1.現状

現在、新型コロナウイルスの感染者が拡大しています。当初は、中国人来日者に感染者が判明して、その二次感染として日本人感染者が報道されていました。ところが最近では、感染ルートのわからない日本人感染者が報道され、市中感染の不安が起こっています。さらには、クルーズ船で陰性と診断され下船して帰宅した乗客が、日が経過してから陽性になる事例も発生し、不安が広がっています。

2月23日午前0時現在、16都道府県で計115人の国内感染者、死者1人が確認されています。また、チャーター便帰国者の感染者が14人、クルーズ船での感染者が635人、死者2人となっています。

厚生労働省では、令和2年2月20日付けで、以下のメッセージを発表しました。

イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ

新型コロナウイルスの感染の拡大を防ぐためには、今が重要な時期であり、国民や事業主の皆様方のご協力をお願いいたします。

最新の感染の発生状況を踏まえると、例えば屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いることが、感染のリスクを高めるとされています。

イベント等の主催者においては、感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。なお、イベント等の開催については、現時点で政府として一律の自粛要請を行うものではありません。

また、開催にあたっては、感染機会を減らすための工夫を講じていただくようお願いいたします。例えば、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置、風邪のような症状のある方には参加をしないよう依頼をすることなど、感染拡大の防止に向けた対策の準備をしていただくようお願いいたします。

国民の皆様においては、風邪のような症状がある場合は、学校や仕事を休み、外出を控えるとともに、手洗いや咳エチケットの徹底など、感染拡大防止につながる行動にご協力をお願いします。特に高齢の方や基礎疾患をお持ちの方については、人込みの多いところはできれば避けていただくなど、感染予防に御注意いただくよう、お願いいたします。

そのためには、学校や企業、社会全体における理解に加え、生徒や従業員の方々が休みやすい環境整備が大切であり、テレワークや時差通勤も有効な手段であります。関係の皆様のご協力をお願いいたします。

なお、新型コロナウイルス感染症の今後の感染の広がりや重症度を見ながら適宜見直すこととしています。

 

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、3月1日開催の東京マラソンが一般ランナーの参加取りやめを発表し、衝撃が走りました。その後も、テーマパーク『サンリオピューロランド』の臨時休館(2月22日から3月12日まで)、日本経済新聞社による「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」(東京ビッグサイト・幕張メッセ、3月3日から6日まで)の全ての展示会と関連セミナー、シンポジウムの開催の中止、イオンやファーストリテイリングの入社式延期などが発表されています。

 

2.感染拡大を防ぐための企業の取り組み

企業は社会的責任を担う立場から、まずはお客様・社員の安全を第一に考えて、感染拡大を防止すべく取り組む必要があります。不特定多数の人混みは感染拡大に巻きこまれるリスクがあることから、人混みを回避する対応も感染拡大防止に有効です。以下、取り組み例をご紹介します。

 

(1)お客様の安全

●イベントの延期・中止         ●スタッフのマスク装着

●消毒液の設置             ●イベント会場内でよく触る箇所の消毒

●サーモグラフィーによる体温計測の実施 ●救護室の設置 など

 

(2)社員の安全

●在宅勤務の導入            ●時差出勤の導入

●イベント・会議(大人数)の延期・中止 ●海外出張などの自粛

●テレビ会議の活用           ●勤務時(接客時)のマスクの装着

●消毒液の設置             ●ドアノブなどよく触る箇所の消毒

●手洗いの励行、咳エチケット※の励行  ●発熱時の自宅待機 など

※咳エチケットとは
インフルエンザをはじめとして、咳やくしゃみの飛沫により感染する感染症は数多くあります。「咳エチケット」は、これらの感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。特に電車や職場、学校など人が集まるところで実践することが重要です。

 

3.自社の危機管理体制を見直すきっかけに

平時では、危機管理体制といっても、なかなか真剣に検討できません。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大で不安が高まっている現在は、「社員が発熱したらどうしよう?」「社員の欠勤者が増えたらシフトをどうしよう?」など、あらゆる可能性に思いを巡らせていることでしょう。これを機会として、BCP(事業継続計画)に漏れがないか見直し、テレワーク規程の新設も検討するなど、自社の危機管理体制を見直すきっかけにしてはいかがでしょうか。

注.本コラムは、2月23日時点の情報で記載しております。

《参考情報》

「新型コロナウイルス情報-企業と個人に求められる対策-」(日本渡航医学会 産業保健委員会、日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会作成)

https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/COVID-19info.pdf

 

略歴
高橋 利忠
中小企業診断士
東京都中小企業診断士協会 中央支部執行委員 総務部副部長