国際部 木村篤

台湾の台北市で開催される大規模な食品展示会「FOOD TAIPEI」の視察で、2024年6月24日から28日まで、台北に滞在しました。この展示会は、食品業界における最新の製品、技術、トレンドを紹介する場として、世界中から多くの出展者と訪問者が集まります。
この視察は、私が所属する(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツの国際ビジネスチームで、食品関連企業の海外展開支援を行うコンテンツを作るための、情報収集が目的です。やはり現地で得た生の情報は貴重でした。それらをダイジェストでお伝えします。

FOOD TAIPEIの概要

開催日:2024年6月26(水) – 29日(土)
会場:台北南港展示ホール (TaiNEX)
出展企業社数:1,170社 2,688ブース
(内、日本企業数:約85社 外国企業では日本が1位)
出展内容: 食品、飲料、加工食品、農産物、水産物、畜産物、健康食品、調味料、
包装材、調理器具、食品加工機械など
出展目的:新しいビジネスパートナーシップの構築、取引の拡大、輸出入の機会創出など

FOOD TAIPEIの会場レポート

会場は4フロアに分かれており、台湾企業出展のフロアが2つ、外国企業フロアが1つ、食品加工機械系のフロアが1つとなっています。
午前10時の開場を前に、受付では長蛇の列。期待度の高さが見られました。

スクリーンショット 2024-07-05 18.27.07写真は国際展示エリアの様子。
日本をはじめ、韓国、タイ、ベトナム、フィリピンなどのアジア勢だけでなく、アメリカ、カナダ、スペイン、オランダなどの欧米諸国、南米、アフリカからも出展していました。

こちらは日本企業が出展しているエリアの様子です。

Group 1

単独で出展している企業もあれば、ジェトロの支援を受けながら出展している企業も多くありました。また熊本県、鳥取県、福島県、高知県などの、都道府県での合同出展も見られました。
費用やリスクを鑑み、なかなか単独では出展しづらい状況の中、こうして共同で参画するという方法で積極的に進出を図る中小企業様を見ると、なんとか力になりたいと思いますよね。

下の左の写真は、「どちらのパッケージがお好み?」というアンケートをとっています。お米のメーカーで、アジア風のパッケージと欧米風のパッケージのどちらが好まれるかの意見を集めているそうです。
右の写真は、透明の醤油を販売するメーカー。ガラス棚の後ろからライトを当てて、洒落た演出で来場者の目を引く工夫をしています。

image009FOOD TAIPEIに出展するのが初めてという企業もあれば、何度も出展している企業も多数いました。初めての企業にとっては、いかにバイヤーの目に留まり、味を知ってもらい、条件交渉に入りたいとことです。ただ、必ずしも意思決定者と会えるとは限りません。その場の出会いから、いかにして引き続き交渉の場を持ち続けていけるかが鍵になってきます。
すでに台湾に販売している会社にとっては、次なる商流を発掘していきたいところ。通常スーパーや百貨店は直で輸入することはないので、間に入っている商社のルートに載せられるかがポイントとなるようです。

こちらは台湾の企業が出展しているエリアです。
さすがに地元開催であるので、大手の企業が特大のブースを構えて出展しています。

Group 2どこのブースでも試食品を惜しげもなく配っていました。どんどん食べてもらって、企業名を覚えてもらうこと、すなわち広告宣伝のための試供品提供です。
オーガニック、健康食品など、食の安全を訴える食品も多く見られ、専用のコーナーも設けられていました。台湾の人も食べるものへの意識の高さがうかがえました。
Group 3
右の写真のように、ブース前でライブコマースをしているかのようにプレゼンをする企業も多く見られました。多くの人が足と止めて参加していました。かなりエンターテイメント性が高い展示会です。

下の写真ですが、日本風の屋敷に忍者が飛んでいるブースが…。
台湾では日本の人気が根強く、日本(風)の食品を販売する企業が多々あります。その中でもこの企業は強烈に日本をアピールし、会場のどこからでも目を引くブース作りをしていました。どこかしら違和感を覚えながらも、ここまで日本を愛してくれるのは嬉しいですね…。


台北の食品販売店巡り

台湾の物価感覚を確認するため、台北のスーパーを巡りました。
まずは日本食材を豊富に扱っているスーパー、百貨店を覗いてみました。image015

台北101の地下にある高級スーパー、SOGOにあるデパ地下、微風広場という名のショッピングモールにあるスーパーなど、日本食は高級食材として扱っているお店がほとんどです。

まず値段を見てみて驚いたのは、その価格の高さ!
2024年6月現在は「US$ = 約160円」とかなりの円安であったこともあり、「1台湾ドルは約5円」でした。このレートで見てみると、日本の食材は以下の価格になります。

カップ麺(どん兵衛):440円
柿の種(6袋入り):575円
おにぎり(1個):600円
牛乳(北海道牛乳 1リットル):1,050円
みそ1カップ:1,250円
刺身(マグロ、サーモン、真鯛):1,875円
日本酒(獺祭 磨き三割九分 四合瓶):10,250円
シャインマスカット:12,900円!!

どれも手が出せない価格になってしまっていました。
高級スーパーではありますが、日本の高級スーパーである成城石井などの感覚と比べても、台北のこの値段の方がはるかに高額です。
台湾の正社員年収は、日本円にして約270万円です。
一体誰がこのスーパーで買っていくのでしょうかと疑問になりました。賞味期限が近い食材もいくつかあったところをみると、長期間売れていない食材もあるように思えます。

高級スーパーばかり見ていても本来の物価ではないため、地元ローカルのスーパーものぞいてみました。
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豚肉が100gで200円、卵10個で230円、玉ねぎ3個220円、牛乳(台湾製)450円といった価格帯。あまり安い感覚ではありませんでした。日本の牛乳に至っては、高級スーパーのものと比較してもあまり差がありませんでした。
昨今の急激な円安という状況を鑑み、1台湾ドル4円くらいのレートで考えるべきなのでしょうが、このまま円安が続いて、これが正常な状況になってしまうと、もう海外で買い物ができないくらいのダメージを負ってしまいそうです。

こうなれば、意地でも安いところを探さなくちゃと思い、ローカル市場を訪れてみました。屋台にずらりと並ぶ新鮮な食材と活気ある雰囲気がアジア的で、大好きな場所です。

さて価格はというと…、安くない。
りんごは3個で500円、ヤシの実ジュースは1リットル700円など、なかなかの価格でした。市場の食材は新鮮であるため年配の方がよく購入されていくとのことで、価格で買っていくわけではなさそうです。

 

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まとめ

台湾は日本の文化が浸透しており、親日国の一つです。台湾人にとって日本はまだ憧れの国であり、高くても日本のものが欲しいというニーズは確かに存在します。
しかし、台湾に食材を輸出するには、多額のコストもかかります。小売価格までいくと、なかなか一般の台湾人には手がでない価格になってしまうのが現状です。

今回の視察を終えて、日本の食品のターゲット層、ポジショニング、台湾市場参入へのハードルが確認できました。はたして診断士としてどのように進出支援ができるだろうか。

それには新たな視点での価値の提供が必要なのではと感じています。
たとえば、台湾では卵を生で食べる習慣がまだないそうです。
うどんは食べるが、そばはあまり知られていないようです。
この辺りにヒントがあるのではないでしょうか。

最後に、やっぱり海外はいいですね!
今回の海外訪問は自身5年ぶりでした。自分の目で見て、空気を吸って、いろんな刺激を五感で受け止めてこそ本当の姿がわかってきます。
机の上の診断士から卒業し、最前線で支援できる診断士を目指して活動していこうと新たに決意した台湾訪問でした。

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■木村 篤(きむら あつし)

小売業で海外店舗(中東湾岸諸国、香港)の立ち上げ、店舗運営に従事。自動車部品の商社で海外(アジア、中東、中南米)販売営業、貿易実務を経験。2005年から2年間バックパッカーで世界一周。訪問国数は60ヵ国以上。2021年5月に中小企業診断士登録。海外展開支援、貿易業務受託、研修・セミナー講師として活動中。

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