グローバル・ウインド「リスキリングを実践!オックスフォードに短期留学をされた木伏源太先生へのインタビュー」(2023年5月)
中央支部国際部・編集部
0.はじめに
中央支部には国際部以外でも様々な部活動が存在しており、国際的な活動に取り組まれている先生がいらっしゃいます。今回は、その先駆者でもある中央支部執行委員、実務従事支援部の副部長としてご活躍されながら、オックスフォードに短期留学された木伏源太先生に編集部としてインタビューをさせていただきました。
1. 木伏先生の中小企業診断士としてのご活動
編集部(以下―)「この度はお時間をいただき、ありがとうございます。初めに木伏先生の現在されているお仕事と診断士活動について教えてください。」
木伏先生「診断士としての実績としては、主に二つのことがあると思っています。
一つ目は実務補習や実務従事の指導員を務めてきていることです。自分を指導してくれた診断士の先輩のお陰で自分も診断士になれた訳なので、それに対する恩送りとして可能な限り指導員を引き受けるようにしています。
二つ目は現在の東京協会実務従事事業の立ち上げに深く関わって貢献したことです。中央支部チャンネルには実務従事ポイントの取り方についての動画※もアップされていますので、ご覧いただけたら幸いです。」。
※中央支部実務従事ポイントの取り方(詳細版)
https://www.youtube.com/watch?v=tcNkSbZ3pXg
-恩送りで実務補習・実務従事に取り組む、というのは大変素晴らしい心意気ですね。編集部としてもそのような姿勢で協会活動に取り組みたいです。なお、実務従事事業の立ち上げや実務補習や実務従事の指導員を務められてどのように感じられましたか?
木伏先生「最近は、弁護士の先生や弁理士の先生など他領域の士業の先生方が自らの専門性を広げようと診断士を取られる方も多いです。そういう先生方に出会ったり指導したりする機会があって、リスキリング※といわれるような形で、自分も新しい領域を学びたいと思うようになりました」
※リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
-リスキリングは、少子高齢化の人生100年時代やVUCAの時代という現代、注目されているキーワードですね。木伏先生ご自身もお忙しい中、大学院にも通われたと伺いました。学びについて詳しく聞いていきたいと思います。
2. リスキリングでの大学院進学、短期留学
-そもそも社会人大学院に通われようと思われたのはなぜですか。
木伏先生「もともと自分はコンサルタント歴も長く、診断士も取得して実践してきたので、ビジネススクールに通おうとは思えませんでした。そこに先ほどお伝えした通り、他の専門を持つ先生とお話しする中で、逆にMBA以外の学びという選択肢があることに気が付きました。ある時、管理会計の論文を読んでいたら、研究したいテーマが出てきまして、それで会計専門職の大学院に通おうと思いました。1年間会社を休職して、月曜日から金曜日、たまには土日も使って、授業を受け、いわゆる修士論文も書き上げて修了(卒業)することができました。」
-素晴らしいですね。それと今回の短期就学がつながるのですね。
木伏先生「はい。大学院の修了が決まったのは3月。その後、大学院の修了式に出席できなくなるものの、休職期間中にかねてから機会があれば行きかった短期留学に行きたいと思いました。行くなら今しかないと。」
-行くなら、今しかない、ですね。留学先としてオックスフォードを選ばれたのはなぜですか?
木伏先生「オックスフォードを選んだのは、かねてより学びたかった英語、SDGsテーマのグループワークのプログラムがあったからです。かつ、オックスフォード大学のカレッジ内に宿泊できて、かつ学ぶことができるプログラムだったからです。
もう一つ理由を挙げるとしたら、寮宿泊のプログラムだったので、費用が安かったというのも魅力的でした。」
―カレッジ内で学べるのは魅力的ですね!修了が決まった3月ということでしたが、どれくらい滞在しましたか?
木伏先生:「2023年3月中旬から下旬にかけて、2週間強の日程でイギリスに滞在しました。ほとんどの期間をオックスフォードで過ごし、ロンドンは1泊2日でした。
飛行機はウクライナ戦争の影響で従来の航空ルートが飛べないので、時間がかかり、ヒースロー空港への直行便でも14時間くらいかかりました。ロンドンからオックスフォードは、東京から熱海くらいの距離でしょうか、バスで2時間、電車だと50分くらいの距離です。しかし、バスに乗り2時間で着くところが、交通事故が起きて、4時間くらいかかってしまいました。」
※編集部注記:上記の地図(写真3)でヒースロー空港のあるロンドンは右下に位置し、その左上にオックスフォードが位置しています。(赤丸部分)
―大変でしたね。移動といえば、2023年となると渡航制限も緩和されている頃とは思いますが、移動には制限や変化は感じましたか?
木伏先生:「新型コロナウイルスという観点では制限はなかったと思います。制限を感じたことはありませんでした。ワクチンの接種証明を提示したことくらいです。
マスク着用率は見た目と感覚ですが2%くらいに思えました。」
―マスク着用率、2%とはずいぶん少ないですね!
3. 現地での滞在
―それでは、現地での滞在中の出来事について伺いたいと思います。現地では寮に滞在し、主に図書館にいかれたということですが、日本とは違いは感じましたか。
木伏先生:「ドミトリーは普通に寮という感じで特に違いというのは感じませんでした。敢えて違いを挙げるならやってほしいことはしっかり伝えないとやってもらえないということでしょうか。私の場合、入寮時に電気関係の故障があって寮のスタッフに強く主張して復旧してもらいました。電気エンジニアが来ればあっという間の簡単な作業でも来てもらうまでで遠慮していると直してもらえません。
図書館はオックスフォード大学の図書館に何度も通いました。やはり日本の国会図書館や大学図書館とは英語文献の量が全く違います。私は研究のために必要な文献を見に行ったのですが、日本で鮮明なコピーを入手できなかった文献も、簡単にスキャンデータを取ることができました。
オックスフォード大学の図書館は全英で出版された図書を収納しているとのことで、日本の国会図書館のような役割も果たしているようです。」
Bodleian Libraryのホームページはこちら。https://www.bodleian.ox.ac.uk/home
-図書館が、国会図書館のような役割も果たしているのですね!日本の図書館との違いを感じたことはありますか?
木伏先生:「大きな違いだと感じたのは、オンラインアクセスの図書が充実していること、コピーではなくスキャンが推奨されていることでした。特に後者については、スキャンを選択したことでCO2をどれだけ節約したかが表示されるなど、意識付けも含めてよくやっていると感じました。」
-CO2についての意識喚起もされているのは先進的ですね。今回はSDGsのプログラムを学ばれたのということは先進的な取り組みがなされているということですね。その他、日々の生活の中でお感じになったことがあれば教えてください。―
木伏先生:「ロンドンで買い物した時、紙の袋もビニール袋も頼んでもくれません。『必要なら6ポンド(2023/4/24現在1,004.59 円)のエコバックを買ってください。』といわれます。また、ストローは紙しかないなど、国としてSDGsへの意識が高さを感じました。また、キャッシュレスも進んでいました。タッチ式のクレジットカードで済み、現金をほとんど使いませんでした。店舗で見ると差し込み型のクレジットカードを使う人さえも少なかったように思います。」
―現地での滞在中の出来事について伺いたいと思います。Facebookでたくさんの写真を拝見しました。一番印象深い風景はどこですか?
木伏先生:「特に印象に残っているのは、実は写真は撮ることができなかったところです。具体的には、図書館ですとDuke Humphrey’s Library、CollegeやChurchですとChrist Churchです。前者(Duke Humphrey’s Library)はオックスフォード大学のBodleian Libraryで最も古い閲覧室です。図書館の中は写真撮影ができないんです。
後者 (Christ Church)は、昼間は中に入って写真を撮ることもできるのですが、夕方に行われるEvensongで合唱団の歌声を聴くことができて感動しました。なお、Christ Churchのグレートホールという食堂は、ハリー・ポッターシリーズの食堂のモデルとなったところです。」(写真はChrist Churchの外からの写真と食堂)
-幻想的ですね。風景と歌声が重なって印象深い風景だったのでしょうね。実際に訪れたからこそわかるという風景ということでしょうか。
―図書館の滞在が多いということでしたが、オフにはどこかに足を延ばされたりしましたか。
木伏先生:「オックスフォード中心部からバスで40-50分くらいのところのWoodstockにある世界遺産のブレナム宮殿まで足を運びました。行かれる方はバスの頻度が多くないのでバスの時間を調べておくと良いでしょう。また市内中心部の観光案内所でチケットを買うと割引になります。私はエーザイの元CFOの柳良平客員教授がおすすめしてくださって訪問しましたが、ものすごく広い敷地でした。これをチャーチル家一族で所有・維持していたと思うと貴族ってとんでもない存在だったのだと思い知らされます。左上の写真が私のお気に入りになったチャーチルの言葉です。」
※これ以外に木伏先生のFacebookでも多くの写真をアップされています。ご縁のある方はみてください。
4.最後に
-最後に、コロナ収束とともに世界について何か変化していくと感じていることなど読者へ思いをお伝えいただけると嬉しいです。
木伏先生:「社会人になって20年になりますが、自分がこんな風に勉強しているとは思っていませんでした。人生100年時代、何かを始めるのに遅すぎるということはないのだと感じています。実践してみてよりそのように感じるようになりました。
実際は、英語もあまり使うことのない仕事だと思っていたら、いつの間にか世の中がそれではすまなくなっていて、慌てて勉強しているという形です。
コロナそのものも含めてですが、変化が激しい時代にあっては、常に新しいことを学び吸収して、自分で使えるようになっていかないといけないと思っています。」
-大変学びになりました。実践してまいりたいと思います。ありがとうございました。
■グローバル・ウインド編集部
東京都中小企業診断協会中央支部国際部の診断士が編集長の元、リレー形式で国際にからむコラムをつづっております。ご感想やトピックのご要望など、お待ちしております。
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