グローバル・ウインド 外国人留学生のサポートへの取り組み(2013年11月)
Global Wind (グローバル・ウインド)
外国人留学生のサポートへの取り組み
中小企業診断士資格を取り、人材分野のコンサルティングなどを行うために株式会社クオリティ・オブ・ライフを起業して7年目、仲間と共に多くの仕事を手掛けてきたが、その中の一つが「日本に来ている外国人留学生の支援」である。
関わってきた経済産業省と文部科学省の連携事業「アジア人財資金構想」、中小企業庁の「地域中小企業の海外人材確保定着事業」「留学生就職応援プロジェクト」といった事業や、当社で行っている留学生支援事業について、この場を借りてお伝えしたい。
外国人留学生受け入れのメリット
外国人留学生の受け入れは国の重要戦略の一つで、中曽根政権時の「留学生10万人計画」を達成して、福田政権時の「留学生30万人計画」に向けて、様々な施策が打たれている。
その意義としては、以下の点があげられる。
①大学など高等教育機関における教育研究の進化に果たす効果
②日本を理解して本国で要職に就く人材の増加により外交面で果たす効果
③少子化時代の日本の企業への就職などによる企業発展に果たす効果
④日本において消費活動を行うことによる経済発展に果たす効果
世界的な人材獲得競争
世界各国でも外国人留学生の確保は積極的に行われ、世界的な人材獲得競争が激化している。最も積極的なのはアメリカやヨーロッパであったが、近年中国や韓国も力を入れており、優秀な人材を日本に迎えることが難しくなっている。
中国は50万人、韓国は20万人の留学生確保を目標としている。現状は日本13.7万人、中国32.8万人、韓国6.0万人だが、インド、ロシア、アフリカなどからの留学生獲得は、今や日本と韓国は同じくらいの人数となっている。(日本では中国・韓国・台湾からの留学生を合わせると79.5%、中国人だけで63.4%と圧倒的多数)
外国人留学生受け入れの戦略
そのような重要な留学生受け入れに対して、国で考えている主な戦略は以下の通り。
①留学コーディネーターの配置:各国に人材を配置して、現地の学校や関係機関とのネットワークを構築して、日本への留学を促進する。
②奨学金の拡充:文部科学省の奨学金の枠を拡大する。
③外国語での単位取得の整備:英語での授業など日本の大学のグローバル化を推進する。
④地域と連携した外国人留学生の生活支援:日本の各地で留学生受け入れのための支援体制を確立する。
⑤日本企業への留学生の就職促進:企業に対する理解促進と、留学生に対する就職支援を実施する。(これが主に当社が活動している分野)
外国人留学生の就職支援
日本への就職を希望する留学生は多いが、その中で日本企業への就職を果たす留学生は約30%にとどまっている。せっかく日本に興味を持ち来日しても、多くの学生は日本企業に就職できずに、日本への不信感を抱いて帰国している。その理由は、日本語を含む日本独自のコミュニケーション・スタイルの問題、日本企業の企業風土や採用方式の特殊性という問題などが挙げられる。当社では長年にわたり、外国人留学生の就職支援を行ってきた。その事業を2つほど紹介しよう。
①アジア人財資金構想(経済産業省・文部科学省連携):全国の大学やコーディネート機関と連携して、アジア留学生に対して、日本ビジネスの理解、ビジネス日本語、インターンシップ促進、就職支援プログラムなどを行い、日本企業とのマッチングを行ってきた。その結果、本プログラムに参加した留学生は約60カ国に及び、その日本企業への就職率は約65%と高い成果をあげることができた。
②地域中小企業の海外人材確保定着事業(中小企業庁):STEP1:外国人留学生に対する日本の中小企業理解プログラム等のキャリア教育、STEP2中小企業とのマッチングプログラム、STEP3入社後の定着促進のプログラムという3ステップで展開する事業。本年度より全国でスタートしており、当社では事業成功に向けて全国のコーディネートを行っている。
留学生のOBOGネットワーク
そのような活動の積み重ねで、日本企業に就職する外国人留学生も増えて来ている。弊社では今年の1月に、そのようなOBOGを集めた交流会を主催した。メールで参加を呼び掛けただけでが、多くの若手人材が参加してくれた。話を聞いていると、このような交流会の開催を多くの留学生が望んでいるとのことだった。
日本企業がグローバル化するためには、積極的に海外展開を行うことが必要だが、それはグロ―バル人材を確保するということである。日本人のグローバル化も大事だが、海外人材の獲得も大きなテーマであり、日本に興味を持って渡日して、日本で教育を受けた人材はその最大の候補者となるであろう。そのような人材と意欲ある日本企業のマッチングに、今後もまい進していきたい。そのためにこの10月に社団法人「留学生支援ネットワーク」の立ち上げに参加したが、その詳細はまたの機会にご報告したい。