専門家コラム「1on1ミーティングの特徴と導入・運用のポイント」(2019年11月)
人材育成の手法として、1on1ミーティングが注目を集めるようになりました。
キーワード「1on1」でGoogle検索をかけると、約4,800万件もの情報がヒットすることからも注目度の高さが窺えます。
1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が行う1対1の面談のことです。
お互いをより深く知ることができ、仕事が円滑に回るようになる手法として、
多くの企業に取り入れられています。
1on1ミーティングが通常の面談と異なるポイントや特徴は以下の通りです。
▼部下を中心としたミーティングであること
1on1では上司から部下への一方的な伝達やアドバイスだけで終わることはありません。
1on1は部下のためのもので、アジェンダは部下が決めます。
部下が挙げた課題に対して、上司がしっかりと応えてくれるという信頼感が、
部下のモチベーション向上に大きく影響を及ぼします。
1on1を実施する目的は、企業によって様々で、
モチベーション向上の他、キャリア開発、自己成長の促進、上司との良好な関係性構築などが挙げられます。
実施目的や部下の能力に合わせて、
雑談を交えて関係性を深める、仕事の成功を称えてモチベーションを喚起させる、
適職感を与えて長期的なキャリアを考えさせるなど、
状況に応じて使い分けできることも特徴の一つです。
▼頻度が多い
1on1では、少なくとも1か月に1回、多いと週に1回という頻度で実施することが推奨されています。
部下との面談を1年に1~2回ほどしか行わない、という企業がほとんどではないでしょうか。
しかしそれでは十分なヒアリングができているとは言えないような気がします。
1回あたりの時間は少なくとも、できるだけ面談の頻度を増やすことがポイントです。
定期的に、かつ高い頻度で1on1ミーティングを行うことで、
上司と部下は自然と距離感が縮まり、お互いに親しみを覚えるようになり、
信頼関係が構築される効果があります。
頻度が多いことで、部下の性格や健康状態、家庭の事情を知ることもあり、
結果、部下や部下の仕事の仕方に対する理解度が向上します。
また、あえて報告するまでもないようなことにも注意を払えるようになり、
潜在的な問題にいち早く気づくことができます。
意思決定のスピード向上、トラブルの事前回避、離職の抑制・防止など、
コミュニケーションの促進による良い影響はたくさんあります。
特に、人材不足が叫ばれる中、人材流出を防ぐことは優先度の高い課題です。
これの解決策として1on1は優秀で、これも特徴と言えるでしょう。
もちろん通常の面談と同様、業務の進捗管理や目標管理にも役立ちます。
日々変化している状況を直接確認できれば、部下の理解を更に深めることができますし、部下としても成功や失敗を振り返る習慣がつくことで、
パフォーマンスの向上が見込めます。
▼導入・運用するうえで抑えるべきポイント
1on1ミーティングについて、私がウェブや書籍で得た情報をもとに導入し、
実際に運用する中で、気がついたポイントをまとめています。
1on1ミーティングは、企業規模にかかわらず導入・運用できる手法です。
導入を検討されている方はよろしければ参考になさってください。
1. 準備
・事前に進行マニュアルを作り、準備しておく
・便利な質問をためておく
-何か困っていることはありますか?
-上司の私が聞いておいた方がいいことはありますか?
2. 面談
・目的や背景を伝える
-部下を中心としたミーティングであることを伝える。
・マニュアルを部下に見せながら進める
-照れくささがなくなる。
・最初は勝利を祝う
-日ごろから良い点、改善点をメモしておき、まとめて伝える。
-すでに伝えた場合も改めて「あの時は本当に助かった。ありがとう。」と伝える。
・8割以上を部下の話を聞く時間に使う意識を持つ
・業務の進捗確認や業績確認は最小限に
-毎回さらっと触れる程度でOK。
・キャリア開発に関する質問は、3ヶ月に1回程度とする
-5年後のキャリアパスをどう考えているか、一緒に考えてあげる。
-今現在の仕事に満足しているか、正直に応えてもらう。
-次の成長のためにどんなことができるか、一緒に考えてあげる。
・面談内容はメモを取り、最後にお互いのメモを見せあう
-次回までの宿題は、お互いにバランスよく出し合うと次回の1on1が充実する。
3. 次回のセッティング
・できるだけ定期的な予定として入れておく
-1on1の最後に次回の予定を入れるのも有効。
・キャンセルではなくリスケ
-外せない予定が入った場合、一回飛ばしはせずにリスケする。
4. 次回までにすること
・宿題はすぐやる
-すぐに動く上司の姿をみせることで、信頼感が高まる。
・2回目以降は事前にアジェンダを決めておく
-部下に決めさせるとより効果的。
-最初のうちは1on1の最後に一緒に考えてあげることもお薦め。
● 略歴
中小企業診断士
一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部所属
久保 和也