッド・アトキンソン氏の指摘の通り日本の輸出は成熟しているのではなく、むしろ伸び代だらけと考えられます。
また、各国比較でも輸出比率の高い国ほど生産性が高く、上記の経産省調査でも輸出できる企業は生産性が高いことがわかり、Covid-19影響下でも2020.12月から輸出入ともV字回復していることが注目されます。
診断士として輸出できる企業に導くこと、即ち中小企業の輸出比率を高めることは、生産性能向上→賃上げ→デフレからの脱却→人口減少社会での国力の維持、という好循環に繋がることになります。
次に、今回の講座のメインテーマである顧問先から「輸出を始めたい」と言われて困らないために「最低限知っておきたいこと」、「どんな支援機関があるのか」に話題が展開します。
【貿易の世界・商社の役割】
仮想の部品メーカーを例にとり、貿易当事者、モノ・カネ・書類の流れ、商社の役割、商社利用のメリ・デメ、商社の思考(営業努力と受注のバランス)、貿易書類、INCOTERMS等が解説されました。その論旨展開の中で、商社OBの木村さんから、商社営業マンの立場としては、「最小の営業努力で注文が入る商材が欲しい」との思考・行動規範が働くことが改めて紹介され、そのことは筆者を含む本講座の参加者には新鮮な切り口として、納得感がありました。
【輸出を始める前に】
クライアントが、「そろそろ海外輸出始めたい」と言い出した時に、「本当に大丈夫か、一緒に考えましょう。」と立ち止まり、ミラサポplusのセルフチェックの活用での現状分析や経営診断を行い、直接輸出・販路拡大がクライアント企業の経営理念・ビジョンにマッチするかどうかを診断士として見極め、アドバイスすることの重要性を再確認しました。
【海外展開支援体制】
海外展開を支援する体制として利用可能なJETRO、中小機構、中小企業振興公社等の支援機関の体制があり、また、グローバル展開型ものづくり補助金、JAPANブランド育成支援等事業等の補助金が利用可能であることが紹介されました。
更に、上表の中企庁委託「中小企業の海外展開の実態把握にかかるアンケート調査」の通り、海外展開に悩んでいる企業の相談相手として(営業、開発、品質、人材、経営管理、資金の各課題についても)適切な相談相手がいないと捉えている経営者が多いという実態が浮き彫りになっており、中小企業診断士こそ、その相談相手に相応しいと考えられること、即ち、「国際派診断士への扉が開かれている」ことで締め括られました。
後半のQ&Aセッションでは、10名の参加者から中小企業の海外展開の個別段階やニーズに対応した診断士としての立ち位置等の多岐にわたる質疑応答が活発に行われました。
また、本日の登壇者木村さんご自身のバックパッカー時代の苦労や体験談にまつわる対話も広がり、今後、リアル懇親会が開ける際の深掘り話題への期待にも繋がり、今回の海外展開支援テーマを起点に相互対話での知識の共有を深めることができました。
■横山 茂生(よこやま しげお)
東京都出身、新日本製鐵(株)入社、貿易大学(IIST)留学、会社分割で日鉄エンジニアリング(株)に勤務中。輸入鉄鉱石購買、傭船契約、プロジェクトファイナンス、作業外注契約、エネルギープラントEPCの機器調達契約、羽田空港再拡張プロ班等を経て上記エンジ会社調達企画部で法令遵守、バイヤー人材育成を担当中。2016年中小企業診断士登録。中央支部国際部副部長(国際社中担当)。