Global Wind (グローバル・ウインド)
インド市場の魅力とビジネス事情(推進ポイント)

児玉 直樹

はじめに

 

筆者は、2012年より、買収したインド製販会社で2年強マーケティングをした後に帰国。その後、インド市場含めたアジア・東欧エリアの資源会社とビジネスをしている。インドの川上から川下まで見てきた筆者視点より、近年注目を集めるインドビジネス事情を記載している。

 

1.インド市場の魅力

先ず、インド市場魅力を語る上で良く使われる言葉に3Dというものがある。これは、(1)Democracy/巨大民主主義国(世界最大の民主主義国家)

(2)Domestic demand/成長著しい内需(消費意欲旺盛な中間層とインフラ需要の拡大)

(3)Demographic/魅力的な人口動態(若い労働力により、高い経済成長が続く)

の略だが、特に特徴的なのは(3)であり、その可能性から世界中の注目を集めている国である(数値統計情報は以下ご参照)。

 

・数値統計

①2015年度人口12.6億人(この内、50%が25歳未満)

②生産能力人口:2020年に8億6千万人に到達見込

③GDP成長率:7.6%(2015-16)、8%予測(2016-17)、2050年にはGDP世界第三位到達見込

*インド政府統計より。

 

2.インドビジネスの難しさ

魅力的なインド市場であるが、ビジネスを難しくする以下4つの特徴がある。

(1)複雑さ

多様な言語、宗教、カーストなどに加え、州別規制や税率の違いなどが複雑に絡み合っている為、事業推進を困難にしている。

言語を例にすると、西部出身のインド人と東部・南部に出張したとしても、エリアによって言葉が違う為、全く通じない(全ての人が英語を話せる訳ではない)。

(2)厳しい消費者

消費者の特徴として、倹約思考が高い為、BtoC商品の価格に対しては、特に厳しく見られる。インド現地企業も価格弾力性が高いことを意識し、市場価格を頻繁に変えてくることがある為、リアルタイムな対応が必要だ。対応に遅れた場合、一気に市場シェアを奪われることがある。

(3)雇用者マインド

インド人の基本的なキャリア思考として、優秀なインド人ほど、給与が高くブランド力ある会社に転職する。彼らは、給与とキャリアを上げる為に転職を繰り返すようだ。また、専門性を重視することから、同業界同職種に転職する者が多い為、情報は競合他社に漏れやすい。故に、情報管理体制厳格化と不必要な情報は言わないというスタンスも重要だ。

(4)生活難易度

出張者・駐在員にとって、一番注意したいのは食あたり。特にシャワーの水、生野菜やカレーの油であたる方は多いように感じる。

なお、運がいいのか腸が強いのか、私はほとんどあたったことはありません(笑)

 

3.インド市場でのビジネス推進ポイント

以上のように、困難なインドでのビジネス推進に対し、述べたいことは多々あるが、今回は3点に絞らせて頂く。

 

(1)商品・サービス導入時ポイント

①マーケットインによる的確なニーズ見極め

先に述べた多様性の観点からか、ニーズ把握を見誤る企業が多い。

私の知る企業も、当初ニーズを誤って把握していた為、正しい需要見極めをし直した所、販売を拡大出来た。

②市場・商品特性に合わせた価格設定

価格弾力性が高い、価格が横流れし易いなどの理由から、色々な値付け方法が存在する。

例えば、特典を多く付けることでお得感を出したり、購入価格を分かりづらくしたりもする。また、段階的な値下げ方式を採用する場合など様々な方法がある。(商品や顧客特性に合わせた運用が必要)

③納期管理と柔軟かつ迅速な対応

インドでは諸々の理由から納期管理が難しい為、強いリーダーシップによる動機付けと粘り強い進捗管理が重要。また、事前に想定出来ないことが起こり、市況変化も激しい為、柔軟かつ迅速な決断が求められる。

 

(2)販売方法の選択

・事業・市場(州やターゲット)に合わせた適切な販売方法の構築

誰に何を売るかにより様々だが、直接販売にするか、代理店経由か、代理店の形態は何にするかなどを考慮する必要がある。

私の知る企業は、間口が広いことが重要だと思いインド型卸売店で販売していたが、商品が全く売れなかった。商品に合わせ、インド型販売代理店に変更したところ、販売は大きく伸びた。

 

(3)契約交渉

インドでの契約交渉時の注意事項は以下二点。

①彼らの巧みな交渉術に負けないこと。重要なのは、事前のケーススタディと、交渉中に

黙らない・本筋を外さないこと。

②契約不履行時の条件を漏れなく設定する。契約締結後も種々の理由から約束を破って

くることがある為、細かい設定が必須。

 

4.おわりに

インドビジネスは、複雑で理解が難しいことに加え、市場変化に合わせた迅速な対応が求められる為、事業推進は容易ではない。

一方で、今後世界1位の人口になり、需要も急拡大する市場の為、勝ち残った際のリターンは想像以上に大きい。

また、モディ首相のメイク イン インディア施策により、対外投資を増やすための様々な優遇策が打ち出されている。

何と言っても、彼らは親日であり親交を築くとフレンドリーかつ家族的に接してくれ、楽しい日々が過ごせる(以下はインド人の友人と行った世界遺産の写真)

 

01_タージマハル(世界遺産)

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02_ハワーマハル(世界遺産)

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インド好きな私としては、より多くの日本企業がインドに進出してくれることを祈念している。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

■児玉 直樹(こだま なおき)

2011年中小企業診断士合格。大手電機メーカーで国内外の営業・マーケティングをした後、財閥企業で海外営業として従事。商品・事業・売上創出活動が得意。

連絡先:naoki29@mbr.nifty.com