国際部 木村 篤

 私は、本年2021年5月に診断士登録をしたばかりの新米診断士、木村篤と申します。中央支部に入会して間もなく、国際部に入部いたしました。前職から海外へ販売営業での出張に行く機会が多かったことや、バックパッカーで世界一周した経験を元に、この場で海外事情についてお役に立てる情報を発信していければと思っています。

 今回は、日本人にはまだまだ馴染みが薄い、モンゴルという国を紹介いたします。モンゴルへは出張やビジネス研修で2018年と2019年に、首都のウランバートルを訪問しました。モンゴルといえば、朝青龍?ジンギスカン?草原にテントみたいな家?そんなイメージを抱いている方が多いかと思います。いえいえ、それだけではありません。モンゴルには数々の魅力と可能性がたくさん詰まっている国であります。

(1) モンゴルの国情報
 まずはモンゴルという国の基本的な情報を見てみましょう。
01

(出所) Google Map

⇒面積:156万4,100平方キロメートル(日本の約4倍)
⇒人口:329万6,866人(2019年、モンゴル国家統計局(以下「NSO」))
⇒首都:ウランバートル(人口153万9,810人)(2019年、NSO)
⇒交通:ウランバートルまでMIATモンゴル航空が直行便を運行している
成田空港から約5時間半 関西国際空港から約4時間40分
モンゴルは北にロシア、南に中国と隣接し、海と接していない内陸の国であることが特徴です。日本の4倍もの国土を持ちながら、人口は日本の4分の1程であり、国土の大半は草原と砂漠が広がっています。この辺りは皆さんのイメージ通りかと思います。

(2) 主な産業
⇒主要産業:鉱業、牧畜業、流通業、軽工業
⇒一人当たり名目GDP:4,167米ドル(2020年、NSO)
⇒貿易総額(2020年、NSO)
(1)輸出 約76億米ドル
(2)輸入 約53億米ドル
⇒主要貿易相手国(上位5か国)
(1)輸出 中国、スイス、シンガポール、イギリス、ロシア
(2)輸入 中国、ロシア、日本、アメリカ、韓国
⇒貿易(財務省貿易統計)
 モンゴルから日本 約15.5億円
 日本からモンゴル 約364億円
⇒主要品目
 モンゴルから日本 鉱物資源(蛍石)、繊維製品(カシミヤ、羊毛、皮革など)、一般機械
 日本からモンゴル 自動車、一般機械、建設・鉱山用機械

 ここで注目したいのが、貿易黒字の状態であることです。広大な大地には豊富な鉱物資源が採掘されています。また牧畜も盛んで、繊維で有名なカシミヤの一大産地でもあります。カシミヤブランドである「GOBI」は世界的に有名なブランドとして認知されています。
02

(3) 気候
 乾燥地帯であるため、日中の気温の差が大きいです。さらに冬になると極寒。私が首都のウランバートルに行った時は11月下旬でしたが、その時ですでに最低気温が−29℃でした!
 服装は、ユニクロの極暖ヒートテック肌着を着て、厚手のセーターにダウンジャケット、下も極暖のタイツを履いてズボンを履く。靴下も厚手。これで外を歩いていても、5分経つと震えが出てきて、建物の中に逃げ込んでしまうほど。逆に日中氷点下一桁台の気温だと暖かく感じてしまうのが不思議です。
 逆に夏は3日中30℃台まで気温が上がりますが、夜になると一桁台まで下がるので、寒暖のさが激しい気候です。訪れるなら夏が良いでしょう。

03 04

(4) 食文化
 モンゴル料理の主役は肉です。特に羊肉をメインで食べます。伝統的な遊牧の生活において肉料理を冬季に、乳製品を夏季に食する季節サイクルがあります。春になって肉の保存ができなくなると、残りの肉を干し肉にしてかじりながら、乳製品を食べて次の冬まで過ごすというスタイルのようです。私も伝統的なモンゴル料理を食してきました。羊の頭が丸ごと出てきた時はびっくり!臭みが強く、数口しか食べられませんでした。お酒はウオッカやビールをよく飲みます。国産ビールがいくつかあり、おすすめは「Golden Gobi」。すっきりとした味わいの中にも、コクも感じられる飲みやすいビールです。
11

(5) 日本との関わり
 モンゴルと日本とは良好な関係が続いています。最近では、ウランバートルに開港予定の新空港建設のため、ODAとして円借款が行われ、日本企業が建設に携わりました。現在は諸事情で開港が遅れていますが、日本企業とモンゴル企業との合弁会社によって運営していく予定とのことです。
 モンゴルで見かける日本のものでまず目につくものは、日本車です。感覚ですが、全体の8割くらいが日本車で、その半分以上は「プリウス」です。極寒の地ですから、途中でエンストしてしまったり、空調が効かなくなってしまっては命に関わります。性能において信頼のある日本車が好まれる理由の一つです。またプリウスの大半は中古車です。まだまだ所得水準の低いモンゴルでは、日本の新車を買うにはハードルが高いです。前職の商社で自動車用品の営業していた時は、ブレーキフルードや芳香剤が「氷点下50℃でも耐えられる」というモンゴル仕様にしてもらえるようメーカーに交渉していました。

 日本とモンゴルは、2016年に経済連携協定(EPA)を結びました。これにより日本から輸入されるほとんどの製品への関税が段階的に撤廃されます。これにより日本製品の輸入コストが下がるため、日本製品がモンゴルで流通しやすくなります。モノだけでなく、サービスや人の流れにおいても優遇措置が与えられるため、更なる関係強化が進むことになります。
12

(出所) 外務省「日・モンゴル経済連携協定の概要」より引用

(6) 将来性
 今後モンゴルという国はどのように発展し、どのように世界からみられていくのでしょうか。
まず立地特性として、北にロシア、南に中国と挟まれた国であるということです。社会主義国家の2大巨頭に挟まれた民主国家という立ち位置であり、両国との外交にはとても慎重になっています。経済的なつながりを持つべく、ロシアと中国との国境の街に経済特区を設けました。お互いの国の製品を免税店として出店することができたり、ビザなしで日帰り観光ができるなど、流通を活発化させています。
 両特区付近には鉄道駅があり、モンゴルを縦に縦断する路線が引かれています。これは北京からモスクワまで繋がる鉄道の路線の一部で、物流の要所となっています。モスクワからさらにヨーロッパまで鉄道で繋がるため、ヨーロッパにとっての物流拠点としてもモンゴルは重要な存在になりつつあります。

 産業として現在注目されているのが、観光です。1990年以降のモンゴルの観光業は民間主導の下、民間資本による観光開発へと転向しました。観光はモンゴルの成長産業の一つとなり、 2000年5月に「モンゴル観光法」が施行され、道路交通観光省が設立されました。観光客の数は劇的に増加し、現在およそ5倍の57万人。観光収益は国内GDPのおよそ10パーセントを占め、鉱業(モンゴルGDPの25%)、牧畜業(モンゴルGDPの12%)に次ぐ経済を支える重要な分野となっています。国別では、中国、ロシアからが約半数、日本からは全体のまだ4%ほどに過ぎませんが、10年前と比べると2倍強に増加しています。(情報元:SHINE ZUUCH TRAVEL LLC シネズーチトラベル社のHPより)
 観光の目的で最も多いのが、「大草原・砂漠を訪れる」です。やはりモンゴルといえばこれですね。日本の都会の喧騒から離れて、雄大な大地に身を置きたいと思った時には絶好の国だと思います。宿泊では「ゲル(テントのような家)」に泊まって、満点の星空を見ることも醍醐味です。私はまだウランバートル以外の土地には行ったことがないので、コロナが落ち着いた際にはぜひ訪れてみたいと思っています。
10

(出所) OnTrip JALのHPより

(7) 最後に
 最後までお読みいただきありがとうございます。モンゴルのイメージの幅が広がったでしょうか?もちろんまだまだモンゴルの魅力や文化、将来性などをお伝えできたわけではありませんが、皆様に少しでも興味を持っていただけるきっかけになればと思いました。今後は是非ともモンゴルを注目してみてください!

■木村 篤(きむら あつし)
1980年生まれ。小売業で海外店舗の立ち上げ、店舗運営に従事。自動車部品の商社で海外販売営業、貿易実務を経験。2005年から2年間バックパッカーで世界一周。訪問国数は60ヵ国以上。法政大学院イノベーション・マネジメント研究科の養成過程を経て2021年5月に中小企業診断士登録。独立診断士として活動中。取得資格にAIBA認定貿易アドバイザー、ITコーディネータ、1級販売士、経営管理修士(MBA)など