Global Wind (グローバル・ウインド)
月の港のワイン祭り(後編)

中央支部 金子 敦彦

 
 ボルドー市では、2年に一度ワインフェスティバルを開催しています。フェスティバルは4日間にわたり開催され、ワインのテイスティングやイベントなどを楽しむために世界中からワイン好きの人々がやってきます。今回は、ワインフェスティバルの体験レポートの後編をお伝えします。
 ボルドー地方訪問3日目の朝、ボルドー市街から約一時間程度電車に乗り、サンテミリオンにやってきました。サンテミリオンもこの地方を代表するワインの銘醸地の一つです。前日に訪れたマルゴー村も属するメドック地方側を左岸と呼ぶのに対し、ジロンド川を隔てて対岸にあるサンテミリオン側は右岸と呼ばれます。右岸のワインは主にメルロー種というブドウ品種を使用して醸造されることが多く、比較的まろやかな味わいが特徴です。
 サンテミリオンの旧市街は、ユネスコの世界遺産にも登録されている美しい街。石畳の坂道をしばらく上り続けると、目の前に街のシンボルであるモノリス教会が飛び込んできました。
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 協会の入口には鍵がかかっているのですが、観光案内所で鍵を借りて鐘楼から街の全景を見渡すことができます。とても小さなこの街の周りにはワイン用のブドウ畑が広がっていることがわかりました。ここにある葡萄畑から世界中の人々に愛される高品質なワインが生まれます。
 市街を散歩し街の雰囲気を楽しんだ後は、葡萄畑の間を走る観光用のミニトレインに乗りました。ミニトレインの向かった先は一件のワイナリー。ここでは、地下カーヴ(ワインを保存し熟成させる倉庫)に入ることもできました。サンテミリオンの地下には約200㎞にもわたる地下洞窟があります。この洞窟はモノリス教会をはじめとした建物を建造する石灰岩を切り出すためにできたものなのですが、今ではワイナリーごとにワインカーブとして活用されていることも多いです。
 シャトー見学後、再び葡萄畑を巡りミニトレインは旧市街に帰ります。市街地にもいくつかのワイナリーがありますが、中には観光客が自由に地下カーヴを見学できるところもあります。予約なしに複数のワイナリーに入りましたが、快く見学させてくださいました。
 サンテミリオンでの滞在を十分に満喫し、ボルドー市街に帰ったのが夕方頃。この季節のフランスは、夜の9時~10時くらいまで明るいので、花火が上がるまでたっぷり時間があります。それまで、ガロンヌ川沿いのメイン会場で地元ワインを楽しむことにしました。
 ワインフェスティバルの期間はワイングラス付きの試飲パスが販売されています。このパスを購入すると、会場内にある産地ごとの試飲ブースでワインをもらうことができます。チケットと引き換えにグラスにワインを注いでもらい、川沿いを歩きました。会場には、チーズやパン、生ハムからフォアグラまで、ワインに合う様々な食材や料理が販売されています。せっかくなので、普段あまり食べる機会のないフォアグラのローストに、ソーテルヌ地方の貴腐ワインを合わせていただきました。フォアグラは紙皿に無造作に置かれたものですし、ワインは赤ワインを飲んだものと同じグラス、それを仮設ブースのテーブルで楽しみました。高級な食材やワインも、地元では肩肘を張らず楽しまれているものなのだということを肌で感じることができました。その後、いくつかの地域のワインを楽しみ、ほろ酔い気分で3日目の花火を鑑賞、道行く人たちと何度もグラスを重ねました。
 ボルドー地方訪問最終日、この日は高級ワインを産出するメドック地区のシャトーと畑を徒歩で巡ります。一日数本しかないバスで終点まで行き、まず辿り着いたのは、サンテステフ村のシャトーコスデストゥネル。この地方には珍しい東洋風のシャトーで造られるワインは、メドック地方の格付け2級ながら1級にも匹敵する高い評価を得ています。
 次に、隣村のポイヤックに入り、1級シャトーのシャトーラフィットとシャトームートンロートシルトを巡ります。これらのシャトーは、初日に訪れたシャトーマルゴーなどと共に5大シャトーと呼ばれ、世界的にも有名です。
 そこから少し歩いたところに、ポイヤック村の中心地があります。村には小さな港がありました。港が面するジロンド川の川幅は3kmから11kmほどです。ボルドー地方を二分するこの川は、かつてボルドーがイギリス領であった時から船でワインを輸送するのに利用されてきました。ボルドーが世界的なワイン産地となるためにはこの川の存在は欠かすことのできないものだったのです。
 村で昼食をとったあと向かったのが、格付け5級シャトーのシャトーランシュバージュ。5級ながら2級に値する良質なワインを造るシャトーとして、日本でも人気のシャトーです。シャトー見学のための事前予約をしていたため、中を案内してもらい数種類のワインを試飲しました。特に、生産年の異なる同じワインを比較することで、熟成による味わいの変化を感じることができました。
 シャトーランシュバージュを出た後は、格付け1級のシャトーラトゥールをはじめいくつかの有名シャトーを巡ります。ボルドー地方の各シャトーはそれぞれ広い農地を保有しているため、一つ隣のシャトーに着くのにもそれなりの時間がかかりました。ただ、それぞれのブドウ畑を歩くことで、世界中に流通する高価なワインも元々は農作物であることを実感できたのは良い経験だったと思います。
 最後にメドック地方の中で一番印象に残ったシャトー、ピションロングヴィルバロンをご紹介します。初日に訪れたシャトーパルメも美しかったのですが、こちらは門がなく敷地内に自由に入ることができるようになっていたので、すぐそばで見ることができました。
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 ボルドー地方ではこのような美しいシャトーもたくさん見ることができますし、歴史的価値のある美しい街並みもあります。そして、ワインを気軽に楽しめる環境と飾らない人々、観光地としても大変魅力的な場所だと思いますので、是非一度訪れてみてください。