Global Wind (グローバル・ウインド)
ベトナム視察ツアー

原 正紀

 城北支部を中心とした診断士の海外ツアーに参加しました。ホーチミン→シェムリアップ(アンコールワット)を機内1泊を含む3泊3日での弾丸ツアーでした。ホーチミンで現地企業2社取材、現地診断士2名及びコンサルタント1名の講話、さらに1日アンコールワット世界遺産見学という、中身の濃い内容でした。以下に内容をレポートします。

 到着初日はホーチミンで現地で活躍する診断士2名と、東南アジアをベースに活躍するコンサルティングファームのマネジャー1名の話を聞きました。

1)サムライカフェ(診断士の三宅氏が経営するカフェ)にて診断士2名の講話。

gw201602-1_0795 gw201602-2_0797

gw201602-3_0798

(1)JICA所属アドバイザー 山田昭彦氏(診断士)
 「ベトナムでのJICAの仕事とは」
 ベトナムの在留邦人数は2004年の3877人から2013年には12254人と大幅に増加。ベトナム日本商工会議所の会員企業数も2004年の409社から2014年で1337社となっている。
 JICAの中小企業の海外展開支援として、2018年までに新たに1万社の海外展開を支援するという方針があり、途上国の開発ニーズと中小企業のマッチングに注力している。
 中小企業とコンサルタントのマッチング窓口としての機能を担っており、山田氏もその事業に関わるコンサルタントとしてホーチミンで2年目を迎えて、日々現地日本企業の支援を行っている。

(2)スパイスアップ・ベトナム 代表取締役 三宅秀晃氏(診断士)
 3年前よりベトナムに来て、スパイスアップ・ベトナムを起業(従業員8名、2014年12月設立)して、3つの事業を展開中。
・ミッション・グローバル:海外研修やインターンシップなど
・べトナビ:日本人向け情報サイト、飲食店等紹介
・サムライカフェサイゴン:日本人とベトナム人の交流などを行うカフェ
 ベトナムでは外資規制が強いので、ベトナム人出資という形で起業している。日本人起業家は増えており、日本人街があるのでつながっているとのこと。

2)ルネッサンスホテルにて、東南アジアで活動するコンサルタントの講話。

gw201602-4_0790 gw201602-5_0801

gw201602-6_0805

(1)株式会社コーポレートディレクション(CDI) ディレクター 小川達大氏
 BCG(ボストンコンサルティング)よりスピンアウトした戦略コンサルファームで、日本企業の海外展開を支援している。
・生産拠点&市場としてのベトナムについて:エレクトロニクス、靴(生活用品)、シーフードが主力産業ベスト3。日本企業は優秀な人材としてもベトナムに期待している。文化的距離が近い。組立工場だけでは付加価値が低いので、裾野産業の誘致に注力している。
・ベトナム展開のポイントについて:進出の際のメリットは、状況によっては消失することもあるので、なぜ進出するかをしっかりと考える必要がある。ベトナムに進出するのは大変、売ることはもっと大変、利益を出すのはさらに大変。
・まとめ:「ホットな展開先であるベトナム」「しかし難しさもある、また魅力的な要素は変化する」「いかに自分の強みに目を向けるか」がポイント。

3)現地企業2社の訪問、様々な話を聞いて意見交換を行う。

(1)Viethin Printing & Packing Comapy社の訪問。

gw201602-2_0797 gw201602-8_0842

gw201602-9_0822

 2001年設立、印刷パッケージの会社、社員80名。
 国内中心に高級パッケージ、手作り品、ラベル、箱などを製造してきたが、2年前より輸出に力を入れている。日本などに対して紙袋やギフトケースなどを扱う。中国と同等の技術水準だが、人件費が安いのが強み。
 商材や原料は外国から輸入(中国、マレーシア、タイなどより)、販売はネットも活用しており、アリババ、PtoP、JETROなどを利用して受注している。
 工場を移転予定で、日本からの指導もあり5Sに対応した工場とする。製造用の機械として、印刷機は日本製のものを利用し、それ以外は中国が多い。

(2)KYVY CORPORATION社の訪問。

gw201602-10_0842 gw201602-11_0852

gw201602-12_0855

 2001年設立、紙おむつの製造、社員400名(営業150名、本社・工場250名)、売上1000万ドル。キューバ、カンボジア、オーストラリア、ナイジェリアなどへ輸出している。自社ブランドと他社のOEM生産を行っている、強みは価格競争力。国内シェアは、大人用は20%、子供用は5~8%くらいである。
 製造用の機械はイタリア製のものと中国製のものを使用している。競合は国内4社で、ベトナム資本の会社は当社のみであり、あとはP&G、ユニチャームなど外資系企業。

4)カンボジア(アンコールワット、アンコールトム、タブロム遺跡見学)

gw201602-13_1015 gw201602-14_0913

gw201602-15_0996

 カンボジアは時差はホーチミンと同じで日本より2時間遅れている。面積は北海道の2倍でカボチャのような形をしている。カンボジアの国王は東京と縁が深く、カンボジアのお札にも東京と記されておりトヨタの車も描かれている。
 直行便がないせいか、日本からの観光客は減っている。人件費は安いけどガソリンは日本より高いくらいで、物価も全体的に東南アジアとしては高い。電気はベトナムとタイから買っている。田舎は電気や水道は来ていないので、もろもろ高い料金になっている。シェムリアップのアパートは高く、家賃は7~8万円くらい、人口は79万人、観光客は400万人。

付録(うんちく話として):
・アンコールワット遺跡の中に、江戸時代の日本人による墨での書き込みがあるが、加藤清正の家臣らしい。
・タブロム遺跡でハリウッド映画「トゥームレイダー」(アンジェリーナ・ジョリー主演)の撮影が行われた。それ以来人気が高く、観光客が多い。
・アンコールトムは東京ドームの35倍の広さ。アンコールワットよりもだいぶ大きい。
・アンコールワットなどでは石垣が崩れた遺跡の復旧作業をしているが、上智大学がよく手がけており、仕事が丁寧で好評。

■原 正紀(はら まさのり)
株式会社クオリティ・オブ・ライフ代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、リクルートを経て起業。人財に関する提案を多数の企業、官公庁、教育機関に対して幅広く行っている。
『採用氷河期』(日本経済新聞出版社)など著書多数。(一社)留学生支援ネットワーク理事、高知大学客員教授、成城大学非常勤講師。