業種別業界別トピックス「貴金属・ブランド品買取ビジネス」(2014年5月)
成長するリユース業界
一度他人が使ったものを再利用する「リユース」という循環型のビジネスは、経済的なメリットだけでなく環境問題への意識の高まりなどもあり、現在成長段階にあると言える。このようなビジネスは、一部で民間金融としての「質屋」を想起させるところもあったが、近年リユースに対する理解が深まる中でそのようなネガティブなイメージが払拭されてきている。
経済産業省の商業統計によると、産業分類のおける「中古品(骨董品除く)小売業」の市場規模は、平成19年で3452億円であり平成9年の908億円に較べて10年で3.8倍に成長している(この分類には、自動車やバイクの中古販売は含まない)。また業界団体である「日本リユース業協会」の平成25年7月の統計調査によると、平成24年度における同協会正会員・準会員企業16社のリユース品年間売上高および店舗数は以下のとおりである。
買取ビジネスの仕組みと流れ
リユース業態のFCチェーンが取り扱う商品の主なものには、本・雑誌、ゲームソフト、衣料品、スポーツ用品などがある。これらの店舗は、買い取った商品を同店舗内に陳列して販売するため、いずれも比較的店舗面積が大きいものが多い。しかしてこれらは初期投資額が大きく、これから独立を考えている個人の加盟希望者にとってはハードルが高いものとなっている。
それに対して今回取り上げる「買取ビジネス」型のリユース業は、買い取った中古品を店舗に在庫することなしにFC本部や専門業者転売することにより利益を上げるビジネスであるため、それほど大きな店舗を必要としない。買取専門ビジネスで取り扱う商品は金券、貴金属宝飾、ブランド品などであるが、金券ショップは買い取った金券を自店舗で在庫して販売するというビジネスモデルのため、「買取専門」を扱う本稿の対象外とする。
貴金属宝飾の場合、買い取られた商品は一括してFC本部や専門業者に転売され、その代金が比較的早いサイトで加盟店に支払われる。買取資金と転売代金が短いサイトで循環するため、日々の資金繰りに苦慮するケースは少ないと言える。また、貴金属はそのデザイン性ではなく単に重量で値段が決まるのが一般的で、比重計などの機器を使えば商品の「値付け」をすることが容易であり、業界経験の浅い加盟者でも取扱い易い商材と言える。ただし、貴金属は相場の影響を受けるため売上や利益が不安定なところがあり、また従量制のため「ひとやまいくら」的に利益が薄くなる傾向があるところには注意したい。
ブランド品も同様に、買い取られた商品は一括してFC本部に転売されるケースが多い。時計やバッグといったブランド品は、貴金属と違って商品知識や鑑識眼が要求されることから、FC加盟に際しては一定の経験や研修が必要となるが、いわゆる「目利き」になれば利益率を向上させる可能性は高まる。ちなみにFC本部は、転売された商品を業者オークションのような市場に流すか、あるいはFC本部が自社で運営しているネットショップで販売する、という選択を行う。どちらのルートに流れるかは加盟者に利益には影響しないが、参考までにいうと業者オークション市場の特徴は、現金化は早いが利益は薄い、独自のネットショップは利益率は比較的高いが現金化が遅い、と言われている。
加盟に際して検討すべき事項
買取ビジネスは商品陳列スペースを必要としないことから、5坪程度の小さな店舗で開業が可能である。また設備としても事務所仕様に加えてカウンターやソファーがあればよいので、初期投資は低い。物件取得費用にもよるが、加盟金と合わせて1000万円以下での開業も可能である。ただし、留意すべきは買取資金である。買取商品の現金化のサイトを1ヶ月と見た場合、少なくとも最初に1ヶ月の買取資金が必要となる。つまり500万円の買取が想定されるのであれば、初期投資に加えて最初にその資金を用意しておく必要がある。
ロイヤルティに関しては、売上に対する変動%ではなく、固定金額としている本部も多い。これは、FC本部のビジネスとしてロイヤルティ収入を主としているのではなく、加盟店が買い取った商品を転売することにより利益を得る、というビジネスモデルとなっていることにもよるだろう。
そして、参入障壁の低さから脱サラ組などの個人事業者が手を出しやすいため、加盟者を増やすことで加盟金を得ることが本部の収益源となっている場合も多い。例えば貴金属の買取では、加盟者が買い取った商品はそのまま専門業者に転売されFC本部が取引に係らないため、このような傾向が見られる。
また最近では、店舗や買取資金を本部が準備する、ある程度の鑑識眼を持った業界経験者向けの業務委託型FCも登場している。買取には一定レベルの知識や経験が必要になるので、どのくらいの研修期間が必要か、店舗での査定を本部がヘルプしてくれるのか、定期的なSVによるフォローがあるのか、などの項目について本部から十分に説明を受けておくことが肝要である。以下に、いくつかのFCチェーンとその特徴をまとめたので、加盟の際の参考としていただきたい。
(平成26年4月現在 各社HP・加盟案内資料等から 筆者加工)
■山岡 雄己
中小企業診断士