Global Wind (グローバル・ウインド)

峯崎 祐一

 私は、1997年に中小企業診断士に合格・登録、国際部には2016年に入部致しました。
私がどのように海外とつながっているか、今後何を目標としているか、について書かせていただきます。

1.学生時代は
 私は1972年に高校教師育成の大学(英語学英文科)に入学しました。その時から海外には興味があって、大学2年の夏に当時としては珍しい2週間のイギリス短期留学を経験しました。初めて乗る飛行機にわくわくして、イギリス南部の保養地バースの老婦人の家にホームステイし、世界中から来た若者が集まる学校で昼は勉強し、夜はパーティなどをエンジョイしました。
その時に学んだのは、イギリスの普通の家庭の生活(とても質素ですが温かかったです)と学校では文法・ライティング(読むこと)よりもスピーキング(話すこと)がとても大事だということでした。
日本では文法優先で読むことは得意でも、話すのは全くダメという教育を受けていましたが、海外から来る人は文法はダメでもお互いの文化や考え方を話し合うことで意志の疎通を深めているということを学びました。

2.就職してから
 1976年に就職しましたが、当時はオイルショックで就職難でした。学生時代の経験もあり海外活動できる就職(商社等)を希望していましたが、商社の募集は全くなく、大学の学生科に相談したところある水産会社が貿易部門の拡大を目指して海外志向の学生を募集しているとのことで、入社を決めました。
 その後、30年以上にわたり同社の貿易部門で水産物(マグロ、甘海老などのお魚)の海外買付に従事し、1年のうち半分は海外出張に出かけていました。1983年から1990年はロンドンに駐在し、めったに行かれない北欧(ロシア国境近くのノルウェーの町、白夜のアイスランド、氷山のグリーンランド等)やスペインの田舎町などを中心にロンドンから出張していました。(写真はグリーンランド甘海老買付出張した時のものです)
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 当時は鉄の宰相サッチャー時代で、綱紀粛正・緊縮経済の中、フォークランド戦争と言う信じられない貴重な経験も体験し、イギリスの底力を感じました。
 また、このイギリス滞在の7年間で「海外から日本を見る」ということも学びました。今でいう「グローバル・マインド」でしょうか。
 日本にいる時は当たり前に思っていたことも海外に行くと通用しないし、「日本の常識は海外の非常識」ということを目のあたりに実感しました。
 例えば、日本では和や強調性を重んじて会議等では周りの目を気にしてあまり積極的に発言しないことも多いようですが、海外ではそれは個性や主張もなく何を考えているか分からない異星人として見られてしまいます。
 イギリスでは伝統的に自分の意見を理路整然と述べることが美徳とされており、最初は私も戸惑いましたが滞在しているうちに自分の意見を主張することの大切さを学ぶことができました。
 このようなことは、現代のグルーバル・ネットワーク社会では当たり前になっていますが、30年前の当時では海外で体験する以外に機会もなく、今となっては笑い話ですが貴重な経験をしたと思っています。

3.中小企業診断士として
 ロンドンから帰国後も海外部門で買付を担当していましたが、ある時期に病気入院した際に「戦略的生き方」と言う本を読んで中小企業診断士の資格を知り、地元や地域で活躍している中小企業の役に立ちたいと資格取得を目指しました。
名古屋転勤時に勉強を始め資格取得には4年かかり、1997年に合格・登録しましたがその後も海外出張が多く企業内診断士としての活動は限られていました。
その間にスペインで蓄養マグロ(回転寿司でおなじみの適正価格の本マグロ)の合弁会社を立ち上げましたが、中小企業診断士の観点から現地法令の調査、スペイン・パートナーの選別、合弁会社の出資比率など、企業の海外進出に役立つフィージビリティ・スタディを実施できたことは良かったと思っています。
 水産会社で30年勤務した後、9年間は関連物流会社にて営業・経営企画担当を担当し、タイへの海外進出、全社の中期経営計画策定などを行いましたが、その際にも中小企業診断士としての海外展開や事業計画策定の経験が役立ちました。
 2015年に退職し2016年に経営コンサルタントとして独立して以降、信用金庫を中心に様々なルートで中小企業を支援する機会がありますが、その中で海外展開を支援した例をご紹介したいと思います。
 この会社は横浜の化学会社で、界面活性剤という水・油のように混じり合わないものを混ぜ合わせるのに役立つ化学製品の製造・販売に特化して、クリーニングや縫製のニッチ市場に独特な製品を提供し続けて、業界や横浜市からも高い評価を得ています。
 2016年にある信用金庫から、同社の海外展開の支援を依頼されました。
 同社は国内で培った界面活性剤のノウハウを活用して、従来から動物用栄養ドリンクを飼料会社や養豚・養鶏場に提供してきましたが、今後社長がかつて学んだ欧州の養鶏場へ販売したいというプロジェクトを立ち上げ、海外展開のフィージビリティ・スタディを依頼されました。
 3か月にわたる支援の中で、製品原材料のEU基準の確認、EU申請方法、欧州の養鶏市場調査、養鶏場・資料会社の調査、販売促進(海外展示場の紹介)など海外展開に必要な調査を行いました。
この中で、特に苦労したのが製品原材料のEU基準の確認でした。
 私は元々文系で化学系は全くの素人であり、原材料や化学記号などを言われても初めは全くチンプンカンプンでしたが、社長の海外展開への熱い熱意が伝わり勉強を重ねて、JETRO(欧州支店含め)や欧州各国大使館、EU本部ともメール交換を頻繁に行い、世界で最も厳しいと言われるEU基準を踏まえて同社使用の原材料が基準に適用可能であることを確認しました。
 同社への支援は3か月で終了し、同社は現在JETRO経由で欧州進出に向けて引き続き検討中ですが、今年になり同社より事業承継を踏まえた「事業計画」策定のご依頼を受けて4月より約半年間支援する予定です。
同社の海外進出展開を少しでもご支援することができて、心から良かったと思っています。

4.今後は
 今まで、私の海外とのつながりを学生時代から企業内、独立後と書いてきました。
昔から海外に興味があり学生時代から約40年間は海外とのかかわりが続いていますが、今後は実際の生活とビジネスをした海外での経験を活かし、個人としては一層「世界から見たものの見方(グローバル・マインド)」を深め、中小企業診断士としては「海外展開の支援」に注力したいと考えております。
 中央支部国際部にても、今後出来る限りの活動を行ってまいりますので、皆さま何卒よろしくお願い致します。

■峯崎 祐一(みねざき ゆういち)
1953年東京(目黒)生まれ。東京教育大学英文学科卒業。大洋漁業(現マルハニチロ)に入社後、ロンドン6年駐在を含め水産物の海外貿易業務に従事。2015年退職、2016年に経営コンサルタントとして独立後、海外展開・事業計画作成・経営改善・補助金支援を中心に活動中。1997年4月中小企業診断士登録、実用英語検定1級。