国際部 望月 優樹

0. はじめに

誠に僭越ながら、

  1. 2018年6月「香港のとある日曜の風景から見えた『フィリピン』について」

https://www.rmc-chuo.jp/globalwind/2018061002.html

  1. 2020年3月「香港駐在員生活6年目(香港デモ、新型コロナウイルス、アジアビジネス、続・とある日曜の風景から見えた『フィリピン』について」

https://www.rmc-chuo.jp/globalwind/2020031302.html

  1. 2021年5月「香港駐在員生活7年目(新型コロナ・ウイルス、ワクチン)」(2021年5月)について」

https://www.rmc-chuo.jp/globalwind/2021050101.html

  1. 2022年6月「香港駐在員生活を終えて(2022年6月)について」

https://www.rmc-chuo.jp/globalwind/2022060101.html

というタイトルで、これまで有難いことに4つほど書かせていただきました。

 

上記タイトルの通り、2015年以来香港をベースに東南アジアの顧客を担当する営業マンとして、駐在員生活を送っておりましたが、長引くコロナ及び渡航制限環境や、公私ともに今後のことも考え、2021年に転勤・帰国することとなりました。公私ともに、まさに激動の7年弱の時間でしたが、国際金融・経済都市としての香港の変容、成熟に向かう中国そして成長を加速する東南アジア、コロナ危機。プライベートでは30代の大半を海外で過ごしたということは色々な意味がありましたし、ありがたい期間でした。

そして、2021年7月から東京のオフィスに復任し、現在は一部アジアの顧客を引続き担当しつつ、北南米・一部欧州などの海外現地営業担当者のデスク業務も担当しておりましたが、昨年2023年からはアジアを引き続き担当しつつ、それ以外の担当をはずれ「アフリカ」を担当することになりました。まさに、突然の出来事でした。

 

皆様、アフリカをご存じですか???

当然ご存じだと思いますが、商社や素材産業など一部の業界の方々を除き、中々お詳しいどころか、なんとなくのイメージしかお持ちでない方の方が多いのではないでしょうか?どうでしょうか?少なくとも私はそうでした。。。なんとなくのイメージと、またまたなんとなく、南アフリカとエジプト(<アフリカなの?中東なの??)があって、という程度でしょうか。

少し弁解させてください。私は現在証券会社の中で、いわゆる投資銀行部門というところで働いておりますが、そこは概ね3つの「畑」に分かれております。一つ目が、M&Aやコーポレート・ファイナンスなどをメインに産業別に顧客を担当する投資銀行部門と、二つ目が、株を取り扱うエクイティ部門と、それ以外のいわゆる社債や国債などの債券やデリバティブなどを取り扱うフィックスド・インカム部門に分かれております。私は、フィックスド・インカム畑のなかで社債の発行をする資金調達者である「発行体」といいますが、発行者をサポートする、投資銀行部門に所属するバンカー(DCMバンカー)であります。

社債のトレードや販売をするセールス・トレーティングのチームがいたり、それらに為替等や仕組みを組込むデリバティブのチームもいたりします。デットのチームにいるわけですが、デットというのは兎にも角にも、その投資は「安定性」がキーポイントになります。一方で、投資銀行やエクティは個別の企業の成長を“見込んで”投資をするのがポイントになります。そのため、エクティは米国などの先進国から、エマージング(新興国)マーケット(例えば、成長著しいインドやベトナムなどの株式)や本当にこれからであるフロンティア・マーケット(アフリカ)まで、さまざま投資・プロダクトがあります。一方で、デットは「安定性」が求められますから、基本的には先進国のトレードが主です。従って、アフリカはフロンティア・マーケットに該当し、これまでなかなかビジネスで出くわすことがなかったのです。なので、詳しくないのは普通なのです。。。

本題に戻すと、なぜ最近アフリカなのか?

アフリカはいわゆる「最後のフロンティア・成長マーケット」であること、また最近までは中国の進出が顕著であり、米中覇権争いの場所であることから、経済潜在性に加えて地政学的力学が働きます。従って、日本もアフリカ開発会議(TICAD: Tokyo International Conference on Africa Development)という国際会議を主宰し支援したりしております。足元、米国はコロナ後のインフレ対策として政策金利を上昇させ、結果世界にちらばる米ドル建ての金利は上昇しており、基軸通貨である米ドル建てで借り入れをしている(外国債の発行をしている)アフリカ諸国は苦境にたたされておりますが、上述の地政学的力が働きます。そして、そういった金利上昇に喘ぐアフリカ諸国への支援、たとえば国際機関、日本政府およびその政府機関が保証を提供したり、財政支援を実施したりしており、結果「安定性」がうまれ、そこにデット・ビジネスにおいても、チャンスがうまれるといった背景があります。

ともかく、2024年そんな私が担当をして、実はまだアフリカの地を踏んでませんが(基本的に金融ではアフリカはロンドンからカバーされるケースが多いので、私は彼らにお願いしておりました。。。勇気いりますよね。。。)、約一年が経過しました。少しは詳しくなったような気がしております。この度再び5度目の執筆の機会をいただきました。そこで、お読みいただく皆様の中に、誠に小職の偏見で恐縮ですが、さほどアフリカについて詳しくない方も少数派ではないだろうと考えまして、何かのきっかけであったり、関心の一助となればと思いまして、今回アフリカのアウトラインについてまとめさせていただきました。最後まで、お読み頂けましたら幸いです。

1:アフリカの概要

皆さんのイメージは、こんな感じでしょうか。

図・写真1

もしくは、こんな感じでしょうか。

図・写真2

でも、実際は、アフリカの盟主・南アフリカの経済都市ケープタウン

図・写真3

西部最大のナイジェリア・経済都市ラゴス(Lagos)

図・写真4

なんとなく、東南アジアのマニラとか、ジャカルタとかみたいな雰囲気がありますね。

振り返ってみると、アフリカは地理的にも日本から遠く、飛行機で行っても乗り換えなどの関係もあり、一日以上の日程がかかる遠い地域であります。ざっくり日本から約一万キロメートル以上の遠方に位置します。

そもそも、アフリカといいますが、厳密にはアフリカは「アフリカ大陸」を意味するケースが多く、そのため文化的にも多種多様です。また、皆様ご存じの通り欧米列強による歴史的な背景もあり、使用する言語も様々です

国別にみると、アフリカ地域(大陸)にはなんと54カ国もあり、西南北および中部の5つのエリアに区別されます。以下地域・エリア別に紹介したいと思います。

図・写真5

1.北部アフリカ(6カ国)

  1. アルジェリア民主人民共和国 (首都:アルジェ、言語:アラビア語、仏語)
  2. エジプト・アラブ共和国 (首都:カイロ 、言語:アラビア語)
  3. チュニジア共和国 (首都:チュニス、言語:アラビア語、仏語)
  4. モーリタニア・イスラム共和国 (首都:ヌアクショット、言語:アラビア語、仏語)
  5. モロッコ王国 (首都:ラバト、言語:アラビア語、仏語)
  6. リビア (首都:トリボリ、言語:アラビア語)

>>> 北部アフリカは、アラビア語を話す人口が多く、アフリカ大陸に位置しているとはいえ、文化的には中東・イスラム圏でありながら、フランスの影響も歴史的経緯から受けていることがわかります。

 

2.南部アフリカ(10カ国)

  1. アンゴラ共和国 (首都:ルアンダ、言語:ポルトガル語、ウンブンドゥ語)
  2. ザンビア共和国 (首都:ルサカ、言語:英語、ベンバ語)
  3. ジンバブエ共和国 (首都:ハラレ、言語:英語、ショナ語、ンデベレ語)
  4. エスワティニ王国 (首都:ムババーネ、言語:英語、スワティ語)
  5. ナミビア共和国 (首都:ウィンドフック、言語:英語、アフリカーンス語)
  6. ボツワナ共和国 (首都:ハボローネ、言語:英語、ツワナ語)
  7. マラウイ共和国 (首都:リロングウェ、言語:英語、チェツ語)
  8. 南アフリカ共和国 (首都:ブレトリア、言語:英語、アフリカーンス語、ズール語)
  9. モザンビーク共和国 (首都:マプート、言語:ポルトガル語)
  10. レソト王国 (首都:マセル、言語:英語、ソト語)

>>> 南部アフリカは、英語を話す国々が大勢で、イギリスの対アフリカ政策の影響を大きく受けていることがわかります。

3.西部アフリカ(15カ国)

  1. ガーナ共和国 (首都:アクラ、言語:英語)
  2. カーボベルデ共和国 (首都:プライア、言語:ポルトガル語、クレオール語)
  3. ガンビア共和国 (首都:バンジュル、言語:英語、マンディンゴ語、ウォロフ語)
  4. ギニア共和国 (首都:コナクリ、言語:仏語)
  5. ギニアビサウ共和国 (首都:ビサウ、言語:ポルトガル語)
  6. コートジボワール共和国 (首都:ヤムスクロ、言語:仏語)
  7. シエラレオネ共和国 (首都:フリータウン、言語:英語、メンデ語)
  8. セネガル共和国 (首都:ダカール、言語:仏語、ウォロフ語)
  9. トーゴ共和国 (首都:ロメ、言語:仏語)
  10. ナイジェリア共和国 (首都:アブジャ、言語:英語、ハウサ語、ヨルバ語、イボ語)
  11. ニジェール共和国 (首都:ニアメ、言語:仏語、ハウサ語)
  12. ブルキナファソ (首都:ウガトゥグ、言語:仏語、モシ語、ディウラ語、グルマンチェ語)
  13. ベナン共和国 (首都:ポルトノボ、言語:仏語)
  14. マリ共和国 (首都:バマコ、言語:仏語、バンバラ語)
  15. リベリア共和国 (首都:モンロビア、言語:英語)

>>> 西部アフリカは、英語、フランス語を主に話し、それぞれの国が細かく、数多く分かれており、欧州および米国からも地理的に近く、その特性から、欧米列挙による勢力争い、当該諸国からの影響が強くあったことが伺えます。

4,東部アフリカ(14カ国)

  1. ウガンダ共和国 (首都:カンバラ、言語:英語、ルガンダ語、スワヒリ語)
  2. エチオピア連邦民主共和国 (首都:アディスアベバ、言語:アムハラ語、英語)
  3. エリトリア国 (首都:アスマラ、言語:ディグリニャ語、アラビア語、英語など)
  4. ケニア共和国 (首都:ナイロビ、言語:英語、スワヒリ語)
  5. コモロ連合 (首都:モロニ、言語:仏語、アラビア語、コモロ語)
  6. ジブチ共和国 (首都:ジブチ、言語:アラビア語、仏語、ソマリ語)
  7. スーダン共和国 (首都:ハルツーム、言語:アラビア語、英語)
  8. セーシェル共和国 (首都:ビクトリア、言語:英語、仏語、クレオール語)
  9. ソマリア連邦共和国 (首都:モガディッシュ、言語:ソマリ語、アラビア語、英語、イタリア語)
  10. タンザニア連合共和国 (首都:ドドマ、言語:スワヒリ語、英語)
  11. マダガスカル共和国 (首都:アンタナリボ、言語:フランス語、マダガスカル語)
  12. 南スーダン共和国 (首都:ジューバー、言語:英語)
  13. モーリシャス共和国 (首都:ポートルイス、言語:英語、仏語、クレオール語)
  14. ルワンダ共和国 (首都:キガリ、言語:英語、仏語、キニアルワンダ語、スワヒリ語)

>>> 東部アフリカは、欧州列強の影響に加え、アラビア語など地理的な特性からアラブ圏の影響も受けているようです。また、アフリカ唯一独立を維持したエチオピア共和国もあり、アフリカ土着言語などアフリカ本来の言語も見られます。

5.中部アフリカ(9カ国)

  1. ガボン共和国 (首都:リーブルビル、言語:仏語、フィン語)
  2. カメルーン共和国 (首都:ヤウンデ、言語:仏語、英語)
  3. コンゴ共和国 (首都:ブラザビル、言語:仏語、リンガラ語)
  4. コンゴ民主共和国 (首都:ブラザビル、言語:仏語、リンガラ語)
  5. サントメ・プリンシペ民主共和国 (首都:サントメ、言語:ポルトガル語)
  6. 赤道ギニア共和国 (首都:マラボ、言語:スペイン語、仏語、ポルトガル語、ファン語、フヒ語)
  7. チャド共和国 (首都:ンジャメナ、言語:仏語、アラビア語)
  8. 中央アフリカ共和国 (首都:バンギ、言語:仏語、サンゴ語)
  9. ブルンジ共和国 (首都:ブシュンブラ、言語:仏語、ルンディ語)

>>> 中部アフリカは、フランス語話者が圧倒的に多く、フランスの影響がみられます。

 

また、世界的な観点からみると、国の数は54カ国で、世界全体の約28%を占め、人口も約14億人弱と約17%弱と世界の約6人に1人がアフリカ人ということになります。

また、地理的にみても、国土面積は約3,000万㎢と世界の約23%を占めます。さすが何といっても人類誕生の地ですね。

アジア開発銀行は、2050年はアジアの時代といわれ目まぐるしい発展を我々は現在目のあたりにしておりますが、国連の予想によるとアジアの人口は2060年から減少し、2100年頃にはアジアに逼迫もしくはアジアを超す予想をしております。

私は、金融業界で仕事をしておりますが、アフリカは最後のフロンティア・有望マーケットといわれておりまして、それも納得の計数データーが存在しているといえます。

2.アフリカの大きさ・人口

アフリカは世界面積の約23%ですが、一番大きい国はどこでしょうか?

図・写真6

 

一番大きな国は、なんとピラミッドで有名なエジプト(正式には、エジプト・アラブ共和国)(約100万㎢)で、2番目はタンザニア(約94.5万㎢)、3位はナイジェリア(約92.4万㎢)です。ちなみに、アフリカで一番有名な南アフリカは第42位と下から数えたほうが早いくらいなのです。実は。

また、人口を見ていくと、ナイジェリア共和国(2億人以上!!!)なんですね。次にエチオピア(1億1000万人以上とほぼ日本と同じ)、そしてエジプト(1億人強)で、ここまでが一億人以上の人口を有する大国です。皆さんが一番知っている南アフリカは約6000万と第6位となっております。*1

3.アフリカの経済状況(GDP

アフリカの経済で一番大きな国はどこでしょうか?

南アフリカ?でしょうか(私はそう思ってました。。)実は違います。まずは、アフリカ全体の状況は以下の通りです。

図・写真7

世界全体では約3%弱(2.74%程度)(先進国58%程度、新興国41%程度(うちアフリカを含む))と経済規模はまだ小さいです。予想通りでしたでしょうか?

ただ、地理的な大きさは世界全体の20%超、人口は30%弱ということを考えると、やはり最後の成長市場・今後の成長を期待される所以です。

本題に戻りますと、経済規模=GDPでみて一番大きいのは、ナイジェリア(約US$ 429,111 million)、次いでエジプト(約US$ 340,902 million)、南アフリカ(約US$ 288,75 million)となっております。やはり、人口が大きいというのはGDP・経済規模において大事ということが再確認されます(日本は今後どうなるのでしょうか。。。)。一方で、当該3国の一人当たりのGDPは、まったくの逆の順位となります。*2

4. 最後に

今回、浅く広くと、深い考察などはなく、また私事の多い内容となり大変恐縮しております。グローバル・ウインドのテーマとして適切かどうか悩んだものの、2024年始早々悲しいニュースが多いこの頃、将来に関して、明るい側面のあるアフリカ、そして他の地域と比べてお詳しい方が少ないと思われ、皆様の何かの参考になれるのではないかと思いまして、誠に僭越ながら本記事を書かせて頂きました。

本記事が皆様方の何かのきっかけであったり、関心の一助となったことを祈りつつ、最後までお読みいただきましてこと感謝申し上げます。

誠にありがとうございました。

 

注記*

*1 UNFPA「世界人口白書2019」

*2 アフリカ開発銀行 (2020)、IMF World Economic Outlook (2023)

 

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■望月 優樹(もちづき ゆうき)

東京都出身、1983年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、証券会社入社。DCMバンカーとして、一貫して外国顧客向け債券資本市場による資金調達アドバイザー業務に従事。約7年間の香港駐在を経験し、現在は東京勤務で企業内診断士。中小企業診断士試験の受験開始は学生時代、紆余曲折あり苦節10年?の末、やっとの思いで2014年度合格。2015年登録。現在、活動再開準備中。

東京都中小企業診断士協会中央支部 国際部 所属