専門家コラム「海外販路開拓~現地販売パートナーや商社等との提携の基本~」(2017年11月)
藤田泰宏
少子高齢化や市場の成熟化で国内需要が縮小するなか、経済成長が著しい東南アジア等の成長市場で中小企業も販路開拓することが叫ばれている。しかし、中小企業が自社単独で言葉、文化、嗜好、現地事情、法制度、商習慣などが異なる外国で本格的なマーケティングを行うには限界がある。
だが、経営資源に乏しい中小企業にとって、海外での販売促進は、現地の事情に詳しい現地販売パートナーと組むことが成功のカギとなる。まずは、現地の販売パートナーを見つけることだ。
問題は、どのようにして適切なパートナーを見つけるかだが、図表1にその方法と留意点をまとめた。
図表1
現地パートナーが見つかれば、次のようなステップを踏んで契約を結ぶ。初めのステップとして、「代理店契約」を結ぶ。ここでいう「代理店契約」とは、新規に販売商品を取り扱う現地パートナーにとって、リスクの少ない方法なので、初めの1年間ぐらいはテストマーケティングするのに向いている。
ある程度販売の目処が立てば、次のステップとして、現地パートナーが自らのリスクで在庫して販売促進することが可能な「販売店契約」に切り替える。
「代理店契約」、「販売店契約」それぞれにメリット、デメリットがあるが、図表2にまとめた。
図表2
現地パートナーと代理店契約や販売店契約を結ぶことは、自社で貿易実務を行うことを前提としている。こうした自社が直接現地販売パートナーの選定、貿易実務等を行うことを直接輸出と呼ぶ。
これに対し、商社に貿易実務から現地での販売まで全てお任せする間接輸出も可能である。直接輸出と間接輸出にはそれぞれメリット、デメリットがある。それぞれのメリット・デメリットについては、図表3にまとめた。
図表3
いずれにせよ、中小企業が海外販路開拓を行う場合、自社で何もかも行うのではなく、外部の経営資源や専門家のアドバイスを巧く活用する方が早道である。つまり、海外での販売促進は現地パートナーに、貿易業務は商社や通関業者、運送業者に任せてもよい。また、最近では日本語ができる外国人も増えてきたので、自分で一から語学の勉強をするよりも通訳や現地社員を雇った方が良い。
もちろん、自社で貿易実務も語学もできるに超したことはないので、地道に時間をかけて海外販路開拓担当の人材育成も必用である。
●略歴
藤田 泰宏
中小企業診断士
FMC フジタ・マネジメント・コンサルティング 代表
東京都中小企業診断士協会 中央支部執行委員 国際部 副部長
合同会社みんプロ パートナー
株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ チーフ・コンサルタント
・総合商社㈱トーメン食料本部(現豊田通商)に26年間勤務
・食料の輸出入および国内営業に従事
・タイ・中国などでの食品合弁工場の管理に従事
・米国(オレゴン州ポートランド、テキサス州ヒューストン)で海外駐在を2度経験
・現在、中小企業診断士として主に中小企業の海外展開支援に従事