業種別業界別トピックス「飲食店の費用構造と費用のコントロール」(2019年10月)
飲食店で利益を出すためには、売上アップだけではなく、原材料費と人件費に家賃を加えたFLRコストのコントロールを行っていくことが重要です。当コラムでは、一般的な飲食店の基本的な費用構造と各費用のコントロール方法をお伝えします。
1.飲食店の基本的な費用構造
飲食店では、食材コストと人件費を合わせたFLコストが最も大きなコストとなり、FLコストは60%以内に抑えることが重要です。それに家賃を含めたFLRコストは70%以内が適正とされています。また、内装費用や厨房設備などの初期費用については、税法に基づいて減価償却が行われる償却費用となります。償却費と家賃を合わせたコストをRDコストと呼び、このRDコストを20%以内に抑えるよう、家賃と初期費用(内装・厨房設備費用等)をコントロールし、売上目標の設定をしていきます。開店時に融資を受けた場合は、一般的にこの償却費用が返済原資となります。これらに加えて、水道光熱費や販売促進費などを含むその他の費用を差し引いた後、店舗が営業により得た利益が残ります。費用合計が売上高を超えてしまう場合には、利益は当然マイナスとなりますので、全体の収支構造を考えてコントロールすることが重要です。
2.原価率のコントロール
費用の中で原材料費は、売上の上昇に比例して上がる変動費用です。原材料費は売上に対するパーセンテージでコントロールする必要があります。原価率のコントロールのためには、個別メニューの原材料費と提供価格の管理、目標原価率設定と予実管理、低原価率商品(特定のドリンクなど)の積極販売などを行っていくこと、また食材ロス対策も必要です。食材ロスに関して、ディナーで提供する予定の食材をランチで提供する場合や、まかないにする場合なども原価率アップにつながっているので注意が必要です。
3.人件費のコントロール
人件費は、売上に関わらず予定した人員に対してかかる固定費用です。従業員の基本の給与設定と人員配置によりその額が決まります。人件費を抑える対策として、業務の効率化による人員削減や、繁閑差を加味したシフトコントロールなどがあります。また、売上が上がれば人件費率は下がるため、人時売上高の目標設定と予実管理を行うことも重要です。人時売上高とは従業員が一時間働いてどれだけの売上高を獲得できるかの指標です。従業員の時間当たり平均給与が1,500円の時、人事売上高が5,000円であれば人件費率は30%となります。
4.家賃比率と坪売上高
家賃も売上に比例しない固定費用です。家賃比率の目安は10%程度ですので、月額家賃に対する月の売上高は10倍を目指しましょう。飲食店は店舗の面積により席数が変わり、対応できるキャパシティーが決まります。店舗規模により必要となる売上高も変わるため、一般的に売上の評価は坪当たりで行われます。目安として一か月の坪当たり売上高が20万円以上で優良店舗と考えられ、それ以上の売上高を目指していくことは容易ではありません。売上目安の話をすると最大売上高を基準に考えられる方が多いですが、来店客が少ない日も含めた平均売上高が基準となります。家賃比率の目安が10%であるということは、家賃の坪単価の目安は坪売上高の10分の1です。目標が坪売上高20万円であれば家賃の坪単価は2万円となります。物件選びの際には家賃の10倍の平均売上を獲得することができるかを考えることが重要です。
5.その他の経費
上記FLRコストに償却費を加えたFLRDコスト以外のその他経費には、水道光熱費や販促費、雑費がありますが、FLRDで約80%と考えると、残り20%がその他経費と営業利益となります。水道光熱費やマット・おしぼり代金などの雑費は多くの店舗で同じようにかかりますが、販促費用は店舗によって大小があります。集客を行うためには一定の販促費をかけていくことは必要ですが、売上の変動がある中、毎月固定で多額の販促費がかかると負担が大きくなります。固定的な販促費にはグルメサイトへの掲載、自社ホームページ費用、自社ポイントアプリなどがありますが、自店舗の目標売上高に見合った額であるかはよく検討してから契約する必要があるでしょう。
ご紹介したように飲食店を営業していくためには様々な費用がかかってきます。売上を上げるだけではなく、経費を適切にコントロールし利益が上がる仕組みづくりを行うことが非常に重要となります。
■金子 敦彦
2011年独立 年間約500件の中小企業の経営相談・コンサルティングを実施