専門家コラム「『ポジ出し』が導く、現場改善ストーリー」(2012年8月)
1.現場改善がものづくりの強みを支える
「現場管理」は一定の範囲内にバラツキを無くすための守りの手法だが、「現場改善」は現状よりもより良い状態に進化させる攻めの手法である。したがって、現場改善を継続することは、ものづくり企業の体質を強化する生命線となる重要な活動である。
改善を継続するためのコツは、改善を楽しみ、その成果を常に確認することである。改善は草取りのようなもので、きれいに草取りをした庭でも、手入れをしないとすぐに草が生えて元の状態に戻ってしまう。例えば、草取りした庭に花を植えたい、または、池を作りたいというように現場改善テーマを自主的に創り出し、楽しく継続できる状態にすることが、現場の強みを支えることになる。
現場改善は、「何をなぜ」改善するのかを明らかにすることから始まる。改善対象を先まで考えて、誰にメリットがあるのか、改善の成果を得られる期間を持続するにはどうすればよいかを緻密に考える。例えば、部品保管をなくしてスペースを広げ、空いたスペースで工程内の検査をして不良品を未然に防ぐ、というように改善が連鎖して現場が良くなる姿をありありとイメージする。広く先まで考えて、全体像と将来像を考え抜くことが現場の強みの源泉となる。
2.改善を継続するためにストーリーを語る
改善は一度行ったら終わりではなく次々と改善を行っていく持続性、継続性が重視される。現場改善の成果をすぐに試して見える化することで、改善が継続する。そのためには、改善活動は上からの命令で実行するのではなく自分で知恵を出して変えていく、自主的に行動する”やるぞ感”が決め手となる。
企業全体からのトップダウン戦略と現場発想でのボトムアップ改善を融合するストーリー作りが醍醐味であり、現場改善を持続させるための要諦でもある。
3.「ポジ出し」とは、新しい価値を発見すること
「ダメ出し」をやめて「ポジ出し(ポジティブに考えて指摘すること)」にすることが、現場改善を維持させることに役立つ。改善テーマが相互に連携してチームや組織の力を発揮するときにも「ほめる」と効果がある。ほめることは、プラス発想をして全てを肯定して良いことにはすぐに取り組む「ポジ出し」の駆動源となる。
ほめることは、目の前にある人、もの、出来事の価値を発見すること、と言われている。これまで気付いていなかった価値を発見する現場改善は、企業の発展とも深く関連している。
より良い状態に現場変えることが改善である。そこに人間の知恵が発揮される。やりがいも芽生えてチームワークも良くなる。
4.「ポジ出し」で現場改善が定着する
現場改善の成果を現場で試して、改善し効果を見える化する。そして、自主的な改善ができるように、更に改善の課題を明確にする。改善が継続するようにストーリーで次の改善を考える。このような改善の循環を円滑にする駆動力が「ポジ出し」である。「ポジ出し」が現場改善をリードする。
■平林 裕治(ひらばやし ゆうじ)
中小企業診断士
東京都中小企業診断士協会 中央支部執行委員
【著書】
『よくわかるこれからのMOT』