国際部 三好 康司

2023年、2024年、三度にわたり主にファッション関係の輸出業務で台湾を訪問した。その時に見聞きしたこと、考えたことを台湾訪問記としてご紹介させて頂きたい。

私は、日本貿易振興機構(JETRO)の専門家として、中小企業・小規模事業者の海外展開を支援している。前職の経験から東アジア、東南アジア向けの支援が多いが、その中でも最近、台湾への輸出を希望する事業者が増えている。

台湾基礎情報

私の住む大阪から台湾(台北)への直線距離は1,712km、約2時間30分飛行機に乗ると、あっという間に台北に到着する。

台湾の面積は36,197平方キロメートル、九州よりやや小さい。人口は2,342万人(2023年末、出所:内政部統計処)、議会制度は一院制で、2024年5月より頼清徳氏(民進党)が総統に就任している。台湾と日本の関係は、1972年の日中共同声明にあるとおり、非政府間の実務関係として維持されている。

2023年の人的往来については、日本からの訪台者数は約93万人(出所:台湾交通部観光局)、台湾からの訪日者数は約420万人(出所:日本政府観光局)と活発な往来となっている。

image001【写真1:台湾地図(出典:グーグルマップ)】

台湾と日本の貿易関係

台湾の2023年度の実質GDP成長率は1.3%、消費者物価上昇率は2.5%、失業率は3.5%である。私の実感でも、また台湾で会った方に聞いても、経済は非常に安定していると感じる。2023年、日本は台湾の輸入相手国・地域として2位、輸出相手国・地域としては4位であり、経済関係は非常に深い。5年間の日本と台湾の貿易額(通関ベース)は以下図表の通りであり、日本からの輸出超過となっている。日本の主要輸出品目は、機械および電気機器、化学工業品となっている。図1

日本風の建物が残る街並み

台湾は親日国と言われる。2022年3月の日本台湾交流協会台北事務所の「第7回対日世論調査の結果について」によると、「台湾を除き、あなたの最も好きな国(地域)はどこですか」という質問に対する台湾人の回答は、「日本(60%)」、日本が圧倒的な一位になっている。

実際、訪問してみると、例えば私が地下鉄の駅で出口を迷っていると、台湾の人はすぐに声をかけてくれるなど非常に優しい。商談等においても、親日さを感じる。また、街を歩いていても、日本統治時代の建物が多数保存、使用されており、懐かしい気持ちになる。戦後、日本の建物は無くしてしまうという選択肢もあったかと思うが、今でも残されている建物が多い。

写真2は台中にある「宮原眼科」、1927年から1945年頃まで宮原武熊医師が眼科を開業していた建物で、現在はお土産屋、スイーツを食べられる場所として人気観光スポットになっている。また、写真3は、「台中公園」、かつての台中神社跡で、今でも当時の鳥居が保存されている。

image005【写真2:宮原眼科(筆者撮影)】

image007【写真3:台中公園の鳥居(筆者撮影)】

台北のファッションの中心地、信義区

ファッション業界の輸出支援で台湾に訪問している関係で、台北の信義区に行くことが多い。台北のランドマークである台北101、新光三越百貨店、統一時代百貨、微風南山など多くのファッションモールが立ち並んでいる地域である。

私は、今年9月信義区の中にある無印良品松高旗艦店で開催された東京中小企業ミッションの催事販売のお手伝いをしたが、無印良品はお客様でいっぱい、日本と変わらない価格の商品が当たり前のように売れていた。信義区のその他の店舗も視察したが、ファッションの感度は非常に高く、台湾における流行の発信地であるという印象を受けた。

image009【写真4:台北地図(出典:Taipei Trip Adviserホームページ)】

image011【写真5:台北101(筆者撮影)】

今後の日本と台湾の関係

私のアジア貿易での経験を振り返ってみると、1980年頃までは台湾・韓国貿易が多く、その後、プラザ合意による円高進行もあり中国との貿易が一気に拡大、中国は「世界の工場」と呼ばれるようになり、わが国企業も中国に殺到していた。2000年頃から中国依存過多によるリスクが言われだし、東南アジア向け貿易が拡大したと記憶する。

そのような中、ここ数年、台湾向け輸出を始めたい、拡大したいという中小企業経営者が多い。私の専門分野であるファッション関係で考えてみると、親日国という安心感が背景にありつつも、⑴ 距離が近く、中小企業にとって貿易に取り組みやすい ⑵ ファッション製品にはサイズがあるが、台湾人と日本人の体型は近く、同じサイズ展開で販売できる ⑶ 日本品に対するブランド信仰がまだ通じる、といった理由かと思われる。

世界における半導体競争の過熱や、日中関係など政治的な背景はさておき、貿易面でみると日本と台湾は安定的、かつ長期的な関係で推移すると思われるし、そのような関係維持を期待してやまない。

■三好 康司(みよし こうじ)

2012年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会中央支部国際部アドバイザー(前部長)。2015年まで双日株式会社に勤務し、繊維業界、日用品業界等の貿易を担当、アジア(中国、ベトナム、台湾、韓国、タイ、インドネシア、シンガポール、インド等)を中心に延べ約150回の海外出張を経験。2015年、三好グローバル・コンサルティングを設立。中小企業の海外展開支援、営業力強化支援、財務体質改善支援等に従事している。

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