グローバル・ウインド「知っているようで知らないグローバルインフラthe Internetの世界~国際部『国際社中』第3回発表内容から~」(2020年12月)
国際部 水口淳一郎
5G、DX(デジタルトランスフォーメーション)、IoT、クラウド、AIなどの技術を利用する上では、インターネットは切っても切れない重要なインフラストラクチャーです。私達は、スマホやパソコンなどで、毎日インターネットを利用し、大変身近な存在となっていますが、『インターネット』がなぜ利用できるのかを知る機会はそう多くはありません。
第3回国際社中では、国内大手通信事業者などに長年在籍し、IT・クラウドコンサルティングに精通している国際部 皆川真人部員を迎え、 海外通信事業者との協業を踏まえた、インターネットの世界をお話しいただきましたので、ご紹介します。
1.コロナ禍による「我が国のインターネットトラフィックの影響」
2020年コロナ禍により、我々の日常生活が大きく変わりましたが、インターネットトラフィックに、どのような影響をもたらしたのでしょうか。
総務書の調査によると、2020年5月と前年同月比のインターネットトラフィック(固定系ブロードバンドサービス契約者の総ダウンロード)は、前年同月比57.4%増と大幅に増加しました。これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため在宅時間が増加したことによるものとみられます。このように、日常生活の変化は、インターネットトラフィックにも大きな影響を与えています。
出所:総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2020年5月分)」
次に、身近な存在であるインターネットの歴史をみていきましょう。
2.今日までのインターネットの歴史
(1)黎明期 ~研究の時代~
はじまりは1958年。最先端科学技術の軍事利用への転用のための研究を取り扱う組織として、米国防総省に高等研究計画局(ARPA; Advanced Research Projects Agency)が設置されました。ARPAの資金提供により、1967年に世界初のパケット通信ネットワークARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)の研究プロジェクトが発足します。1972年には、ARPANETは米国のみならず、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるイギリスとノルウェーのノードへも接続。1973年には、インターネットで広く使われているTCP/IPの最初のバージョンが発表されました。
※TCP/IP・・・TCP (Transmission Control Protocol)とIP (Internet Protocol)という、二つの通信プロトコルの総称。TCP/IPの登場により機器間で物理形態やOSが異なっていても相互に情報の交換が可能になると同時に、パケット通信を用いることで障害にも強いネットワークとなり、その後のインターネットの発展に大きく貢献しています。
(2)1980年代 ~仕様策定の時代~
1983年には、ARPANETから軍事部門(MILNET)を分離。ARPANETでTCP/IPが標準プロトコルとして採用され、IPv4アドレスが利用開始となります。
(3)1990年代前半 ~商用サービス本格開始~
1993年、郵政省がインターネットの商用利用を許可し、インターネットを利用するのに欠かせないISP(Internet Service Provider)事業などの実施が可能になりました。このISP事業者との契約により、インターネットが誰でも利用できるようになりました。
その後1994年には、Yahoo!が誕生。NIFTY-Serveがインターネット接続サービス開始します。そして1995年、米Microsoft社のOS「Windows95」が発表され、インターネット時代の幕開けです。それまでパソコンをネットワークでつなぐためには、専門的な知識が必要で手間がかかっていました。しかしながら、「Windows95」によりパソコンでのインターネット接続設定が、格段に簡単になり、だれでもインターネットが利用できるようになりました。ちなみに、amazon.comが書籍販売のサービスを開始したのも1995年となります。
(4)1990年代後半 ~次世代インターネットへの布石~
1996年にはIPv4アドレス不足に備えるため、後継となるIPv6の仕様が決定。同年、Googleが検索サービスを開始しました。
(5)2000年代以降
2000年、インターネットサービスプロバイダの株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が、国内初となるIPv6による接続サービスである、「IPv6ネイティブ・サービス」 の提供を開始。NTT東西が、光・IP通信サービスであるBフレッツの本格提供を発表しました。
その後、2004年から2006年にかけて、Facebook、YouTube、Twitterのサービスが続々と開始されます。
国内・海外を問わずにアクセス可能であるインターネットですが、実は、それを支えるインフラストラクチャーがあってこそ、インターネットを便利に使うことができるのです。
3.海外インターネットサービスを利用するために欠かせないもの
~これがなければ海外インターネットサービスは利用できません!~
普段、インターネットを利用しているときには意識することはありませんが、国際間へのアクセスには、それを繋ぐ「ネットワーク」が必要です。
実は、そのネットワークとして「海底ケーブル」がその役目を果たしています。下図は、日本を取り巻く海底ケーブルを図示したものです。多くの海底ケーブルが取り巻いていることがわかりますね。
出所:Submarine Cable Map – TeleGeography
出所:Submarine Cable Map – TeleGeography
このように、海外からの海底ケーブルを国内の中継所を経て、国内ISP事業者へとつなぎます。これにより、インターネットが国内/海外問わず利用できるのです。ただ、この海底ケーブルにも保守が必要で、たまに切れることもあるとか。そのときには、切れた部分を補修するため、港から船を出して切断されたポイントに向かって修理をするとのことです。海は広いため、どこで切れたかを十分に確認しないと、探索に大変な労力を要すようです。
4.ISP事業者同士の接続には、良好な人間関係の構築が必要!
インターネットでURLを検索するとき、まず加入しているISP事業者にアクセスしますが、加入しているISP事業者内に閲覧したい情報がない場合には、加入ISP事業者を経由して、他のISP事業者へアクセスすることになります。ISP事業者同士のネットワークにより、Web検索ができるのです。
そうなるとISP事業者同士を多く接続することが大事と思いますが、ISP事業者には、管理するネットワークの大小や経路情報を多く保持しているかによって、ランク分けがなされます。都度交渉が必要な局面もあり、簡単にはいかないとのこと。そのため、ISP事業者が一同に会す展示会などで懇親を深めることも大事な仕事。国内外問わず、人間関係の構築(人的ネットワークづくり)も重要になるようです。