グローバル・ウインド インドネシア(ジャカルタ)訪問記(2014年1月)
Global Wind (グローバル・ウインド)
インドネシア(ジャカルタ)訪問記
2013年10月下旬 4日間の日程で、ジャカルタに出張しました。限られた時間の中で、私が見てきた、ジャカルタ近郊の工業団地とそこに進出している日系企業の状況等を中心に報告させて頂きたいと思います。
1.ガルーダ・インドネシア航空に乗って
成田-ジャカルタ(スカルノハッタ国際空港)間の直行便は、日本航空、全日空も運航していますが、今回はガルーダ・インドネシア航空を利用しました。ガルーダ航空の最大のメリットは、入国審査官が同乗していて、フライト中に入国審査が行われることです。そのため、ジャカルタに到着して飛行機を降りた後、(荷物を預けてなかったこともあって)10分程で空港の外に出ることができました。7月に日本航空便で来た時は、夏の旅行シーズンでもあり、短期ビザの購入等で1時間半以上もかかったのと比べれば、インドネシアのナショナルフラッグならではの差別化要因だと思いました。
2.インドネシア概況 ※数字は「外務省HP インドネシア共和国基礎データ」他より
インドネシア共和国は、東西5,110km、1万8千以上の大小の島々から成る島嶼国家です。国土は約189万k㎡(日本の約5倍)で、人口はASEAN諸国で最大の約2.4億人です。国民の大多数がイスラム教徒です(イスラム教88%、キリスト教9%)。現在のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、2004年に選任されましたが、インドネシアでは10年(5年×2期)以上継続して大統領になれないため、2014年には大統領選挙が予定されています。
他のASEAN諸国同様に、経済成長が著しく、GDP(名目)は、2006年3,643億ドルから、2012年8,794億ドルへと、この6年間で約2.5倍に増加しました。一人当りGDP(名目)も、2010年には、自動車などの普及率が一気に拡大するといわれている3,000ドルを突破しました(2006年1,663ドルから、2012年3,563ドルと約2.1倍に増加)。近年、インドネシアへの直接投資が増えている理由としては、有力な消費市場となりつつあることに加え、「チャイナプラスワン」(中国国内の賃金水準上昇他のリスクを嫌い、中国以外に分散投資をすること)による新たな投資先となっていることが挙げられます。
3.ジャカルタの交通渋滞
ジャカルタ首都圏は、インドネシアの中心としてグレーター・ジャカルタと呼ばれ、交通渋滞がひどいことで有名です。急速に進むモータリゼーションの結果、ジャカルタ警視庁に登録されている自動車・オートバイを全て道路に並べると、現在の道路面積よりも多くなるといわれています。
ジャカルタの交通渋滞
現地に長く駐在する人でも、「ジャカルタ首都圏でお客様とのアポイントがあると、1時間位の余裕をみてもギリギリになったり、逆に早く着きすぎたりと移動時間を読むのが難しい」と言っています。特に、雨(日本とは違い、定期的に集中豪雨のように降る)の時は交通渋滞がさらにひどくなります。
渋滞緩和策としては、日本政府の円借款による大量高速交通システム(MRT)の工事等が始まっています。しかし、駅から自宅・勤務先までの移動方法等を含めた、交通インフラ全体の整備には、5~10年以上という長期間を要するため、自動車やオートバイが急激に増加している現状を考えると、当分の間、この交通渋滞が解消されることはないと思われます。
4.工業団地への日系企業の進出状況
ジャカルタから東へ延びる高速道路(ジャカルタ-チカンペック高速道路)に沿って、十数か所の工業団地が開発されていて、日系企業も多数、進出しています。
ジャカルタ東方の工業団地
今回の出張目的は、私の勤務先が建設工事を施工しているプロジェクト状況の視察(パトロール)であったため、主として、それらの工事現場がある工業団地を中心に見て回ることとなりました。インドネシアには、昨年11月中旬にも来ていますが、その時は、日系ゼネコン(大手・中堅)16~17社に加え現地ゼネコンが、日系企業の工場等の工事を施工していて活況を呈していました。日系企業にとっては、生産拠点として、また潜在力のある消費市場として、インドネシアが位置づけられているとの印象を強く持ちました。ところが、今回はその勢いが大分緩やかになって、(感覚的ですが、私が見た範囲に限れば)実際に工事を進めている日系ゼネコンも前回の半分程度のように感じました。日系自動車メーカーによる大型の拡張投資と、自動車業界の裾野を構成する中小部品メーカーの進出が一段落した感があります。
MM2100工業団地(入口付近)
最近では、インドネシアでも労働コストの上昇が懸念されています。私がジャカルタを訪問した週は、各地で50%の賃上げを要求するデモが行われていました。現地で聴いたところでは、労働団体がデモへの参加を働きかけていて、(正規雇用の労働者よりも)臨時雇いの労働者を中心に、手当を払って参加者を集めているとのことでした。2014年の大統領選挙へ向けて、このような動きが活発になってくるものと思われます。
KIM工業団地の工場
現地ゼネコンの工場建設現場(KIM工業団地)
5.インドネシアのコンビニ
ジャカルタ市内にも、東南アジア諸国と同様に、街の至る所に日系コンビニが進出しています。海外出張の際はいつも気になっているのですが、時間がとれなくて、なかなかお店に入る機会がありません。今回漸く、朝食後の短い時間でしたが、ホテル近くのセブン-イレブンの店内を見に行くことができました。
店舗は、ホテル横の裏通り、片道1車線(5~6m幅)の道路を渡った反対側のガソリンスタンドの奥にあります。朝の通勤時間帯ということもあって、車やオートバイが途切れることなく通行し、また信号等もないため、道路を渡るのにひどく難儀しました。現地の人を観察していると、車が途切れたタイミングで、次にくる車の運転手と目を合わせながら、ゆっくりと歩いて渡っています。運転手もスピードを落として歩行者を渡らせていますので、歩行者と運転手との「阿吽の呼吸」といったものがあるようです(逆に走って渡ると、お互いのタイミングが計れずに危険かもしれません)。こうして、10分以上もかけて何とか道路を横断し、店内に入ることができました。
ジャカルタ市内にあるセブン-イレブンの店内
スナック菓子やカップ麺、飲料等、ちょっとした日用品類が商品として陳列されていますが、日本のコンビニに慣れているためか、品揃えは少なく、通路が広いこともあって、ちょっと寂しい感じがしました。(日本で煎れ立てコーヒーを提供するようになったのは最近ですが)インドネシアでは、店内カフェが充実していて、お店で購入した菓子等と一緒に店内に設けられた席で飲食を楽しむというスタイルがとられています。現地に駐在している人によると、若い人たちは、24時間営業のコンビニでデートをしたり、おしゃべりをしたりして利用するようです。これは、小売業としてのコンビニは外資の参入規制を受けるため、飲食業として認可を受けていることに拠るといえます。
6.おわりに
今回は、私が勤務している建設会社の仕事でインドネシアを訪問したため、見聞の範囲が、工業団地やホテル近辺、車での移動中と限られてしまい、ジャカルタ中心部の繁華街や商業施設等には行けませんでした。ただ、こういった商業施設に入っているのは、世界的なブランドショップやスターバックス等で、インドネシアに限らず、世界中どこでもあまり景色が変わりません。今回の見聞では、限られた範囲ではありましたが、ジャカルタの一断面に注力したからこそ見えてくるものがあったようにも思います。
経済成長を続けるインドネシアですが、それを支えているのは、国内の民間消費と(日本企業を含む)海外等からの直接投資です。一方、労働者の意識変化や政治的な背景もあって、労働コストは今後も上昇し、製造拠点・輸出拠点としての魅力は低下していくかもしれません。また、グローバル化に伴い、2013年に入って、欧州・中国・インド向けの輸出の減速、通貨ルピア安といった、世界経済の状況に大きく影響を受けるようになっています。そのような状況ではありますが(そのような不確実性の高い状況だからこそ)、ASEAN最大の人口を持つインドネシアは、消費市場として、また経済的なパートナーとして、日本にとって重要な国なのだと思いました。