グローバル・ウインド ハノイの風に吹かれて(2013年9月)
Global Wind (グローバル・ウインド)
ハノイの風に吹かれて ~若手診断士のベトナム訪問記~
1 はじめに
2013年8月にベトナムの首都ハノイを訪問しました。昨今、ベトナムは高い経済成長率や若者中心の約9,000万人という豊富な人材などを背景に、中小企業の海外展開先として注目を集めている国です。
勢いのあるベトナムの状況をぜひとも自分の目で確かめたいと思い、今回の渡航に至りました。ベトナムで感じたことをレポートします。
2 ベトナム概況
ベトナムの国土は南北に長く、中国、ラオス、カンボジアと国境を接しています。地理や歴史的経緯から北部と南部に分けて説明されることが多く、北部は首都ハノイ、南部は商業都市ホーチミン・シティが中心となっています。
人口規模でみた場合、ASEAN諸国の中では、インドネシア(約2億5,000万人)、フィリピン(約9,700万人)に次いで、3番目の人口を有しています。2020年代、ベトナムの人口は1億人を超えるとも言われています。
また、今年はベトナムと日本が外交樹立して40周年にあたり、数多くの交流イベントが開催されています。ハノイへ向かう際のフライトでは、ベトナムでの交流試合に出かけるサッカー少年団の一行と出会いました。
3 ベトナムでのカルチャー・ショック
ベトナムで受けた3つのカルチャー・ショックを記します。初めてベトナムを訪問される方は、多少なりとも同じような経験をされるのではないかと思います。
(1)金銭感覚
まずは日本円をベトナム・ドンに両替すると、その金額の桁の大きさに驚きます。1,000ドン=約5円という為替レートからも、ご察知いただけると思います。単純に考えると、金額表示が3桁増えることになります。しかしながら、お店で金額を数える際は、下3桁を省略して数えることが多々あります。
私も飲食店の店員さんに「ワンハンドレット」と言われて、「100ドン?」と聞き返しましたが、実際は100,000ドンでした。タクシーのメーターも下3桁が省略して表示されています。ドンでの金銭感覚に慣れるには、相当時間がかかると思います。
また、2011年のベトナムの消費者物価上昇率は18.7%となっており、高インフレがベトナム経済の課題となっています。(守部裕行編著『ベトナム経済の基礎知識』p34-35参照、ジェトロ、2012年12月)
(2)エアポート・アクセス
ハノイ・ノイバイ国際空港からハノイ市内への主なアクセスとして、路線バス、タクシー、ミニバス(ワゴン)の3つが挙げられます。シャトルバスやアクセス鉄道はありません。いずれの手段を選ぶにしても、1人で利用するとなると、多少の度胸が必要かもしれません。私は手頃な値段であり、かつ旧市街エリアへのアクセスが便利なミニバスを選択しました。
ミニバスは、厳密な出発時間が決まっておらず、乗客が集まると出発します。私がミニバス乗り場に着くと、ミニバスのドライバーに、「あなたが乗ったら、すぐに出発するよ。」と言われました。乗客は私を含めて約10人くらいでした。初めて会う見知らぬ旅行者同士が、1台のワゴンに乗るというのもなかなか趣があります。
最終目的地はホワンキエム湖の近くにあるベトナム航空オフィス前ですが、運行ルートの途中であれば、臨機応変に降車ができるようです。
(3)道路の横断
ハノイ中心部に到着して、最初に戸惑ったことが、「交差点をどうやって渡るのか。」ということでした。道路を見ると、溢れるほどの車とバイク(日本のホンダ製をよく見かけます)が縦横無尽に走っています。また、クラクションの音が辺りに鳴り響き、喧噪とした街の様子に私は呆然としました。車とバイクの流れが止むのを待っていても、その機会は一向に訪れません。
道路を渡る際のコツは「淡々とゆっくり渡る」ことに尽きます。バイク側も上手に歩行者をかわして走ってくれます。最初は戸惑いましたが、徐々に横断のコツを掴めるようになりました。逆に急いで渡ろうとして、走る方が危険だと感じました。
4 ハノイ市内の商業施設を訪ねて
ハノイ市内中心部の商業施設をいくつか訪問しました。一言で商業施設といっても、伝統的な公設市場や個人商店から近代的なショッピングセンターまで、様々な業態が存在します。
(1)ドンスアン市場(Dong Xuan Market)
旧市街にある大きな市場です。取扱商品は日用雑貨、衣料品などが中心です。ちょっとしたお土産品を探すには便利なスポットだと思います。周囲には野菜、果物、水産物などの生鮮食料品を取り扱っている露店が並んでおり、非常に活気があります。場所柄、観光客が多く訪れているようです。
また、市場周辺には職人街(金物、竹製品など)が形成されており、こちらも見どころが満載です。
(2)ホム市場(Hom Market)
ティエンクアン湖の近くにある市場です。ドンスアン市場よりも落ち着いた雰囲気の市場です。1階は靴、女性用下着、野菜、果物、肉などのお店が並び、2階は布生地のお店が並んでいます。特に2階は動線が充分に確保されておらず、買物客同士すれ違うのがやっとの状況です。
市場内では、至るところで店主同士が立ち話をしていたり、子供が遊んでいたりなど、ハノイ市民の生活の一部を垣間見ることができます。ローカルな雰囲気を味わうにはおすすめの場所です。
(3)ヴインコム・シティ・タワーズ(Vincom City Towers)
バイマウ湖の近くにあるハノイを代表する近代的なショッピングセンターです。3棟の高層タワーから構成されています。1~2Fは衣料品、化粧品、3Fはスーパーマーケット(レッ・マート)、4Fは電化製品、玩具、子供服、5Fはレストラン、ゲームセンター、6Fがシネマコンプレックスといったフロアー構成になっています。
週末ということもあり、若者や小さな子供連れの家族での来店が多く見受けられました。まさに、ハノイの最先端を感じることができるスポットです。
5 おわりに
2泊3日という強行日程でしたが、著しい発展を遂げているベトナムの首都の躍動感を感じることができました。一言でいうと、「活気に満ちている若い都市」という印象を受けました。最終日は台風9号(現地名:チェービー)がベトナム北部を直撃し、荒天の中での行動となりましたが、熱帯ならではの激しいスコールで、ずぶ濡れになったことも今となっては良い思い出です。
最近では、国内に居ながらも、容易に海外の情報を得ることができます。このような便利な時代であるからこそ、現地へ行って、自分の目で直接確かめる、肌で感じることが大切だと思います。
この1年でバンコク(タイ)、北京(中国)、そして、今回のハノイ(ベトナム)を訪問しました。いずれも仕事の合間を縫っての短期滞在ですが、街をひたすら歩き、市場などの地元の人々が集まる場所を訪れ、その国のローカルな雰囲気を感じるようにしています。そうすることで、多少なりとも自分の言葉で、その国のことを説明できるようになります。情報が簡単に入手できる時代であるからこそ、原体験の重要性が増していると私自身、痛感しております。
中小企業の海外展開を充分にサポートできる診断士になるために、今後も自分自身を積極的に海外展開させていきたいと思います。