国際部 藤田 泰宏

 私は2021年7月~8月、JICAの課題別研修(投資促進・ビジネス環境整備)に業務総括のサブおよび事務管理担当として参加しました。コロナ前はJICA東京の研修施設に海外研修員を集めて研修をおこなっていましたが、昨年度よりコロナ禍の影響で海外研修員の来日ができなくなり、投資促進・ビジネス環境整備の研修では、初めて全て海外とオンライン(Zoom)で行いました。研修成果を全国の海外投資家・企業に向けのウェビナー(Zoom)も実施しました。概要を以下の通り報告させて頂きます。

■主催者:JICA(独立行政法人国際協力機構)
■受託者:(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツ(WBA)
■研修期間:2021年7月19日~8月12日(土日、自習日を含む)
■参加国:アフリカ・中東・欧州11か国(ナイジェリア、タンザニア、ザンビア、トーゴ、南スーダン、ウクライナ、イラク、ボツワナ、エチオピア、セネガル、ガンビア)
■参加者数:各国1~2名、合計17名
■研修対象:各国の投資促進・ビジネス環境整備を担当する行政官(準高級クラス)等
■研修課題:
 ①日本企業の新興国・途上国への投資・進出に関する視点や海外直接投資を誘致するためのビジネス環境整備等について学ぶこと。
 ②研修の一環として日本人を対象とした公開ウェビナーを8月10日および11日に開催し、自国への投資・進出に興味・関心のある日本企業に対して自国の魅力を直接発信すること。
■研修の進め方および内容:
 ・Zoomによるライブ講義が基本であり、言語は英語、WBAの業務総括者が司会進行・ファシリテーションを行った。藤田は業務総括者のサブとして参加した。
 ・講義中に使用した教材は、オンデマンドで視聴できるようにし、自習期間を設け予習/復習ができるようにした。
 ・海外直接投資促進に向けたビジネス環境整備に係る講義は、WBA社員、大学教授、支援機関担当者等から複数の講師が「グローバルバリューチェーンリンケージと投資環境の整備」、「産業振興とクラスターの育成」、「日本企業による海外展開戦略と事業計画の策定」、「日本企業が海外展開で苦労する事項」、「日本における海外直接投資誘致支援施設の紹介」等の講義を分担して行った。
 ・質問について講義中はチャットで、質疑応答の時間ではライブで応答した。言語は英語とし、すべて通訳無しで行った。
 ・現場視察動画の閲覧・説明について、リアルでの研修では海外投資企業やワンストップ相談センターなどを訪問し説明や質疑応答の場を設定していたが、オンラインでの遠隔研修では、予め受託者(WBA)が研修先企業等を訪問して日本語でヒアリングを行い録画に収録語、英語での音声と英文のテロップを挿入し、研修員向けの教材とした。
 ・講義後にはグループ別ワークショップ(討議)の場を設けた。日々の講義後に5~6名のグループに分け、日本人講師がファシリテーターとなって当日の講義について研修員に討議させ、討議内容を全員に報告した。
 ・知識の習得に止まらず研修成果として8月10日、11日のウェビナーの日本人視聴者向けのプレゼン資料の作成等について日本人講師が個別指導をおこなった。
 ・ウェビナーでの資料は英語で作成されプレゼンも英語でなされたが、日本人視聴者向けに日本語の翻訳ナレーションを被せ各国10分間の動画に収録した。
 ・ウェビナー当日は、研修員予め作成し当方が追加/修正した10分間のプレゼン用資料を元に英語でのプレゼンを動画に収録し流した。その後ライブでのプレゼン時間を英語で3分間設け、さらに質疑応答の時間を設けた。
 ・ライブおよび質疑応答の時間は日英の双方向での同時通訳を通訳者を雇っておこなった。
 ・ウェビナー中の質問は10分間動画および3分間のライブでのプレゼン中を含めZoomウェビナー画面でのQ&Aより受け付け、最後に日本人司会者(WBA)が日本語でとりまとめ、同時通訳者によって翻訳された英語を海外研修員が英語で答え、同時通訳者が日本語に訳して口頭で伝えた。
 ・研修最終日には、全体を通して学んだこと、気づいたことなどについて、研修員と討議の時間を設けた。

<ウェビナーのチラシ>
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■苦労した点:
 ・海外研修員とのインターネットの接続:時々インターネット回線が不安定となり講義の途中で切断されることがしばしばおこ
るので、FBメッセンジャーやWhatsAppで連絡と取れるようにした。ウェビナーでのプレゼン中にもZoomがフリーズした場合等には、プレゼンの順番を入れ替えるなど、臨機応変な対応が求められた。
実際ウェビナーのプレゼンの途中で画面がフリーズしたケースがあり、次の国のプレゼンを始め、その後再度中断した残り部分のプレゼンを行ったケースもあった。
 ・ウェビナーの資料は、国によってバラツキがないようウェビナーの趣旨に沿った一貫性を担保するため、11か国が統一したフォーマットに落とし込み、事前に資料を添削し、本番前には予行演習も行った。
 ・全体を通して、アフリカ・中東・欧州11か国を同時にオンラインで繋ぎ、統一した行動を取ることは素晴らしいことであるが、テクニカルのちょっとしたミスも命取りになるので、準備はテクニカル担当を巻き込んで間違いなく準備することが肝要である。

所感:
コロナ禍の影響で多くの活動がICT化し、いわゆるDXが加速している。JICAの海外研修員への研修事業も避けて通れず、手探りでの試行錯誤が続いたが慣れてくると、リアルにはない便利さもある。今後は、デジタルとリアルの使い分けあるいはハイブリッドでの研修だけでなく海外展示会、商談会、交渉、見学なども推進されるものと考えられる。

■藤田 泰宏(ふじた やすひろ)2014年 中小企業診断士 登録
FMC フジタ・マネジメント・コンサルティング 代表
(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツ 理事 チーフ・コンサルタント
(独)中小企業基盤整備機構 関東本部 企業支援部 チーフアドバイザー
(公財)埼玉県産業振興公社 海外支援アドバイザー