業種別業界別トピックス「無人販売店舗のトレンド、運営の注意点について」(2023年6月)
近年、餃子やラーメン、馬刺しなど冷凍食品の無人販売店舗が増えています。中にはフランチャイズ形式で加盟店を募って急速に店舗展開しているブランドもあります。無人販売自体は、野菜の直売所や自動販売機コーナーなど昔からあるビジネスモデルですが、近年の無人販売店舗はどのような特徴があるのでしょうか?今回は、無人販売店舗のフランチャイズに加盟・店舗運営している筆者が、トレンドを紹介します。
【無人販売店舗が増えている理由】
近年、餃子やお肉・スイーツなどの冷凍食品、古着や古本など様々な商品の無人販売店が増えています。なぜ急激に増えているのでしょうか?いくつかの理由が考えられますが、最も大きいのは消費者にとって価値のある商品を手に入れやすい形で提供できるようになったということでしょう。
冷凍食品が分かりやすい例ですが、冷凍技術の発達によりレンジや湯煎であたためるだけで、美味しい食事をとることができるようになっています。しかも無人販売店なら24時間好きな時に購入できる、通販なら送料やまとめ買いする必要があるものが1個から購入可能、というように便利に手に入れることができます。
また、コンビニやスーパーなどでもセルフレジが増えており、接客無しで購入するという形に消費者が慣れつつあるということも理由の1つだと考えられます。無人販売店の会計にもセルフレジ型が増えつつありますが、自分で操作して会計するという形に違和感が無くなっている人も多いと思います。
あとは新型コロナウイルス感染症の影響で、スーパーなど他人が多い環境での買い物を避けたいという人も増えたと思います。新型コロナは落ち着きつつありますが、スーパーで他人がいる環境で色々なものを購入するより、コンビニや無人販売店で必要なものだけすぐ購入して帰るという買い方が増えたと考えられます。
【事業者にとっての無人販売のメリット】
ここまでは消費者にとってのメリットを見てきましたが、事業者にとって無人販売のメリットは何でしょうか?最大のメリットは、有人店舗と比較するとスタッフの採用費や給料などのコスト、教育や管理などの工数を抑えることができるということでしょう。飲食店などではアルバイトスタッフが集まらない、時給がどんどん上がっていく、採用してもすぐ辞めてしまうなどの声を聞きますが、無人販売店であれば最低限の人員で運営できます。深夜にスタッフを配置することなく、深夜手当などのコストをかけずに、24時間販売が可能ということは大きなメリットと言えるでしょう。
コンビニやスーパーと違い、小規模な物件で開業できるため、比較的低投資でスタートできる・ランニングコストを抑えることが可能なのもメリットの1つです。5~10坪程度の物件が多く、保証金や賃料などを抑えて運営することができます。
また、スタッフ採用や管理の手間が少ない・低投資、ということで副業としてやっている人も多いです。フランチャイズ展開している場合は、副業を探している会社員も加盟候補者になるため、候補者選びの選択肢が広いと言えます。
【無人販売店舗運営の注意点】
無人販売店舗運営の注意点もいくつか紹介します。無人販売店を運営してる事業者や個人からよく聞くのが、「無人販売でも意外と手がかかる、大変」と言う声です。確かにスタッフの採用や教育などの工数は少ないですが、それ以外は他の物販店と変わりません。繁盛店舗であれば品出しや発注作業、清掃などに時間はかかりますし、売れていない店舗でもこれらの作業やテコ入れなどが発生するので、それなりに時間はかかります。
店舗ビジネス全体に言えますが、物件選びはとても重要です。無人販売店の場合は、接客で挽回するということはできないので、物件選びに失敗すると非常に苦労します。また、24時間営業可能な物件は意外と少ないです。そして、やっと見つけた無人販売に適した物件は競争が激しくタッチの差で他社に取られたというケースもあります。
また、万引きは一定数発生すると考えたほうがいいでしょう。扱う商品にもよりますが、多少の万引きは仕方ないと折り込んでおくか、セキュリティーなどの対策を強化するか、検討する必要があります。ただし対策にコストをかけすぎると、人件費を抑えることができる無人店舗のメリットがなくなるため、難しいところです。また、最近では商品ではなく両替機や現金入れごと持っていってしまう犯罪も増えているので、注意が必要です。
今回は、無人販売店舗のトレンドについて説明しました。注意点も紹介しましたが、今後も無人販売店舗は増えていくと思われます。ユーザーとして、あるいは運営側として、色々な視点で注目するとよいでしょう。
【プロフィール】
若林 和哉(わかばやし かずや)
飲食店・小売店など店舗ビジネスを営む中小企業にて、経営企画を10年以上担当。全国70店舗展開する飲食店の予算策定や、社内独立制度の企画や研修講師、大手菓子メーカーと提携したアンテナショップの事業企画、ハワイアンカフェの新商品企画・原価管理システム導入などを担当。
中小企業診断士としては、補助金申請支援や融資支援、経営企画業務請負などをメイン業務としている。日本経済新聞社主催フランチャイズショーでのセミナー講師や早稲田大学校友会支援講座講師、大手製造業の新入社員研修講師、商工会議所主催セミナー講師、飲食系WEBメディアでの執筆、などの実績がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士
株式会社パートナー経営企画 代表取締役
一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部副支部長
一般社団法人東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会幹事
士業&コンサル コンテンツマーケティング研究会代表
中小企業診断士稲門会幹事
1級販売士