専門家コラム「小規模・中小企業事業者さんのためのSDGs活用のコツ」(2020年1月)
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
2015年9月国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された
2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットのことです。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
(以上、外務省HPより引用)
これだけ御覧になると、「大手大企業や国が対応すべき課題ではないか?」と認識される方多いと思います。事実、中小企業者の方々向けの認知度調査によると、「全く知らない」と回答された方の比率は84.5%にも達しています。(出典:関東経済経済産業局 日本立地センター『中小企業のSDGsの認知度・実態等調査』より)
しかしながらこの認識は、「本当にもったいない」と思います。と言うよりも「折角のビッグチャンスを逃すことにもつながり、これを放置すると企業の成長性の大きな足かせ」にもなるとも考えるからです。理由はSDGsが2030年度までの国際的な達成目標のため、年々その進捗状況確認(モニタリング)が国内外で厳しくなることが想定されるからです。
では、具体的には事業者さんはどのようにこのSDGsに向き合い取り組んだら良いのでしょうか?」企業がこのSDGsを導入に際しての指南書の一つとしてSDGsコンパスがあります。SDGsコンパスとは、2016年3月にGRI(Global Reporting Initiative)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の3団体が共同で作成したものです。コンパスとは羅針盤を意味し、その目的は企業が如何にしてSDGsを経営戦略と統合し、SDGs達成への貢献を測定し管理していくかについての指針が示されています。具体的には5つのステップで構成されています。(1)SDGsの理解→(2)優先課題の決定→(3)目標の設定→(4)経営への組み込み→(5)報告とコミュニケーションです。ではSDGsを導入し、企業成長につなげるポイントはどのように考えるべきでしょうか?ポイントは以下の3つと私は考えています。
① 自社の『あるべき姿』づくりには、経営トップがリーダー役を担いつつも、従業員、取引先(販売先、仕入先)金融機関の他、外部関係者や専門家も入れて創る。
② 地元の自治体のSDGsへの取り組み指針、状況等を把握し、経営への組み込みの視点、内容を検討し、アクションプランを策定し、着実に実行に移す。
③ 前述した17のゴールの内、特に7~12のゴール内容と各々のターゲット目標を社内外でその内容を咀嚼し、自社のアクションプランに反映してみる。
この3つをご提案した意図は、下記のとおりです。
SDGsの推進上の勘所は先ずは、本業が現状より更に良くなり、毎期着実に営業利益(営業キャッシュフロー)が出せることが前提になると考えるからです。営業利益が出せないと、事業継続は絵にかいた餅になるからです。しかしながら、その利益を持続的に増やしていくためには、Society5.0で提唱しているように超スマート社会を睨み、社会や環境に対しても前向きな貢献が図れないと経済的(売上、利益面)にも成り立たないとも考えるからです。お客様のニーズも進化するからです。また、17のゴールは、169のターゲットの内、7~12のゴールは、産業振興や経済成長につながるテーマでもあり、皆様の本業の在り様を再検討する際の大きな道調べになると考えるからです。此処に大きな投資も降り注がれることが想定されており、成長の源泉として期待が持てます。再検討の際には中小企業診断士等の外部専門家にもプロジェクトに入って貰った方が、客観的で合理性の高い計画になりやすいと思います。SDGsは、抽象的なテーマではなく、2030年度までにその必達が全世界的に要請される話でもあります。それだけに目標づくりのみならず、進捗管理の観点からも、現状改善の内向きの話ではなくBack・Casting(目標から現状の在り様を見直す)ことや、循環型経済の観点から、地域の自治体のSDGs推進方針に即して自社のビジネスモデルを磨き上げ、広く自社の利害関係者へ定期的な報告(コミュニケーション)を深めていくことが、皆様方企業のPR力強化にもつながると考えます。
以上
金綱 潤
略歴:中小企業診断士
中小企業診断士 一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部副支部長
中小企業庁委託 初代東京都よろず支援拠点チーフコーディネーター(現任)、地域活性化、消費財のブランディング支援等が専門。