専門家コラム「RPAを活用する」(2019年8月)
遠藤 孔仁
働き方改革を推進する改革の一環として、2019年の労働基準法改正により、時間外労働時間の上限が罰則付きで法律が制定されました。今回の規程は2020年4月より中小企業にも適用されます。そのようななか、業務の生産性を向上させる情報技術として、RPA(Robotic Process Automation = ロボティック・プロセス・オートメーション)という技術が注目をあつめています。
本コラムでは、このRPAの特徴を紹介するとともに、導入する上での注意点をご紹介いたします。
RPAとは、Robotic Process Automationの略で、ルールエンジンやAI(Artificial Intelligence = 人工知能)を備えた、デジタルレイバー(仮想知的労働者)と呼ばれるロボットが、ホワイトカラーの主に定型業務を中心としたデスクワークを、代行・自動化する技術のことであり、狭義にはそれらの機能を実装したソフトウェアのことをいう。RPAのソフトウェアによっては、AIを実装し、アプリケーションの画面位置を自動認識し、ロボットが自動で業務を代行する点が、第4次産業革命である、AIによる業務の完全自動化を想起させることもあり、そのブームに火がついている。
実際にRPAを導入することによって、次のようなメリットが挙げられます。
①デスクワークを自動化・効率化できる。
②生産性を向上できる。
③人的ミスを防止できる。
④コストを削減できる。
⑤人材不足の解消
例えば、営業アシスタントが、月末の請求書発行業務を行うとした場合、顧客コードをコピーし、1件ずつ請求書発行する業務があったとします。請求書を発行するお客様が50社あったとした場合に、顧客コードをコピーして請求書を発行するという一連の業務を、50回繰り返すことになります。そして、この業務を行っている途中に、電話や来客などの割り込みが発生し、請求書の発行漏れなどのミスを作りこんでしまいます。
一方で、RPAの場合、人間が操作するよりも速い速度で処理することが可能であり、また、人間と異なり労働時間に制約がなく、24時間連続して稼働することも可能である。そして、人間が行うことにより生ずるヒューマンエラーを排除することができるため、生産性、正確性の両面でRPAを適用する効果が見込まれます。
また、従来のシステム開発とは異なり、RPAは、プログラミング経験がなくても、ソフトウェア型ロボット(bot = ボット)を作成することができるため、自動化を推進する現場主導で導入することが可能となります。そのような導入へのハードルが低いことも、RPAの注目が集まっている要因のひとつといえます。
次に導入するうえでの注意点として、RPAに適した業務とその適用範囲の洗い出しとを行うことがあげられます。
これは、人間とRPAの作業速度を比較し、対象となる業務量と、業務内容により、ヒューマンエラーを作りこみやすいかどうかを見極めて、対象範囲を決める必要があります。また、EXCELのマクロなどでも生じた問題として、現場が各々ボットを作成することで、社内で稼働しているボットを管理しきれなくなる状況を抑止するために、RPAを導入するためのガイドラインと管理方法を周知する必要があります。
また、従来ある業務手順をそのままRPAに置き換えるのではなく、業務フローを見直し、その業務を補助するかたちでRPAを適用するという視点に立ち、導入を推進することが重要である。
【略歴】
遠藤孔仁(えんどうこうじ)
東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員