グローバル・ウインド

中央支部・国際部 山﨑 肇

11月21日に、第4回国際派リーダ育成委員会(国際社中)を開催しましたので、ご報告致します。

なお、この講演のダイジェスト動画を、皆川会員に作成いただきましたので、こちらもご参照ください。

今回は、中央支部国際部の在外部員として5年間ミャンマーで通信インフラ整備の業務に当たられて今年8月に帰国された竹島裕明さんに登壇いただき、「ミャンマーの最新情報について」というテーマで講演いただきました。
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かつてビルマと呼ばれましたミャンマーといえばスーチーさんで有名ですが、現在でも国内事情はなかなか難しいものがあるようです。まずはミャンマーの地勢図からお話しは始まりました。

1.ミャンマーの地勢学的情報
竹島さんは2006年まで首都であった最大の都市ヤンゴンに駐在していました。現在の首都はネピドーです。ミャンマーは人口5,142万人、面積は日本の1.8倍で南北に長い地形になっています。仏教徒が87.9%、キリスト教6.2%、イスラム教4.3%という仏教国で人口のなんと13%が僧侶だそうです。平均寿命は66.6歳、男性64.6歳、女性68.5歳、健康寿命は59.1歳、男性57.7歳、女性60.5%。5歳以下の乳幼児死亡率は1000人当たり50人とのことで、大変厳しい現実があります。

2.ミャンマー略歴と政治体制
歴史的にはイギリス統治を経て1948年ビルマ連邦として独立、1962年軍事クーデターで社会主義政権樹立。1988年民主化要求デモで社会主義政権が崩壊、1990年の総選挙でアウン・サン・スーチーの国民民主連盟(NLD)が圧勝も軍事政府はスーチー氏を軟禁、2010年には軟禁を解除となりますが、国内には紛争が続き、現在に至るまで完全な民主化の道は険しいようです。国内各地の紛争状況により注意レベル1(十分注意)~4(退避勧告)の地域が示されており業務においても常に注意が必要のようです。
政府20省2府の内、国防、警察、治安維持の3省は軍司令官の指名、正・副大統領3名のうち1名は国軍関係者が就くなど、軍が政府全体を監視できるように憲法が保障しているとのことで、国防治安評議会11人のうち6人は軍関係者と定められているとのことです。
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3.現地のビジネス環境
・竹島氏が赴任した2014年当時は外国人向け住居が不足し、一般企業向けのオフィスビルはほぼ存在しなかった。その後開発が進んだことで、5年後の帰国時にはコンドミニアムでは当初US$3,000~4,000/月だった家賃がUS$1500程度にまで下がった物件もあり、オフィスビルも供給過剰が懸念されるまでになった。
・赴任当時自動車損害保険の保障額が少なかったため、社用車は運転手付きレンタカーを使用。
・現地ミャンマー人の社会保険は一定レベル整備されており、従業員5名以上の全ての企業は社会保障制度への加入を義務付けられている。
・ミャンマーの2019年度版「ビジネス環境ランキング」は(世界銀行発表)189か国中171位、2019年10月のOECDカントリーリスク評価は7段階の6番目
・税金は法人税25%(キャピタルゲインは10%)、所得税0~25%などかなり有利なところもある。
・価格競争が激しく、人脈が大変重要な世界。
事業開始には投資企業管理局(DICA)が、ヤンゴン支所内にワンストップサービスセンターを開所して申請手続き首都ネピドーに行かず1カ所で行えるようになったとのこと。
・日系進出企業拠点数452人、在留邦人2776人(H30年10月1日外務省資料)

4.ミャンマーの電気通信事情(携帯電話)
・2013年当時ミャンマーの携帯電話普及率は13%。他にアジア周辺国で100%を超えていない国はラオスの66%のみだった。その後ミャンマー政府は国営以外の携帯会社の入札を行い、カタールとノルウェーの2社を選定。2014年にミャンマー国営の郵便・通信事業体と日本の企業連合が事業提携を行い、3社によるインフラ投資と普及宣伝活動による2017年に携帯電話普及率は100%に到達したと言われている。
・2017年にはベトナムの会社と現地との合弁企業が携帯事業ライセンスを取得し4社となった。このため価格とサービスの競争が激化。
・発展途上国の例にもれず、携帯は一気に普及したが固定電話の普及率はあまり伸びておらず、FTTHなどの固定系インターネットサービスは今後企業や富裕層向けに首都圏から地方に順次普及が進む見込み。
・11月に日本のODA円借款である通信インフラ改善事業(約70億円)が正式に調印された。
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5.現地会社での取組み
・本社:ヤンゴン(約40名)、工事事務所:マンダレー(約70名)*プロジェクト繁忙期
・事業内容:通信事業者の光ファイバー網構築、通信設備更改、屋内ネットワーク構築など
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6.ミャンマー駐在期間を通じて感じたこと
〇ミャンマーの難しさ
【仕事】
・赴任時は作業者の安全に対する意識が低く、意識改革に時間がかかった。
・許認可取得に時間がかかり、想定外の資料提出などを要求されることがある。
・人材の流動性が高く、社員の定着率を高めることに試行錯誤を繰り返した。
【国・環境】
・インフラ整備が現在進行中で、自然災害発生リスクが高い地域がある。
・少数民族のテロ・戦闘リスクが高い地域があり、外国人立入禁止地域は、ミャンマー人が全て対応する必要がある。
【国民性】
・本音と建て前の違いがあり、人が嫌がることは言わない傾向がある。
 
〇ミャンマーの良いところ
【国・環境】
・治安が良く、泥棒が非常に少ないと感じる。夜でも犯罪や身の危険を感じることが少ない。
・ヤンゴン市内には日本料理店が非常に多い。(日本人約3000人に対して200軒程度)
・12月~2月の乾季はヤンゴンではほとんど雨が降らず、非常に過ごしやすい。
【国民性】
・他の東南アジアに比べて、勤勉で誠実という印象を受けた。(本屋、特に古本屋が多い)
・就業後や週末に学校に通うなど、向学心が旺盛な社員が多い(その後転職することも多いが)

日頃なかなか内情を知ることの少ないミャンマーですが、竹島さんの詳細で臨場感溢れるレポートで、興味深く学ぶことができました。竹島さんは永住したいと思ったほど気に入ったそうです。ぜひ一度行ってみたいですね!
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■竹島 裕明(たけしま ひろあき)さん
1970年生まれ。大阪府出身。
大学卒業後通信建設会社に勤務し、海外部門で主に営業やプロジェクト管理を担当。フィリピン、マレーシアで駐在経験有り。
2014年9月よりミャンマーの現地子会社に駐在。2019年8月帰国。
2016年10月中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部。

■執筆者:山﨑 肇(やまざき はじめ)
小西六写真工業(のちのコニカ、現コニカミノルタ)を定年退職後、厚生労働省を経て、現在大手損保系コンサルティング会社でリスクコンサルタントとして携わりつつ、各種診断士活動にも従事。
コニカミノルタ時代2005年上海に販売子会社を設立、4年間総経理(社長)として駐在。
2003年3月診断士登録、東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部・会員部。京都市出身